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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H7
管理番号 1382414 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-03-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-06-24 
確定日 2022-03-02 
意匠に係る物品 表示機能付き電子計算機 
事件の表示 意願2019− 26832「表示機能付き電子計算機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和1年(2019年)12月2日(パリ条約による優先権主張2019年6月2日、アメリカ合衆国)の意匠登録出願であって、令和2年(2020年)6月4日付けの拒絶理由の通知に対し、同年10月8日に意見書が提出されたが、令和3年(2021年)3月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年6月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願の意匠
本願の意匠は、意匠に係る物品を「表示機能付き電子計算機」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって(以下「本願意匠」という。)、物品の部分として意匠登録を受けようとする部分を、「破線で表された部分以外の部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線であり、一点鎖線で囲まれた部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。

「この意匠登録出願の意匠は、「表示機能付き電子計算機」の表示部内に表された変化する画像について部分意匠として意匠登録を受けようとするものであり、その形態は、表示部内に表示された地図または風景画像等の中央付近において、横方向に配列された文字・約物記号(山括弧)からなる文字列であり、特定の通りの名称及び進行方向等を表わすための当該文字列によって示される対象が、表示部内で表示されている位置に応じて、文字列の大きさや位置が変化して表示される態様を表した画像と認められます。
画像を表示する機能を有する物品において、表示部内の地図や風景画像等の中央付近に、通りの名称及び方向等を示すための文字列を横方向に配置すること(引用例1〜3)も、通りの名称とともにその進行方向を約物記号(山括弧)により表わすこと(引用例4〜6)も、本願出願前よりごく一般的に知られており、また、文字列の表示の大きさや位置が対象の表示位置に応じて変化する態様についても、本願出願前より公然知られています(引用例7)。
そうすると、本願意匠は、本願出願前よりごく一般的に知られた態様である、表示部中央付近に配列された文字・約物記号からなる文字列に、本願出願前より公然知られた変化の態様を組み合わせ、「表示機能付き電子計算機」に係る画像の意匠として表した程度にすぎず、当業者であれば容易に創作できたものと認められます。
なお、本願意匠の文字列では、通りの名称の左右を括るように約物記号(山括弧)を配列した態様が表されていますが、文字列を山括弧で括ること自体は、本願出願前よりごく当たり前に行われているため、これにより特段の美感が形成されているものとは認められません。

(中略)

引用例1
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2009年 1月26日
受入日 特許庁意匠課受入2009年 1月30日
掲載者 ナブマン エヌゼット リミティド
表題 S35
掲載ページのアドレス
http://www.navman.com/in-car/3294/New-Zealand/
Navman-New-Zealand/Our-Products/New-Products/S35/
に掲載された「ナビゲーション表示機」の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ20057110号)

引用例2
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2015年12月15日
受入日 特許庁意匠課受入2016年 1月15日
掲載者 Tata Motors Limited
表題 Safari Accessories Kit
− 2015 − The Real SUV
掲載ページのアドレス
https://safari.tatamotors.com/accessories
に掲載された「車載取付け型データ表示器」の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ27049397号)

引用例3
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2016年 9月13日
受入日 特許庁意匠課受入2016年 9月26日
掲載者 Foreclosure Listing App
MLS Canada Real Estate
表題 Foreclosure Listing MLS
Canada − Google Play の
Android アプリ
掲載ページのアドレス
https://play.google.com/store/apps/details?id=
ca.foreclosuresearch.gyv.foreclosures
に掲載された「スマートフォン用ソフトウェアの情報提供機能」の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ28107450号)

引用例4
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2014年 3月15日
受入日 特許庁意匠課受入2014年 6月26日
掲載者 mobaciao
表題 ストリートビューアプリ − Google Pl
ay の Android アプリ
掲載ページのアドレス
https://play.google.com/store/apps/details?id=
mobaciao.StreetWv
に掲載された「スマートフォン用ソフトウェアの地図機能」の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ25262268号)

引用例5
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2015年 3月 8日
受入日 特許庁意匠課受入2015年 5月27日
掲載者 HB Holding
表題 iTunes の App Store で配信中
の iPhone、iPod touch、iPa
d 用 Street View Maps
掲載ページのアドレス
https://itunes.apple.com/jp/app/street-view-ma
ps/id367910428?mt=8
に掲載された「スマートフォン用ソフトウェアの地図機能」の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ26283116号)

引用例6
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2016年11月15日
受入日 特許庁意匠課受入2016年11月28日
掲載者 ed.mobile
表題 3D Navigation Street −
Google Play の Android ア
プリ
掲載ページのアドレス
https://play.google.com/store/apps/details?id=
d_3d_navigation_maps.dnavigation
に掲載された「スマートフォン用ソフトウェアの情報提供機能」の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ28122695号)

引用例7
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1629371号の意匠
(使用状態を示す参考図1及び同2に表された画像) 」

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠の認定
(1)本願意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品(以下「本願物品」という。)は、「表示機能付き電子計算機」である。

(2)本願部分の画像について
本願部分は、表示機能付き電子計算機の表示部に表示された画像であり、表示部内には、コンテンツである地図または風景画像等が表示されるものであるところ、その中の、特定の場所に関する情報を表示するための画像が破線以外によって表されたもので(以下「本願情報表示部分」という。)、タップ等をすると、地図または風景画像等における始点の位置が移動して、画像自体も変化するものであることから、その機能を発揮できる状態にするための操作の用に供される画像(平成18年改正意匠法第2条第2項で規定された操作画像)であると認められる。

ア 本願部分及び本願情報表示部分の用途及び機能
(ア)本願部分の用途及び機能
本願部分の用途及び機能は、本願物品の表示部に、地図または風景画像等を表示するものである。
(イ)本願情報表示部分の用途及び機能
本願情報表示部分は、表示部内に表示された地図または風景画像等に表れる特定の場所に関する情報を表示するための画像であり、画像中、左右の矢印は、通りの方向や位置等を示す用途及び機能とするものである。

イ 本願部分及び本願情報表示部分の位置、大きさ及び範囲
(ア)本願部分の位置、大きさ及び範囲
本願部分は、正面視縦長の表示機能付き電子計算機本体において周囲に余地部を設けて配された表示部全面のうち各4辺からごく僅かに内側に設けられた一点鎖線に囲まれた、縦:横を約2.2:1とする矩形内を位置、大きさ及び範囲とするものである。

(イ)本願情報表示部分の位置、大きさ及び範囲
本願情報表示部分の位置、大きさ及び範囲は、表示部の縦幅の下から約1/3、横幅の中央からやや右側に寄った位置に、表示部の横幅約1/5の幅で、横方向の幅:高さ方向の幅を約5:1とする扁平横長の範囲とするもので、大きさが、横方向の幅についてみると、表示部の横幅の約1/5から、約1/4、約1/3へと変化するものである。

ウ 本願部分の形態
(ア)本願部分全体の形状
平坦状の表示部に表示された画像とするものである。

(イ)本願情報表示部分の形態
(a)本願情報表示部分は、中央に文字列を横方向に配し、左右を山括弧状の矢印で囲んだ態様とするものである。
(b)奥行きを伴って立体状に表れる地図や風景画像等における通りの面に対して垂直状に表れる態様とするものである。

2 引用例1ないし引用例7の認定
原査定における拒絶の理由で引用された引用例1ないし引用例7について、本願情報表示部分に相当する部分を以下のとおり認定し、それぞれ引用1部分ないし引用7部分という。
なお、引用例1ないし引用例7の出典や公知日などについては、前記第3に記載したとおりである。

(1)引用例1(別紙第2参照)
ア 引用例1及び引用1部分の用途及び機能
(ア)引用例1は、ナビゲーション表示器の画像であり、立体状の地図が表示されたものである。
(イ)引用1部分は、表示された地図の通り名を表示するものである。

イ 引用1部分の形態
(ア)引用1部分は、白地の横長長方形の中に文字列が横方向に配され、横長長方形の左下の角部に頂部を下向きとする小三角形を配し、その頂部によって該当する地図上の通りを指す態様とするものである。
(イ)奥行きを伴って立体状に表れる地図における通りの面に対して垂直状に表れる態様とするものである。

(2)引用例2(別紙第3参照)
ア 引用例2及び引用2部分の用途及び機能
(ア)引用例2は、車載取付け型データ表示機の画像であり、立体状の地図が表示されたものである。
(イ)引用2部分は、表示された地図の通り名を表示するものである。

イ 引用2部分の形態
(ア)引用2部分は、文字列が横方向に配されたものである。
(イ)奥行きを伴って立体状に表れる地図に表示された通りの角度に沿ってやや右斜め上に、また、通りの面の向きに沿って、文字列自体が斜め上の面を向くように倒れた態様とするものである。

(3)引用例3(別紙第4参照)
ア 引用例3及び引用3部分の用途及び機能
(ア)引用例3は、スマートフォン用ソフトウェアの情報提供機能による画像であり、空から真下を見下ろした状態(平面図)の風景画像状の地図が表示されたものである。
(イ)引用3部分は、表示された地図の通り名を表示するものである。

イ 引用3部分の形態
(ア)引用3部分は、(表示部略中央に)文字列が横方向に配された態様とするものである。
(イ)平面図状とする地図に表示された通り上に、通りの方向に沿って平面状に表れる態様とするものである。

(4)引用例4(別紙第5参照)
ア 引用例4及び引用4部分の用途及び機能
(ア)引用例4は、スマートフォン用ソフトウェアの地図機能の画像であり、風景画像状の地図が表れたものである。
(イ)引用4部分は、表示された地図の通り名及び通りの方向若しくは進行方向を表示するものである。

イ 引用4部分の形態
(ア)引用4部分は、山括弧の頂部が上を向くものと、下を向くものが上下に、横方向が僅かにずれて表され、それぞれの頂部に、文字列が横方向に配された態様とするものである。
(イ)
(a)2つの山括弧は、面を、通りの面の向きに沿ったように表した態様とするものである。
(b)文字列については、奥行きを伴って立体状に表れる風景画像状の地図における通りの面に対して垂直状に表れる態様とするものである。

(5)引用例5(別紙第6参照)
ア 引用例5及び引用5部分の用途及び機能
(ア)引用例5は、スマートフォン用ソフトウェアの地図機能の画像であり、風景画像状の地図が表れたものである。
(イ)引用5部分は、表示された地図の通り名及び通りの方向若しくは進行方向を表示するものである。

イ 引用5部分の形態
(ア)引用5部分は、山括弧の頂部が上を向くものと、下を向くものが上下に、横方向が僅かにずれて表され、それぞれの頂部に、文字列が横方向に配された態様とするものである。
(イ)
(a)2つの山括弧は、面を、通りの面の向きに沿ったように表した態様とするものである。
(b)文字列については、奥行きを伴って立体状に表れる風景画像状の地図における通りの面に対して垂直状に表れる態様とするものである。

(6)引用例6(別紙第7参照)
ア 引用例6及び引用6部分の用途及び機能
(ア)引用例6は、スマートフォン用ソフトウェアの情報提供機能の画像であり、上部に二次元の地図、その下に風景画像状の地図が表れたものである。
(イ)引用6部分は、表示された風景画像状の地図の通り名及び通りの方向若しくは進行方向を表示するものである。

イ 引用6部分の形態
(ア)引用6部分は、山括弧の頂部が上を向くものと、下を向くものが上下に、横方向が僅かにずれて表され、それぞれの右側に、文字列が全体の画像の下端から上に向けて配され、2つの山括弧は、文字列の上部を覆うようにして配された態様とするものである。
(イ)山括弧と文字列のいずれも、面を、通りの面の向きに沿ったように表し、通りに沿って縦方向にパースを伴った態様とするものである。

(7)引用例7(別紙第8参照)
ア 引用例7及び引用7部分の用途及び機能
(ア)引用例7は、情報提示機能付き電子計算機であり、道路状況に基づいてユーザに情報を提示する機能を備えたものである。
(イ)本願部分に相当する引用7部分は、表示部に表示された画像のうち、上段の横長長方形内の2つの矩形枠であり、使用状態を示す参考図1及び2によると、前方を走行する車両が表示され、その車両までの拒理を表示する機能を有するものと認められる。

イ 引用7部分の形態
引用7部分は、前方を走行する車両を表示した画像を矩形枠で囲ったもので、矩形枠の上部が枠と同色により塗りつぶされた横長長方形部とし、その中に車両を示す絵文字と文字列が横方向に配されたもので、表示された車両との拒理によって、枠全体の大きさが相対的に変化する態様とするものである。

3 本願意匠の創作非容易性について
本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討する。

本願物品である表示機能付き電子計算機において、地図や風景画像等が表示された画像に表れている通り(道路等)に対して、文字列によって通り名等の情報を表示することは、引用例1ないし引用例3に見られるとおり、本願の出願前に広く知られており、この点については、本願情報表示部分に特段の創作性を認めることはできない。

また、2つの山括弧状の矢印を画面上に表示し、通りの進行方向等を示す点も、引用例4ないし引用例6に見られるとおり、本願の出願前に広く知られており、この点については、本願情報表示部分に特段の創作性を認めることはできない。

さらに、そのような地図上に表示された情報部の大きさを変化させて表すことも本願出願前より引用例7に表れており、この点において、特段の創作性を認めることはできない。

しかしながら、本願情報表示部分の形態は、中央に文字列を横方向に配し、左右を山括弧状の矢印で囲んだ態様とするもので、表示部に表示された奥行きを伴って立体状に表れる地図や風景画像等における通りの面に対して垂直状に表れる態様とするものであり、この態様は、引用例1ないし引用例7のいずれにも表れておらず、これらを組み合わせても本願意匠を導き出すということはできない。

したがって、原査定における拒絶の理由で引用された意匠に基づいて、当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。


よって、結論のとおり審決する。


別掲









審決日 2022-02-15 
出願番号 2019026832 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 正田 毅
北代 真一
登録日 2022-03-09 
登録番号 1710128 
代理人 山本 泰史 
代理人 倉澤 伊知郎 
代理人 鈴木 博子 
代理人 田中 伸一郎 
代理人 ▲吉▼田 和彦 
代理人 工藤 由里子 

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