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審決分類 審判 査定不服  意9条先願 取り消して登録 H7
管理番号 1386228 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-10-14 
確定日 2022-06-28 
意匠に係る物品 Wireless earphone 
事件の表示 意願2019−502508「Wireless earphone」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成31年(2019年)3月18日の中華人民共和国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う、令和1年(2019年)9月18日の国際意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。

令和2年 8月 7日 優先権証明書の提出
10月28日(起案日) 拒絶の通報
令和3年 1月28日 意見書の提出
7月13日(起案日) 拒絶査定
10月14日 審判請求書の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「Wireless earphone」(参考訳:「ワイヤレスイヤホン」。以下、日本語訳で示す。)とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠は、意匠法第9条第1項の規定する最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないとしたものである。
拒絶の理由に引用された意匠は、平成31年(2019年)3月7日の意匠登録出願(意願2019−4677)であって、その後、令和1年(2019年)8月9日に設定登録された、意匠登録第1640382号の意匠(以下「引用意匠」ともいい、本願意匠と併せて「両意匠」という。)であり、意匠に係る物品を「イヤホン」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第2参照)。

第4 当審の判断
1 両意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、ワイヤレスイヤホンであるのに対して、引用意匠の意匠に係る物品は、イヤホンである。
(2)形状
(2−1)共通点
共通点1:全体の基本的な構成となる形状は、丸棒状の本体部(以下「シャフト部」という。)の正面上方に、正面視で僅かに横長の長円形で前後(奥行き方向)に偏平なスピーカー部を設けたものである。
共通点2:シャフト部の具体的な形状は、横長楕円柱状で、上下両端面を前方から後方に向けて下がる傾斜面としたものであり、長さ、幅(長径)及び厚み(短径)の寸法比率は、約11対3対2である。
共通点3:スピーカー部の具体的な形状は、正面視左方の部分を左斜め前方へ少しすぼめながら突出させ、その端部に縦長長円形の発音孔を設けたものであり、前後方向の中間付近に縦割れ線が1本表れている。
共通点4:スピーカー部の付け根部分は、凹弧状にくびれたものである。
共通点5:スピーカー部の具体的な位置は、スピーカー部の付け根部分をシャフト部の上端よりも少し下方としたものである。
共通点6:シャフト部の長さに対するスピーカー部の長さ(縦幅)の寸法比率は、約1対0.4としたものである。
(2−2)相違点
相違点1:シャフト部の具体的な形状について、本願意匠は、上面及び底面を極僅かに凹状とし、上面の中央に極小円形を設け、底面の中央に極小円形、その左右両側に前記極小円形の直径の約2倍の大きさの円形をそれぞれ設けたものであるのに対して、引用意匠は、上面及び底面を平坦とし、そこに本願意匠に見られるような円形は設けておらず、シャフト部の左右両側面の前後方向中央に縦線が1本表れているものである。
相違点2:スピーカー部の具体的な形状について、本願意匠は、前面が平面視緩やかな凸弧状で、左斜め前方に突出した部分の傾斜角度をシャフト部の中心軸に対して約60度としたものであるのに対して、引用意匠は、前面の右方が平面視緩やかな凸弧状、左方が平面視緩やかな凹弧状で、左斜め前方に突出した部分の傾斜角度をシャフト部の中心軸に対して約35度とし、左端(発音孔)の周囲にやや盛り上がった縁部を設けたものであり、左斜め前方に突出した部分が本願意匠のそれよりも、やや長く延びたものである。
相違点3:スピーカー部の前面において、本願意匠は、上下方向中央において左側に極小円形、右側に前記極小円形の直径の約2倍の大きさの円孔をそれぞれ設けたものであるのに対して、引用意匠は、そのような小円形や円孔を設けていないものである。
相違点4:スピーカー部の右側面において、本願意匠は、付け根部分に小さな横長長円形を設けたものであるのに対して、引用意匠は、そのような長円形を設けていないものである。
相違点5:シャフト部の幅に対するスピーカー部の幅(横幅)の寸法比率について、本願意匠は、約1対1.7としたものであるのに対して、引用意匠は、約1対1.9としたものである。
相違点6:シャフトの奥行きに対するスピーカー部の奥行き(厚み)の寸法比率について、本願意匠は、約1対1.6としたものであるのに対して、引用意匠は、約1対1.8としたものである。

2 両意匠の類否
(1)意匠に係る物品について
本願意匠に係る物品がワイヤレスイヤホンであるのに対して、引用意匠に係る物品はイヤホンであり、表記上は異なるが、両意匠共に無線によるイヤホンであるから、両意匠の意匠に係る物品は、同一と認められる。
(2)形状について
(2−1)共通点の評価
共通点1は、全体の基本的な構成に係るものであるが、全体を大まかに捉えたものであるし、この物品分野においてはありふれているから、この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
共通点2は、シャフト部の全体の形状に係るもので、楕円柱という周知の幾何学形状に基づくものであるが、両意匠にのみ見られる特徴であり、装着した状態においても見える部分として需要者が注目する部分といえるから、この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は、一定程度認められる。
共通点3及び共通点4は、スピーカー部の全体の形状に係るものであるが、両意匠にのみ見られる特徴ではないし、特に相違点2を包含するものであるから、これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は、小さい。
共通点5は、スピーカー部の具体的な位置に係るものであるが、この物品分野においてはありふれているから、この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は、小さい。
共通点6は、シャフト部の長さに対するスピーカー部の長さの寸法比率に係るものであるが、この物品分野においてはありふれているから、この共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は、小さい。
(2−2)相違点の評価
相違点1は、シャフト部の形状に係るものであるが、軽微な相違といえるから、この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は、小さい。
相違点2は、スピーカー部の形状に係るもので、特に左方の斜め前方に突出した部分の具体的な形状の相違は、耳穴にフィットするか否か、音の聞こえやすさ等の使用状態の観点から需要者が注目する部分に係るものといえるから、この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は、大きい。
相違点3は、スピーカー部の前面における小円形及び円孔の有無に係るもので、部分的な相違であるが、特に円孔の有無については、円孔がそれなりの大きさを有しており、装着する際に目に付きやすい相違といえるから、この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は、一定程度認められる。
相違点4は、右側面における小さな横長長円形の有無に係るもので、目に付きにくい相違といえるから、この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は、小さい。
相違点5及び相違点6は、シャフト部の幅及び奥行きに対するスピーカー部の幅及び奥行きの寸法比率に係るものであるが、大差のない相違であるから、これらの相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は、小さい。
(2−3)形状の類否
両意匠の形状の共通点及び相違点の評価は上記のとおりであり、共通点1ないし共通点6を合わせた形状が一定の共通感をもたらすとしても、スピーカー部における相違(特に相違点2及び相違点3)は両意匠に別異の印象をもたらすものであるから、両意匠の形状は類似しない。
(3)小活
そうすると、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、形状は類似しないから、本願意匠は、引用意匠に類似するものではない。

3 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、原査定における拒絶の理由に引用された意匠に類似する意匠ではなく、当該引用意匠をもって意匠法第9条第1項に掲げる意匠に該当するということはできないから、同法同条の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2022-06-15 
出願番号 2019502508 
審決分類 D 1 8・ 4- WY (H7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 上島 靖範
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2022-07-13 
登録番号 1720535 
代理人 河野 登夫 
代理人 河野 英仁 

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