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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 M2 |
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管理番号 | 1379914 |
審判番号 | 不服2021-6411 |
総通号数 | 264 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2021-12-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-05-19 |
確定日 | 2021-11-16 |
意匠に係る物品 | 静電気帯電防止ホース用アースクリップ |
事件の表示 | 意願2019- 27466「静電気帯電防止ホース用アースクリップ」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、意匠法第4条第2項の適用を受けようとする、令和1年(2019年)12月11日の意匠登録出願であって、主な手続の経緯は以下のとおりである。 令和2年(2020年) 8月31日付け 拒絶理由の通知 令和2年(2020年)10月14日 意見書の提出 令和3年(2021年) 2月10日付け 拒絶査定 令和3年(2021年) 5月19日 拒絶査定不服審判の請求 第2 本願意匠 本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「静電気帯電防止ホース用アースクリップ」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似し、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとの理由であって、拒絶の理由に引用した意匠は、下記の意匠である。 特許庁発行(発行日:2002年1月9日)の公開特許公報記載 特開2002-005372 図2、図3及び関連する記載に表されたアース部材18の意匠 (以下「引用意匠」という。別紙第2参照。) 第4 対比 1 意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は「静電気帯電防止ホース用アースクリップ」であり、引用意匠の意匠に係る物品は「アース部材」であって、表記は異なるが、粉粒体やペレット等をホース内に流す際に発生する静電気の帯電を防止するために、静電気帯電防止ホースの導電部と金属パイプ等を締結するものであり、アースの機能を有するから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、用途及び機能が共通する。 2 形態の対比 本願意匠の向きに合わせて引用意匠の形態を認定する。 (1)形態の共通点 全体は、1本の線材が2周巻かれたコイル部と、線材の両端部が上方に折り曲げられてコイル部の上部に形成された2つのつまみ部から成る。 コイル部は、左側面から見て左にいくにつれてしだいに拡径している。 左側面から見て、前方(手前側)のつまみ部は、線材の端部から垂直に伸張する部分、内側に直角に折れ曲がって水平状になる部分、及び下方に垂下する部分が順に形成されて、全体として略倒コ字状に表されている。後方(奥側)のつまみ部は、線材の端部から垂直に伸張する部分と、内側に直角に折れ曲がって水平状になる部分が順に形成されている。 (2)形態の相違点 (相違点1)コイル部下端の拡径の程度 左側面から見たコイル部下端の拡径の程度(傾斜角度)は、本願意匠では約25度であるのに対して、引用意匠では約3度である。 (相違点2)後方のつまみ部の形状 左側面から見た後方のつまみ部の形状は、本願意匠では水平状になった部分の先で鋭角(約33度)に折れ曲がり、全体として略直角二等辺三角形状に表されているが、引用意匠では水平状になった部分の先で下方に垂下する部分が形成されて、全体として前方のつまみ部と左右対称の略倒コ字状に表されている。 第5 判断 1 意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能が共通するから、類似する。 2 形態の共通点及び相違点の評価 両意匠の意匠に係る物品は、静電気帯電防止ホースの導電部と金属パイプ等を締結するものであり、実際の使用に当たってはつまみ部を直接指で触ることとなるから、このような物品を選定して購入し、使用する需要者は、細部の形状を観察することとなり、両意匠の形態の類否判断を行うに当たっては、使用方法なども考慮しつつ、コイル部の具体的な形態やつまみ部の形態等の細部の形態について評価すべきである。 (1)形態の共通点 線材を2周巻いたコイル部の上方につまみ部を前後2つ形成した共通点は、「静電気帯電防止ホース用アースクリップ」の物品分野の意匠において、下記の参考意匠1のように他にも見受けられ、また、ホースとパイプを締結する用途を有する「ホース締付具」などの物品分野の意匠においても下記の参考意匠2ないし参考意匠4のように見受けられるから、需要者が特に注目する共通点であるとはいい難い。したがって、この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 また、前後のつまみ部が、共に垂直に伸張する部分と、内側に直角に折れ曲がって水平状になる部分が形成されている共通点も「ホース締付具」の物品分野の意匠において既に見受けられるので(例えば上記の参考意匠2)、需要者が特に注目するとはいい難く、この共通点も両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。 そうすると、形態の共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいといわざるを得ない。 参考意匠1(別紙第3参照) 特開2013-36503(公開日:2013年2月21日)の【図5】(b)に表されたアース部材30の意匠 参考意匠2(別紙第4参照) 特許庁が昭和52年12月23日に発行した意匠公報記載 意匠登録第464501号(意匠に係る物品、ホース締付具) 参考意匠3(別紙第5参照) 特許庁意匠課が平成24年3月9日に受け入れた、特許庁意匠課公知資料番号第HJ23079675号(意匠に係る物品、ホースクランプ) 参考意匠4(別紙第6参照) 特許庁意匠課が平成2年7月27日に受け入れた、特許庁意匠課公知資料番号第HC02021463号(意匠に係る物品、ホース締め付具) (2)形態の相違点 まず、(相違点1)について、約25度(本願意匠)と約3度(引用意匠)の傾斜角度の違いは需要者が一見して気付く差異であるというべきであり、拡径していること自体が共通点であるとしてもその違いは顕著であるから、相違点1が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。 次に、(相違点2)について、本願意匠の前後のつまみ部の形状が非対称に表されているところ、静電気帯電防止ホース用アースクリップ」や「ホース締付具」の物品分野の意匠においては前後のつまみ部の形状を対称に表すことが通常である(例えば参考意匠1ないし参考意匠4)ことを踏まえると、形状を非対称にした本願意匠の前後のつまみ部は特異であるというべきであり、需要者がつまみ部を直接指で触ることを考慮すると、需要者が本願意匠の前後のつまみ部の形状に大いに注目することとなる。したがって、相違点2が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいといえる。 3 両意匠の類否判断 両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、上述のとおり、相違点2が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく、相違点1が両意匠の類否判断に及ぼす影響が一定程度認められることとあいまって、相違点は総じて両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいというべきである。そうすると、相違点は共通点がもたらす共通する印象を圧して、両意匠に異なる美感を起こさせるといえる。 したがって、両意匠は、意匠に係る物品は類似するが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。 第6 むすび 以上のとおり、本願意匠は、原査定における拒絶の理由に引用した意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから、同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2021-10-27 |
出願番号 | 意願2019-27466(D2019-27466) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(M2)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 蓮 遥子 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
渡邉 久美 小林 裕和 |
登録日 | 2021-11-24 |
登録番号 | 意匠登録第1702019号(D1702019) |
代理人 | 特許業務法人 英知国際特許事務所 |