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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 L1
管理番号 1378802 
審判番号 不服2021-5721
総通号数 263 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-11-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-05-06 
確定日 2021-10-05 
意匠に係る物品 シートパイル用連結具 
事件の表示 意願2020- 4084「シートパイル用連結具」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、2019年9月2日の欧州連合知的財産庁への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う令和2年(2020年)3月2日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

令和 2年(2020年) 6月26日付け 拒絶理由の通知
同年 10月30日 意見書の提出
令和 3年(2021年) 1月28日付け 拒絶査定
同年 5月 6日 審判請求書の提出

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「シートパイル用連結具」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第3 原審の拒絶の理由及び引用した意匠

原審における拒絶の理由は、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下、「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」を「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法3条2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。

「本願意匠に係るシートパイル用連結具の属する分野において、シートパイルとの適宜の位置関係に連結係止部を設けるために、連結具の板状部材を平板状、直角クランク状、又は鈍角クランク状等に適宜変更させることは、例えば引用意匠1乃至3にみられるように本願出願前よりありふれた手法です。
そうすると本願意匠は、その出願前に公然知られた引用意匠1に基づいて、その直角クランク状となっている板状部材を、当該分野におけるありふれた手法により、例えば引用意匠3にみられる平板状に変更し、部材の厚みを僅かに増加させる等の当業者が容易に成し得る程度の軽微な改変を加えた程度のものにすぎません。
したがって、本願意匠は、当業者であれば容易に創作することができたものと認められます。

引用意匠1
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1633339号の意匠

引用意匠2
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1633340号の意匠

引用意匠3
米国特許商標公報 2017年11月 7日
シートパイル用連結具(登録番号US D801794S)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH29328374号)」

第4 当審の判断

以下、本願意匠の意匠法3条2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠
(1)意匠に係る物品
本願の意匠に係る物品は、土木・建築工事において、護岸や土留め等に用いられるシートパイル(鋼矢板)を連結するための「シートパイル用連結具」である。

(2)本願意匠の形態
本願意匠は、側面において、左右方向にのみ連続する長尺材であって、正面において、全体が左右対称の略先割れしゃもじ形をなすものであり、具体的には、略横長楕円形の上端中央を開口し端部を弧状に面取りして、その内側を略倒C字状に凹ませて継ぎ手部とし、その両側から下端中央に向かって緩やかな傾斜状に延出した後、垂下し、略短帯状に形成して板状接合部としたものである。

2 引用意匠
(1)引用意匠1(別紙第2参照)
ア 意匠に係る物品
意匠に係る物品は、土木・建築工事において、護岸や土留め等に用いられるシートパイル(鋼矢板)を連結するための「シートパイル用連結具」である。
イ 形態
引用意匠1は、側面において、左右方向にのみ連続する長尺材であって、正面において、略横長楕円形の上端中央を開口し端部を弧状に面取りして、その内側を略倒C字状に凹ませて継ぎ手部とし、その下端中央を下方にくびれ状に延出して、その先の板状接合部を略帯状に延ばして略直角クランク状に左側に屈曲したものである。
(2)引用意匠2(別紙第3参照)
ア 意匠に係る物品
意匠に係る物品は、土木・建築工事において、護岸や土留め等に用いられるシートパイル(鋼矢板)を連結するための「シートパイル用連結具」である。
イ 形態
引用意匠2は、側面において、左右方向にのみ連続する長尺材であって、正面において、略横長楕円形の上端中央を開口し端部を弧状に面取りして、その内側を略倒C字状に凹ませて継ぎ手部とし、その下端中央を下方にくびれ状に延出して、その先の板状接合部を略帯状に延ばして略鈍角クランク状に左側に屈曲したものである。
(3)引用意匠3(別紙第4参照)
ア 意匠に係る物品
意匠に係る物品は、土木・建築工事において、護岸や土留め等に用いられるシートパイル(鋼矢板)を連結するための「シートパイル用連結具」である。
イ 形態(本願意匠の向きに合わせて引用意匠3の形態を認定する。)
引用意匠3は、側面において、左右方向にのみ連続する長尺材であって、正面において、全体が左右非対称の略Y字形をなすものであり、具体的には、左側に突出した略横長楕円形の上端中央付近を開口し端部を弧状に面取りして、その内側を略倒C字状に凹ませて継ぎ手部とし、継ぎ手部両端のうち左端は下端中央右寄りを下方にくびれ状に延出し、右端は上端を略こぶ状に張り出して上方寄りを小さく膨らませた後、内側に緩やかに傾斜しながら垂下し、それぞれ、その先を略短帯状に形成して板状接合部としたものである。

3 本願意匠の創作性の検討
この物品の属する分野においては、側面において、左右方向にのみ連続する長尺材で、継ぎ手部を、正面視、略横長楕円形の上端中央付近を開口し端部を弧状に面取りして、その内側を略倒C字状に凹ませたものや、継ぎ手部の下端中央を下方にくびれ状に延出したものは、引用意匠1及び引用意匠2に見られるように、本願出願前に公然知られているものであり、また、板状接合部を、正面視、縦帯状に垂下したものも、下記の参考意匠に見られるように、本願出願前に公然知られているものであることから、これらの態様は、当業者にとって、格別の創作を要したものということはできない。

参考意匠(別紙第5参照)
2018年1月9日発行の米国特許商標公報に記載された「シートパイル用連結具」の意匠(登録番号US D807159S号)
(特許庁意匠課公知資料番号HH29334233)

しかしながら、本願意匠のように、正面視において、全体が左右対称の略先割れしゃもじ形で、継ぎ手部の両側から下端中央に向かって緩やかな傾斜状に延出した後、垂下し、板状接合部を略短帯状に形成したものは、引用意匠には見られないものであり、一定の創作を有するものといわざるを得ない。
そうすると、本願意匠の態様は、この種物品分野において独自の着想によって創出したものであり、当業者が公然知られた形態に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第5 むすび

以上のとおりであって、本願意匠は、原審が示した理由によっては意匠法3条2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2021-09-14 
出願番号 意願2020-4084(D2020-4084) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (L1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 奈良 日向子清野 貴雄伊藤 宏幸 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 内藤 弘樹
渡邉 久美
登録日 2021-10-18 
登録番号 意匠登録第1698793号(D1698793) 
代理人 村井 康司 
代理人 魯 佳瑛 

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