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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 H7
管理番号 1386229 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-12-01 
確定日 2022-06-27 
意匠に係る物品 ヘッドホン 
事件の表示 意願2020− 22404「ヘッドホン」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、パリ条約による優先権(最初の出願:アメリカ合衆国、2020年4月17日)を主張する、令和2年(2020年)10月16日の意匠登録出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年(2021年) 1月13日付け 拒絶理由通知書
同年 6月14日 意見書
同年 8月30日付け 拒絶査定
同年12月 1日 審判請求書

第2 本願意匠
本願は物品の部分について意匠登録を受けようとするものであって、本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「ヘッドホン」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであり、願書の「意匠の説明」の欄には「実線で表された部分(当審注:以下「本願部分」という。)が、意匠登録を受けようとする部分である。図面に表されている破切れた細線は、模様を表す線ではなく、いずれも立体表面の形状を表す線である。」と記載されている(別紙第1参照)。

3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似し、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、同条同項の規定により意匠登録を受けることができない意匠)に該当するとの理由であって、拒絶の理由に引用した意匠は、下記の意匠である。
特許庁が平成25年(2013年)9月17日に発行した意匠公報に記載された、 意匠登録第1479204号(意匠に係る物品、マイクロホン付きヘッドホン)の意匠(以下「引用意匠」という。別紙第2参照。)の本願に相当する部分(以下「引用部分」という。)である。

第4 対比
1 意匠に係る物品の対比
本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、いずれもユーザーが頭部から被って耳に装着するヘッドホンの用途及び機能を有しているから、用途及び機能が共通する。

2 本願部分と引用部分の位置、大きさ及び範囲の対比
本願部分と引用部分(以下「両部分」という。)は、共にヘッドホンを装着した際に耳に当たるところに位置するクッション部であって、クッション部の内側から見える部分(以下「内側部分」という。)も範囲に含まれているから、両部分の位置、大きさ及び範囲は共通する。
他方、背面から見て、本願意匠では、クッション部の本体部側の径が本体部端部(本願部分以外の部分)の径よりもやや大きく、両者の間に段差を設けているが、引用意匠では、クッション部の本体側端部の径は本体部端部の径とほぼ同じであり、段差は形成されていない。
また、背面から見て、本願意匠のクッション部の厚みは本体部(本願部分以外の部分)の厚みの約2/3であり、引用意匠のクッション部の厚みは本体部の厚みの約2/3であって、本体部に対するクッション部の厚みは、本願部分の方が引用部分に比べて薄くなっている(約1/2)。
そして、本願部分のクッション部内側は本体部に至るまで深い略円錐台形状のくぼみとしているが、引用部分のくぼみの深さは不明である。

3 両部分の用途及び機能の対比
両部分は、主として耳を覆うクッション部としての用途を有し、内側部分は音漏れを防ぐ機能などを有するから、両部分の用途及び機能は共通する。

4 両部分の形状等の対比
(1)形状等の共通点
(共通点1)両部分は、耳に当たるクッション部の外形状が略縦長トラック形状の略環状体であり、内側部分の奥に平坦状の面(以下「奥面」という。)が表されている。
(共通点2)正面から見たクッション部上下端部の形状
正面から見て、クッション部の上下端部は凸弧状に表されており、その弧状頂部から本体部側のクッション部の厚み:弧状頂部から耳側のクッション部の厚みの比は約0.8:1である。
(2)形状等の相違点
(相違点1)内側部分の形状
本願部分の内側部分には、奥面とクッション部の間に、内壁面が形成されているのに対して、引用部分の内側部分は、奥面とクッション部の間に隙間が形成されており、内壁面は表されていない。
(相違点2)正面から見たクッション部の構成比
正面から見て、クッション部の最大径と厚みの比は、本願部分では約5.5:1であり、引用部分では約7:1である。すなわち、最大径に対するクッション部の厚みは、本願部分の方が引用部分に比べて約1.3倍厚い。

第5 判断
1 意匠に係る物品の類否判断
両意匠の意匠に係る物品は、用途及び機能が共通するから、類似する。

2 両部分の用途及び機能の評価
両部分の用途及び機能は、前記第4の3で認定したとおり共通するので、両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。

3 両部分の位置、大きさ及び範囲の評価
両部分の位置、大きさ及び範囲は、前記第4の2で認定したとおり共通する点があるが、相違する点もあるので、両意匠の類否判断に決定的な影響を及ぼすものではない。

4 両部分の形状等の共通点及び相違点の評価
(1)形状等の共通点の評価
両部分に相当する部分の形状について、耳に当たるクッション部の外形状が略縦長トラック形状の略環状体であって内側部分の奥面が平坦状である意匠は、「ヘッドホン」の意匠において本願の出願前に見受けられるから(例えば、意匠登録第1423073号の意匠(参考意匠1)。別紙第3参照。)、需要者がその共通点に殊更注目するということはできない。
他方、クッション部の上下端部が凸弧状に表されて、その弧状頂部から本体部側のクッション部の厚み:弧状頂部から耳側のクッション部の厚みの比が約0.8:1である点は、略縦長トラック形状の略環状体の片側端部を2割程度削ったような形状を呈しており、ヘッドホンを流通させるに当たって音や構造の違いを理解している需要者に一定の視覚的印象を与えているから、クッション部の外観形状を子細に観察する需要者は共通点2に対して注目するといえる。
そうすると、共通点1が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さいものの、共通点2が両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
(2)形状等の相違点の評価
奥面とクッション部の間に、内壁面が表されているか否かの相違は、ヘッドホンを流通させるに当たって音や構造の違いを理解している需要者が気付くものであり、本体部の厚みがクッション部の厚みの約1.5倍である点で本体部が薄型のヘッドホンである本願意匠において、本体部に形成された、薄い本体部の内部空間を広げている内壁面は、深いくぼみとなっていることとあいまって、従来のものには見られない形状であって需要者の注意を惹くといえる。したがって、相違点1が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きい。
他方、本願部分のクッション部が引用部分に比べて約1.3倍厚い相違点2は、「ヘッドホン」の意匠においてはクッション部の最大径と厚みの比には様々なものがあること、及び本願部分に見られるような約5.5:1の比が他にも見受けられる(例えば、意匠登録第1529933号の意匠(参考意匠2)。別紙第4参照。)ことを踏まえると、相違点2が両部分の類否判断に及ぼす影響は小さい。

5 両意匠の類否判断
両部分の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体として総合的に観察した場合、共通点2が両部分の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるものの、相違点1が両部分の類否判断に及ぼす影響は大きく、相違点は共通点を凌駕するというべきである。
したがって、両意匠の意匠に係る物品は類似し、両部分の用途及び機能の共通点についても一定程度評価できるものの、両部分の位置、大きさ及び範囲は両意匠の類否判断に決定的な影響を及ぼすものではなく、両部分の形状等の相違点1が両部分の類否判断に及ぼす影響が特に大きいから、本願意匠は引用意匠に類似しない。

第6 むすび
以上のとおり、本願意匠は、当審における拒絶の理由に引用した意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するということはできないから、同法同条同項の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲







審決日 2022-06-15 
出願番号 2020022404 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (H7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 山田 繁和
特許庁審判官 江塚 尚弘
小林 裕和
登録日 2022-07-06 
登録番号 1719768 
代理人 山本 泰史 
代理人 鈴木 博子 
代理人 倉澤 伊知郎 
代理人 ▲吉▼田 和彦 
代理人 田中 伸一郎 

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