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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1376803 
審判番号 不服2020-14698
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-10-21 
確定日 2021-07-13 
意匠に係る物品 自動車用タイヤ 
事件の表示 意願2020- 9143「自動車用タイヤ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和1年(2019年)8月30日の意匠登録出願(意願2019-19393)を原出願(以下「原意匠登録出願」という。)として、意匠法第10条の2第1項の規定による出願の分割がなされた、令和2年(2020年)5月8日の意匠登録出願(意願2020-9143)であり、同年5月12日付けの拒絶理由の通知に対し、同年6月26日に意見書が提出されたが、同年7月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年10月21日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠は、意匠に係る物品を「自動車用タイヤ」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠
原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものであって、拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」という。また、本願の意匠登録を受けようとする部分に対応する部分を、以下「引用部分」という。)は、日本国特許庁が平成28年(2016年)4月18日に発行した意匠公報に記載された、意匠登録第1547887号(意匠に係る物品、自動車用タイヤ)の意匠であり、その形態を、同公報に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。

第4 対比
1 意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれも「自動車用タイヤ」であるから、一致するものである。

2 本願部分と引用部分の用途及び機能の対比
本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、いずれも自動車用タイヤのトレッド部からショルダー部にかけての部分であり、トレッド部は、自動車の重量を支え、路面からの衝撃を吸収し、路面をつかんで進路保持し、その発進、加速、減速及び制動時のエンジンやブレーキの力を路面に伝える部分であって、ショルダー部は、内部コード層を保護し、走行中に発生するタイヤ内部の熱を放散する部分であるから、用途及び機能が一致するものである。

3 両部分の位置、大きさ及び範囲の対比
両部分は、いずれも全体が環状体をなすタイヤの、正面視で左側に設けられた外周を周方向に略帯状に一周する、横幅の約1/4幅のタイヤ表面部並びに溝部及び凹部(以下「溝部等」という)であるから、位置、大きさ及び範囲が一致するものである。

4 両部分の形態の対比
両部分の形態を対比すると、両部分の形態には、主として以下の共通点及び相違点が認められる。

(1)両部分の形態の共通点
(共通点A)両部分は、環状体をなすタイヤの、正面視で、左端に設けられた、外周を周方向に略帯状に一周するタイヤ表面部及び溝部等から成り、周方向に同一形状の溝部等を連続して配した点で共通する。
(共通点B)両部分は、正面視で左側のトレッド部からショルダー部にかけての部分全体(以下「左トレッド・ショルダー区画」という)の態様が、正面視略円弧状に緩やかに湾曲した形状の外周部としている点で共通する。
(共通点C)両部分は、左トレッド・ショルダー区画の形態について、横幅の大半を占める横方向の溝部を、左端寄りの周方向に等間隔に66個設け、横方向の溝部の大半に亘る、略逆さ「へ」の字状の溝部分の直線状長溝部分と平行に、細いサイピングを横方向の溝部間の半ばに等間隔に66個設けている点、
(共通点D)両部分は、各横方向の溝部間の左端寄りに2個ずつの小円凹部を、周方向に等間隔に合計132個設けている点で共通する。
(2)両部分の形態の相違点
(相違点a)左トレッド・ショルダー区画の形態について、本願部分は、右端寄りの周方向に横方向の溝部を横切って一周する細溝部を設けているのに対し、引用部分にはない点、
(相違点b)横方向の溝部の傾きについて、本願部分は、水平方向に対し、略逆さ「へ」の字状の溝部分のうちの直線状長溝部分で見ると正面視、約5度斜め上へ傾斜しているのに対し、引用部分は正面視、約12度斜め上へ傾斜している点、
(相違点c)横方向の溝部について、本願部分は、略逆さ「へ」の字状の溝部分の右端から区画内右端にかけて、正面視斜め下方に直線状の細溝部を設けており、全体で、90度左方向に回転した略変形逆「Z」字状であるのに対し、引用部分は、略逆さ「へ」の字状の溝部分の左端から、鉤状に正面視下方に折り返し、全体で、90度左方向に回転した略「了」字状であって、さらに、各横方向の溝部を区画内左端で周方向に細溝で連ねている点、
(相違点d)引用部分は、横方向の溝部の略逆さ「へ」の字状の溝部分の右端の上角から正面視斜め上方に向けて短細溝部を設け、略中央の直線状溝部分の右端の下角から区画内右端にかけて、斜め下方に直線状の細いサイピングを設けているのに対し、本願部分は、設けていない点で、両意匠は相違する。

第5 判断
1 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、同一である。

2 両部分の用途及び機能の類否判断
両部分の用途及び機能は、一致するものであるから同一である。

3 両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分の位置、大きさ及び範囲は、物品全体の形態の中における位置、大きさ及び範囲が一致するものであるから、同一である。

4 両部分の形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品の需要者は、主に、その使用者である一般ドライバー、自動車メーカー及びタイヤ販売業者等の取引者がその需要者であって、発進、加速、減速及び制動時の力を路面に伝えるトレッド部及びタイヤ内部の熱を放散するショルダー部に形成されたタイヤ表面の溝部等の形態は、特に注視して観察するといえる。
(1)両部分の形態の共通点
(共通点A)及び(共通点B)は、両部分全体の態様に係るものではあるが、周方向に同一形状の溝部等を連続して配することも、略円弧状に緩やかに湾曲した形状の外周部とすることも通常取り得る形態であるから、両部分の類否判断に与える影響は小さい。
(共通点C)及び(共通点D)の左トレッド・ショルダー区画の態様については、この自動車用タイヤの分野において、略逆さ「へ」の字状の溝部分を有する溝部や、その直線状長溝部分と平行に細いサイピングを周方向に等間隔に設けているもの、小円凹部を端部の周方向に多数連続して設けているものもごく普通に見られるものであって、これらの共通点が両部分の類否判断に与える影響は小さい。
(2)両部分の形態の相違点
(相違点a)及び(相違点b)は、周方向に一周している細溝部は、横方向の溝部分を横切っているものであり、横方向の溝部の印象に関わり、いずれも両部分の類否判断に一定の影響をおよぼすものである。次に、(相違点c)の横方向の溝部の形態が、全体で、90度左方向に回転した、略変形逆「Z」字状であるか、略「了」字状であるかの点は、横方向の溝部の形態の視覚的印象に大きく関わり、細部ではあるが、(相違点d)の略逆さ「へ」の字状の溝部分の右端の上角に設けられた短細溝部の有無も、(相違点c)を補強し、タイヤ表面に形成された、溝部の形態を特に関心を持って注視する需要者にとって、全く別異の印象を与えるものであるから、両部分の類否判断におよぼす影響は大きい。

5 両意匠の類否判断
そうすると、形態における相違点の(相違点a)及び(相違点b)は両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度あるものであり、(相違点c)及び(相違点d)は、類否判断に及ぼす影響は大きいものであるから、(相違点a)ないし(相違点d)の両部分の類否判断に及ぼす影響は、総じて大きいものであって、両部分の類否判断を決定付けるものであるのに対して、形態の共通点の(共通点A)ないし(共通点D)の両部分の類否判断に与える影響は、いずれも小さく、それら(共通点A)ないし(共通点D)があいまっても、共通点の両部分の類否判断に与える影響は総じて小さく、相違点が共通点を凌駕し、両部分の類否判断を決定付けるものであるから、両部分は類似しない。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品、両部分の用途及び機能、並びに両部分の位置、大きさ及び範囲が同一であるが、形態においては、両部分は類似しないものであって、両部分の類否判断を決定付けるものであるから、本願意匠は引用意匠に類似しない。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2021-06-23 
出願番号 意願2020-9143(D2020-9143) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤澤 崇彦 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 渡邉 久美
江塚 尚弘
登録日 2021-08-13 
登録番号 意匠登録第1693948号(D1693948) 
代理人 特許業務法人栄光特許事務所 

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