• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 L2
管理番号 1380972 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-03-01 
確定日 2021-06-25 
意匠に係る物品 防草シート押さえ用プレート 
事件の表示 意願2020− 8794「防草シート押さえ用プレート」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、意匠法第14条第1項の規定により本願意匠を3年間秘密にすることを請求した、令和2年(2020年)4月30日の意匠登録出願であって、主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年(2020年) 8月26日付け 拒絶理由の通知
令和2年(2020年)10月 7日 意見書の提出
令和2年(2020年)11月20日付け 拒絶査定
令和3年(2021年) 3月 1日 拒絶査定不服審判の請求

第2 本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「防草シート押さえ用プレート」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似し、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとの理由であって、拒絶の理由に引用した意匠は、下記の意匠である。

ザバーン用防草ワッシャー 緑色 WS−GR50 50個入
[オンライン]
[掲載日 2017年4月2日以前(5/9頁のレビュー参照)]
[検索日 2020年8月26日]
インターネット:<URL:https://item.rakuten.co.jp/nou-nou/0107014211009/>3/9頁に表された、
「防草ワッシャー」の意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照。)

第4 対比
1 意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は「防草シート押さえ用プレート」であり、引用意匠の意匠に係る物品は「防草ワッシャー」であって、表記は異なるが、どちらも防草シートを押さえるためのものであるから、本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、用途及び機能が共通する。

2 形態の対比
本願意匠の向きに合わせて引用意匠の形態を認定する。
(1)形態の共通点
(共通点1)全体は、略扁平円盤状であって、平面側が略球面状に隆起したものであり、平面から見ると、中央に深い円形穴部が形成され、その左右に同じ間隔で深い円形穴部が水平方向に形成されて(以下、それぞれ「中央円形穴」「左円形穴」「右円形穴」という。)、左右対称に表されている。
(共通点2)垂直方向の凹部
平面から見て、中央円形穴の下方に、垂直方向の浅い凹部(以下「下方垂直凹部」という。)が形成されており、中央円形穴から離れるにつれて下方垂直凹部の深さが次第に浅くなっている。
(2)形態の相違点
(相違点1)平面から見た態様
(相違点1−1)中央円形穴の周囲の態様
本願意匠では、中央円形穴の周囲に、略ドーナツ状の浅い凹部(以下「ドーナツ状凹部」という。)が形成されており、ドーナツ状凹部の左右端から凹部が延伸して広幅帯状凹部を形成し、左円形穴と右円形穴に到達している。これに対して、引用意匠では、中央円形穴の周囲にドーナツ状凹部は形成されておらず、中央円形穴と左円形穴又は右円形穴の間に、細幅帯状の浅い凹部が形成されている。
(相違点1−2)円形穴部の大きさと形状
本願意匠の3つの円形穴部は同大であって、内周面がテーパー状に僅かに傾斜している(この傾斜により複数個を上下に積み重ねることが可能と推認される)が、引用意匠では、中央円形穴の径が左円形穴と右円形穴の径の約2倍であり(左円形穴と右円形穴は同大)、内周面が傾斜しているかは不明である。
(相違点1−3)中央円形穴の上方の態様
本願意匠では、中央円形穴の上方にも、下方垂直凹部と上下対称状の凹部(以下「上方垂直凹部」という。)が形成され、これらの凹部はドーナツ状凹部上下端の角部から延伸している。これに対して、引用意匠では、中央円形穴の上方に、その上端からごく僅かな隙間を隔てて、大きな略角丸横長長方形状凹部がごく浅く形成されており、その凹部内には文字部(商品名称を意味する)が浮き彫り状に表されている。
(相違点2)正面から見た態様
(相違点2−1)前後の形状
本願意匠では、上方垂直凹部と下方垂直凹部が平面視上下対称状であるために、正面から見ると、それらの凹部が、前後方向で一致して、正面の上端に略扁平倒コ字状の切り欠き部として表れる。これに対して、引用意匠では、上方垂直凹部が形成されておらず、略角丸横長長方形状凹部と中央円形穴との間に隔たりがある(略角丸横長長方形状凹部が中央円形穴上端の角部から延伸していない)ために、仮に正面から引用意匠を見たときには、下方垂直凹部の切り欠き部のみが表れて、その背後には当該隔たりの稜線が緩やかな弧状として表れると推認される。
(相違点2−2)構成比
正面から見た本願意匠の縦幅と横幅の比は約1:7.2であるが、引用意匠では正面から見た図はないので、その比は不明である。

第5 判断
1 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能が共通するから、類似する。

2 形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品は、防草シートを張る際に使用するものであって、それ以外の目的には使用されない専用のプレート(又はワッシャー)であるから、このような専用品を選定して購入し、使用する需要者は、円形穴部の大きさや、円形穴部周囲の凹部などの細部の形状を観察することとなり、また、このプレート(又はワッシャー)は一度に多数使用されることから、保管や搬送のために積み重ねておくなどの使用方法にも注意を払うというべきである。したがって、両意匠の形態の類否判断を行うに当たっては、使用方法なども考慮しつつ、細部の形状について評価すべきである。
(1)形態の共通点
全体が略扁平円盤状であって平面側が略球面状に隆起し、平面から見て、左円形穴、中央円形穴及び右円形穴が等間隔に水平方向に形成された共通点1は、「防草シート押さえ用プレート」の物品分野の意匠において他にも見られるありふれた態様であり、需要者がこの共通点に特に注目するとはいい難いから、共通点1が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
一方、中央円形穴の下方に浅い下方垂直凹部が形成されて、その深さが中央円形穴から離れるにつれて次第に浅くなっている共通点2は、両意匠に共通する形状特徴であって、細部の形状を観察する需要者が注意を払うというべきである。したがって、共通点2が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
(2)形態の相違点
まず、平面から見た態様について、ドーナツ状凹部の有無の相違は、中央円形穴の周囲という目立つ部位に関する相違あり、ドーナツ状凹部から延伸する帯状凹部が広幅である本願意匠と、ドーナツ状凹部がなく単に帯状凹部が細幅に形成されている引用意匠とでは需要者が抱く視覚的印象が大きく異なるといえる。また、本願意匠の3つの円形穴部が同大である点についても、需要者が一見して気付く引用意匠との相違点であり、中央円形穴の径が左円形穴と右円形穴の径の約2倍である引用意匠と視覚的印象を異にしている。したがって、相違点1−1及び相違点1−2が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
次に、中央円形穴の上方の態様についての相違点1−4、すなわち、上方垂直状部と下方垂直状部が上下対称状に形成されているか(本願意匠)、大きな略角丸横長長方形状凹部を中央円形穴の上方に形成されているか(引用意匠)の相違は、単に視覚的印象を異にするのみならず、使用方法から見た形状の特徴としても異なっている。具体的には、この相違は、正面から見た前後の形状の相違点2−1、すなわち、上方垂直凹部と下方垂直凹部が前後方向で一致して正面の上端に略扁平倒コ字状の切り欠き部として表れるか(本願意匠)、下方垂直凹部の切り欠き部とその背後の緩やかな弧状稜線が表れるか(引用意匠)の相違と対応しているところ、複数個を積み重ねると本願意匠の場合は上下平行になるが、引用意匠の場合は正面視前後形状が異なるために上下平行にはならない。したがって、保管のために積み重ねるという使用方法も考慮すると、需要者がこの相違に着目するといわざるを得ず、相違点1−4及び相違点2−1が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。
他方、構成比に係る相違点2−2については、「防草シート押さえ用プレート」の物品分野の意匠においては正面の構成比に様々なものがあるから、この相違が両意匠の類否判断を左右するとはいい難い。したがって、相違点2−2が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度にとどまる。

3 両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、上述のとおり、相違点1−1、相違点1−2、相違点1−4及び相違点2−1が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きく、その余の相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響が一定程度にとどまるとしても、相違点は総じて両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいというべきである。そうすると、両意匠の類否判断に及ぼす影響が一定程度認められる共通点2を考慮したとしても、相違点は共通点を圧して、両意匠に異なる美感を起こさせるといえる。
したがって、両意匠は、意匠に係る物品は類似するが、その形態において、需要者に異なる美感を起こさせるものであるから、両意匠は類似しない。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、原査定における拒絶の理由に引用した意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから、同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲









審決日 2021-06-09 
出願番号 2020008794 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (L2)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 北代 真一
特許庁審判官 井上 和之
小林 裕和
登録日 2021-07-06 
登録番号 1690812 
代理人 岡地 優司 
代理人 菊池 徹 
代理人 菊池 新一 
代理人 松本 英俊 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ