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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 C6
管理番号 1386230 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-12-13 
確定日 2022-06-07 
意匠に係る物品 Induction cooker 
事件の表示 意願2020−500471「Induction cooker」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 主な手続の経緯
本願は,令和2年(2020年)2月3日(パリ条約による優先権主張:令和1年8月8日,中華人民共和国)の国際意匠登録出願であって,2021年2月25日付けの拒絶の通報に対し,令和3年5月25日に意見書が提出されたが,同年8月31日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,同年12月13日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,同月14日に手続補正書が提出されたものである。

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「Induction cooker」(参考訳:「電磁誘導調理器」,以下日本語訳で示す。)とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当し,意匠登録を受けることができないとしたものであって,当該拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」ともいい,本願意匠と併せて「両意匠」という。)は,下記のとおりである(別紙第2参照)。
引用意匠
公報発行官庁:大韓民国特許庁
文献名: 意匠公報
意匠登録番号:3008234780000「誘導加熱器」の意匠
登録日: 2015年10月30日
(日本国特許庁意匠課公知資料番号:HH27445908)

第4 当審の判断
1 両意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠に係る物品は「電磁誘導調理器」であり,引用意匠に係る物品は「誘導加熱器」である。
(2)形状
(2−1)共通点
共通点1:全体は,横幅よりも前後方向の長さ(奥行き)が長い,略偏平直方体形状の本体部と,その底面の四方の角部寄りに設けた脚部からなるものである。
共通点2:本体部は,上段部と下段部からなり,上段部の前後左右の寸法が,下段部よりも大きく,上段部の厚みが,下段部よりも薄いものである。
共通点3:上段部の上面は,平坦で,操作部や表示部は一切表れておらず,ごく薄いパネル体が設けられている。
共通点4:下段部の底面は,外形を円形状とする通気孔を設けたものである。
共通点5:上段部及び下段部の四隅は,円弧状である。
共通点6:脚部は,底面視略円形状の偏平体である。
(2−2)相違点
相違点1:全体の横幅,前後方向の長さ及び厚みの構成比率について,本願意匠は約4対5対0.8であるのに対して,引用意匠は約4対6対1である。
相違点2:上段部の周面について,本願意匠は,前後左右の4面を下方に向かってごく僅かに広がる傾斜面としたものであるのに対して,引用意匠は,左右両側面を垂直面とし,前後両面は上半分を下方に向かって僅かに広がる傾斜面とし,下半分を垂直面としたものである。
相違点3:上段部の四隅の角部について,本願意匠は,曲率が極めて大きい円弧で,ほぼ角張ったものであるのに対して,引用意匠は,曲率がやや小さい円弧で,やや丸みのあるものである。
相違点4:上段部の周面について,本願意匠は,何も設けていないものであるのに対して,引用意匠は,前面の右側と右側面の前側に縦長スリットを横方向に多数設けたものである。
相違点5:上段部の上面に設けられたパネル体について,本願意匠は,上段部の全厚みの約15分の2の厚みとしたもので,周縁が上段部の周面と面一状に表れているのに対して,引用意匠は,上段部の全厚みの約15分の1の厚みで,周縁が上段部の周面よりもごく僅かに内側にあり,そこがごく小さな段差形状として表れているものである。
相違点6:下段部の周面について,本願意匠は,前後左右の4面を下方に向けてごく僅かにすぼまる傾斜面とし,底面と接する稜線部が曲面であるのに対して,引用意匠は,前後両面については,中央の逆台形状部分を垂直面とし,残りの左右両端寄りの部分を下方に向けてすぼまる傾斜面とし,左右両側面については,下方に向けてごく僅かにすぼまる傾斜面としたものであり,底面と接する稜線部については,本願意匠のような曲面としたものではないものである。
相違点7:下段部の四隅の角部の曲率について,本願意匠は,曲率が小さい円弧で,丸みのあるものであるのに対して,引用意匠は,曲率がやや小さい円弧で,やや丸みのあるものである。
相違点8:下段部の周面について,本願意匠は,左右両側面の後ろ側と後面の中央の計3か所に,底面まで回り込む縦長スリットを横方向に複数設けたものであるのに対して,引用意匠は,前面の逆台形状部分にはほぼ全域にわたり格子状の孔を設け,右側面の前側には縦長スリットを横方向に多数設け,後面の逆台形状部分には左側半分強に略横長長方形が3段表れ,右半分弱に左から順に横長長方形,小円形,小横長長方形が表れているものである。
相違点9:底面について,本願意匠は,脚部を除けば突出部のない平坦状としたものであり,周側面から底面にかけて設けたスリットが左右後方と後辺に表れているものであるのに対して,引用意匠は,前方略半分と脚部を取り付ける部分が下方へやや段状に突出したものであり,前方略半分の段状部の前端寄りと後方右側にスリットが表れているものである。
相違点10:通気孔について,本願意匠は,中央やや前方寄りに1つ設けたものであり,その形状は,複数の円弧状スリットからなる扇形が6つ集まって円形状に表れたものであるのに対して,引用意匠は,後方寄りの左右に2つ設けたものであり,その形状は,複数の同心円と,中央の円から放射状に延びる線とが合わさった,下方向にやや突出した浅い「ざる」状のカバーに覆われたものである。
相違点11:脚部について,本願意匠は,周面が下方に向けて凹弧状にすぼまり,下端面を緩やかな凸曲面とした略逆円錐台形状であるのに対して,引用意匠は,周面に縦方向の細いリブを設けた円柱形状である。

2 両意匠の類否
(1)意匠に係る物品について
両意匠の意匠に係る物品は,表記は異なるが,どちらも電磁誘導調理器と認められるから,同一である。
(2)形状について
この種物品においては,その使用目的や使用状態を考えると,前方斜め上方から見える部分が需要者の目に触れる頻度が高い部分であるといえ,この部分が意匠的要部と認められる。
(2−1)共通点の評価
共通点1ないし6は,両意匠を大まかに捉えたものであり,大まかに捉えた程度においては,この物品分野においてありふれた形状であるから,これらの共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,小さい。
(2−2)相違点の評価
相違点1は,全体の構成比率に係る相違で,大きく異なる相違ではないものの,調理する際の使い勝手に多少影響することから,この相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,一定程度認められる。
相違点2ないし相違点5は,上段部の形状に係る相違で,前面の形状の相違(相違点2)については,スリットの有無の相違(相違点4)も含めて,さほど強い印象のある相違とはいえないものの,需要者の目に触れやすい部分に係るものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
また,四隅の曲率の相違(相違点3)及び上面のパネル体の相違(相違点5)については,さほど目立つものではないから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
相違点6ないし相違点9は,下段部の形状に係る相違で,上段部に比べて目に触れにくい部分に係るものであるところ,前面の形状の相違(相違点6)及び前面における格子状の孔の有無の相違(相違点8)については,前面の特徴を大きく異にする相違といえるから,これらの点において両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
また,周面四隅の丸みの大小の相違(相違点7)及び周面と底面とが接する稜線部を曲面としたか否かの相違(相違点6)については,丸みのある本願意匠に対して引用意匠は角張っているという異なる印象をもたらすと共に,四隅においては,本願意匠の下段部は引用意匠のそれよりも,やや奥まった目立たない印象を与えるから,これらの点においても両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められる。
そして,左右両側面及び後面のスリット等に関する相違(相違点8)及び底面に係る相違(相違点9)については,さほど目立つものではないから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さい。
相違点10は,底面に設けた通気孔の相違で,底面に占める割合も大きく,この部分だけを対比すれば大きく異なるといえるものの,通常の使用状態においては目に触れることのない部分に係るものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は限定的である。
相違点11は,脚部に係る相違で,この部分だけを対比すれば大きく異なるといえるものの,局所の相違であり,通常の使用状態においてはほとんど目に触れることのない部分に係るものであるから,両意匠の類否判断に及ぼす影響は限定的である。
(2−3)形状の類否
両意匠の形状の共通点及び相違点の評価は上記のとおりであって,全体の構成比率の相違,上段部における前面の形状の相違及びスリットの有無の相違,下段部における前面の形状の相違及び格子状の孔の有無の相違,下段部の周面における丸みの相違及び曲面の有無の相違が両意匠の類否判断に及ぼす影響は,いずれも一定程度認められるものだが,これらの相違が相まって,相違点が両意匠の類否判断に与える影響は,共通点のそれを凌駕するものといえるから,両意匠の形状は類似しない。
(3)小括
そうすると,両意匠は,意匠に係る物品は同一であるが,形状は類似しないから,本願意匠は,引用意匠に類似するものではない。

3 むすび
以上のとおりであって,本願意匠は,原査定における拒絶の理由で引用された意匠に類似する意匠ではなく,当該引用意匠をもって意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するとして,同法同条の規定によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲


審決日 2022-05-23 
出願番号 2020500471 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (C6)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 上島 靖範
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2022-06-22 
登録番号 1718712 
代理人 河野 英仁 

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