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審決分類 |
審判 C4 審判 C4 |
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管理番号 | 1265897 |
審判番号 | 無効2012-880002 |
総通号数 | 156 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2012-12-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2012-02-27 |
確定日 | 2012-11-05 |
意匠に係る物品 | ストーマパウチ用便器 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第1278257号「ストーマパウチ用便器」の意匠登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 登録第1278257号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 意匠登録第1278257号の意匠(以下,「本件登録意匠」という。)に関する手続,及び当審における手続の経緯は,概略以下のとおりである。 2005年(平成17年)8月23日 意匠登録出願 2006年(平成18年)6月23日 設定の登録(意匠登録第12782 57号) 2012年(平成24年)2月27日 本件意匠登録無効審判請求(請求人 ) 2012年(平成24年)3月12日 請求書副本の送達(被請求人に対し て) 2012年(平成24年)5月25日 審尋(請求人に対して) 2012年(平成24年)6月 7日 回答書(請求人) 2012年(平成24年)8月 9日 回答書副本の送達(被請求人に対し て) 第2 当事者の主張 1.請求人の主張 請求人は,「登録第1278257号意匠の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求める。」と申し立て,その理由として,概略以下の主張をし,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第16号証を提出したものである。 (1)意匠登録無効の理由の要点 ア 冒認意匠 意匠登録第1278257号の意匠は,意匠登録が創作者でない者であって,その意匠について意匠登録を受ける権利を承継しないものの意匠登録出願に対し,登録されたものであるから,意匠法第48条第1項第3号の規定により意匠登録を受けることができないものであるから,無効とすべきである。(当審注:以下,「無効理由1」という。) 被請求人は,2005年(平成17年)8月23日に意願2005-24231号を出願し,2006年(平成18年)6月23日に意匠登録第1278257号(甲第1号証)として登録された。しかし,被請求人の本件登録意匠の出願は,意匠登録出願ではないとみなされる,意匠法第9条第4項の規定に該当する。 また,請求人は,意匠法第48条第2項ただし書きの規定に該当する利害関係人である。 イ 新規性 被請求人の意匠登録第1278257号の出願日2005年(平成17年)8月23日以前に,類似する意匠が刊行物(甲第15号証及び甲第16号証)に記載されており,被請求人の本件登録意匠の出願は,意匠登録出願前に日本国内において頒布された刊行物に記載された意匠に類似するものであり,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当する(当審注:以下,意匠法第3条第1項第3号の該当性を「無効理由2」といい,甲第15号証に基づくものを「無効理由2-1」,同じく甲第16号証に基づくものを「無効理由2-2」という。)。 (2)証拠方法 本件登録意匠が,冒認出願であることを証するため,甲第1号証ないし甲第14号証を提出する。 本件登録意匠が,その出願前,公然知られていた意匠に類似する意匠であったことを証するため,甲第15号証及び甲第16号証を提出する。 甲第 1号証:本件登録意匠の登録公報である。 甲第 2号証:被請求人である匂坂英男が,有限会社大和製作所の代表取締 役社長であること,及び松井満が,請求人であるエムズジャ パン株式会社の代表取締役社長であることを証する公正証書 の写しである。 甲第 3号証:2003年(平成15年)10月26日付けの松戸よみうり の記事である。その紹介記事の中で,エムズジャパン株式会 社より松戸市の島村トータル・ケア・クリニックにトイレが 設置されたことが記載されている。 甲第 4号証:新聞記事の写真部分を拡大したものである。 甲第 5号証:2004年(平成16年)10月18日に,千葉県市原市役 所担当者A(当審注:以下,「市原市役所担当者A」という 。)に請求を送付した封筒に記載した宛名の写しである。 甲第 6号証:2005年(平成17年)4月28日付けの市原市役所担当 者Aから市原市役所内に設置するものとしてコンパクトなも のを開発するように要請されたFAXである。 甲第 7号証:2005年(平成17年)6月6日に完成したコンパクトサ イズのトイレの図面(札幌式トイレ「TypeVジャワメイ トコンパクトS型」)である。 甲第 8号証:市原市役所担当者Aからの2005年(平成17年)6月7 日付けFAXである。 甲第 9号証:社団法人日本オストミー協会千葉支部長のBから送られてき た市原庁舎のスペースを示したFAXである。 甲第10号証:市原市市役所土木計画課より,当方送付設計図を組み入れた 改修後の「多目的便所」を示す平面図,展開図が送られてき たFAXである。 甲第11号証:市原市役所担当者Aから,正式な書面にての見積書送付,写 真送付,表示板形状変更の依頼メールである。 甲第12号証:2005年(平成17年)6月29日付け送信の写真である 。 甲第13号証:市原市役所担当者Aから送信された,表示板形状の寸法を記 載した2005年(平成17年)6月30日付けのメールで ある。 甲第14号証:エムズジャパン株式会社に対し,「ストーマパウチ用便器」 の実施を中止させる被請求人から送付された通知書である。 甲第15号証:2003年(平成15年)7月15日付けの松本市議会発行 の「市議会だより」に,オストメイト対応の多機能トイレと して紹介されている記事である。 甲第16号証:2005年(平成17年)5月21日開催の「第2回日本褥 瘡学会九州地方会」のパンフレットの広告である。 (3)本件登録意匠を無効とすべき理由 ア 無効理由1(冒認意匠) (ア)本件登録意匠について 本件登録意匠(甲第1号証)は,上段の洗面台上に,左側から順に,洗浄液入れ,ペーパーホルダー,シャワーノズル,水洗レバーが設けられ,上段の大きさよりも縮小された中段,中段の大きさよりも縮小された下段が,入れ子状態で昇降可能なストーマパウチ用便器である。 (イ)札幌式トイレ「TypeVジャワメイトコンパクトS型」(甲第7号証)の開発経緯 請求人会社の代表取締役である松井満は,かねてより札幌式トイレ(障害や怪我の人たちが,限りある身体機能でも,できるだけ自力でトイレができるようにした結果生まれた略三角形のデザインのトイレ)を開発していたが,その後,札幌福祉協会の会長さんから,「オストメイト」にも配慮したものをと言われ,2003年(平成15年)10月11日に「オストメイト対応トイレ」を開発し,2003年(平成15年)10月26日付けの新聞「松戸よみうり」に「松戸市の島村トータル・ケア・クリニックに設置されたオストメイト用トイレは,エムズジャパン株式会社が開発したもので,身長に合わせて台が昇降できるようになっている。」と掲載された(甲第3号証)。 この新聞記事をきっかけとして,市原市役所担当者Aからの「オストメイト対応トイレ」に関する詳細資料請求があり,2004年(平成16年)10月18日に宅配便にて市原市役所担当者Aに資料を送った。 その後,2005年(平成17年)4月28日,市原市役所担当者AからFAXにて,「オストメイト対応トイレ」はサイズが大きく,市原市役所内に設置するための,コンパクトなサイズのものを開発するように要請された(甲第6号証)。 そこで,「オストメイト対応トイレ」を改良して,コンパクトサイズのトイレを2005年(平成17年)6月6日に完成し,その図面(札幌式トイレTypeVジャワメイトコンパクトS型,甲第7号証)のCADデータを,2005年(平成17年)6月7日付けで,市原市役所担当者Aのメールアドレス(甲第8号証)に送信した。 その後,市原市役所担当者Aから,ジャワメイトコンパクトS型(電動昇降式)に関する正式な書面にての見積書送付,写真送付,表示板形状変更の依頼があり(2005年(平成17年)6月29日付けのメール,甲第11号証),同日付けで送信した(写真については,甲第12号証)。 (ウ)利害関係人 請求人と被請求人の会社たる有限会社大和製作所とは,2003年(平成15年)1月24日付けで,「人工肛門者用昇降式トイレ」の共同開発に関し,協定を締結しており(「物品に関する協定公正証書」の写し,甲第2号証),本件登録意匠に係る物品「ストーマパウチ用便器」も,この協定に基づき開発したものであり,正常な取引関係が維持していたところ,請求人に無断で被請求人が冒認出願に係る意匠登録出願をした結果,不当にも本件意匠登録を受けた。 その後,被請求人から本件登録意匠に基づき,本件登録意匠に係る物品「ストーマパウチ用便器」の実施を中止させる旨の通知書が届いた(書留内容証明郵便の写し,甲第14号証)。 上記の理由により,請求人は利害関係人である。 (エ)無効理由1(冒認意匠)のまとめ 以上のとおり,意匠公報上の記載では,匂坂英男が創作者及び意匠権者とされているが,本件登録意匠に係る物品「ストーマパウチ用便器」の創作者は請求人会社の代表取締役社長である松井満である。 したがって,本件登録意匠は,意匠の創作をした者でない者であって,その意匠について意匠登録を受ける権利を承継しない被請求人がした意匠登録出願であって,意匠法第48条第1項第3号の規定に該当する冒認出願に対し登録されたものであり,無効とすべきである。 イ 無効理由2(新規性) 請求人が販売していた高さ調節が可能な「人工肛門者用昇降式トイレ」(オストメイト専用トイレ)が,2003年(平成15年)7月15日付けの松本市議会発行の「市議会だより」(甲第15号証)に,オストメイト対応の多機能トイレ(当審注:以下,「甲15記載意匠」という。)として紹介されている。 また,2005年(平成17年)5月21日開催の「第2回褥瘡学会九州地方会」のパンフレット(甲第16号証)にも,「人工肛門者用昇降式トイレ」(当審注:以下,「甲16記載意匠」という。)の広告が掲載されている。 (ア)本件登録意匠と甲15記載意匠及び甲16記載意匠の対比 (相違点) 本件登録意匠のペーパーホルダーの取付け位置が正面であるのに対して,甲15記載意匠及び甲16記載意匠は,洗面台右端に取り付けられている点,本件登録意匠には洗面台の右端に水洗レバーが取付けられているのに対して,甲15記載意匠及び甲16記載意匠には,水洗レバーが取り付けられていない点で,両者において差違がある。 (共通点) しかし,本件登録意匠は,上段の洗面台上に,洗浄液入れ,ペーパーホルダー,シャワーノズルが設けられ,上段の大きさよりも縮小された中段,中段の大きさよりも縮小された下段が,入れ子状態で昇降可能な三段の形態を備えており,上段の右側に,高さを調節する「ボタン」が取り付けられている点に特徴があり,この点において甲15記載意匠及び甲16記載意匠と同一である。 (イ)無効理由2(新規性)のまとめ よって,本件登録意匠は,その出願日2005年(平成17年)8月23日以前に,類似する意匠が刊行物に記載されており,本件登録意匠の出願は,意匠登録出願前に日本国内において,頒布された刊行物に記載された意匠に類似する意匠であり,意匠法第3条第1項第3号の規定に該当する意匠であり,意匠法第48条第1項第1号の規定に該当し,無効とすべきである。 2.被請求人の主張 被請求人に対して,審判長は,審判請求書の副本を送達し,期間を指定して答弁書の提出を求めたが,その期間を経過しても,被請求人からは,何ら応答がなかったものである。 第3 当審の判断 1.本件登録意匠 本件登録意匠の手続の経緯は,概略,第1に記載したとおりのものであって,本件登録意匠は,2005年(平成17年)8月23日に,意匠の創作をした者を匂坂英男,意匠登録出願人を匂坂英男,として意匠登録出願され,2006年(平成18年)6月23日に,意匠権の設定の登録がなされ,現在に至っているものである。 そして,本件登録意匠の意匠に係る物品は「ストーマパウチ用便器」であって,その形態は,願書の記載及び願書に添付した写真に現されたとおりのものである。(別紙第1参照) なお,前記のとおり,本件登録意匠に係る意匠登録出願の出願日は,2005年(平成17年)8月23日であって,平成23年改正意匠法の施行日2012年(平成24年)4月1日より前であることから,本件無効審判請求は,改正前の旧意匠法に基づくものである。 (1)本件登録意匠の形態について (基本的構成態様) A 本体部は,全体が略縦長直方体であって,上段,中段,下段の三段構造とし,上段から下段にいくにしたがって,順次縮小する入れ子状としている。 B 天板は,平面視,やや横長矩形状であって,中央やや左寄りに,やや大きな半球状の槽が設けられ,当該槽の左右後方には,それぞれ洗浄液吐出部及びシャワーノズルが設けられ,天板の右端には,水洗レバーが設けられている。 また,天板の背面側には,その幅一杯に正面視横長矩形状で厚みのやや薄い垂直壁が立ち上がり,当該垂直壁の正面中央からやや左寄りには,ペーパーホルダーが取り付けられている。 C 本体部下段は,昇降装置により,その高さが可変する。 (具体的構成態様) D 天板につき, D-1 平面視すると,前縁は,そのほぼ中央に,槽の直径とほぼ同じ幅で後方へ凸の緩やかな円弧状を呈する抉り部が設けられ,当該抉り部の左右部は,なだらかな山型状に前方へ僅かに突出している。 D-2 右下角部には,小物を入れるための略縦長矩形状の凹部が形成され,その四隅角部は,やや大きな円弧状を呈している。 D-3 前記凹部の上方には,当該凹部の左右幅の略2分の1の幅の,略縦長矩形状凸部が縦方向に垂直壁まで連設し,当該凸部には,水洗レバーが設けられている。 D-4 槽の底部中央には,小径の円形排出孔部が設けられ,当該排出孔部の左右対称位置に横長長円形状の凸条部が一つずつ設けられている。 E 本体部上段を正面視すると, E-1 上縁は,そのほぼ中央に,下方へ僅かに凸の略弓形状を呈する抉り部が設けられている。 E-2 右端寄りには,やや厚みを有する正方形状の板状体のボタンが上下に2個設けられている。 そして,それぞれのボタンには,板状体の外周縁のやや内側に正方形状の区画線が設けられ,当該区画線の内側中央に円形区画部が設けられ,さらに当該円形区画部の内側ほぼ一杯に三角形模様がそれぞれ上下対称形状に表されている。 F 垂直壁につき,正面視すると,正面部の周縁に若干の余地を残して,角丸横長矩形状のやや暗調子の色彩区画部が,正面部ほぼ一杯に設けられ,正面部の中央からやや右側には,ピンク色の模様部を有する小さな縦長矩形状部が設けられている。 G 洗浄液吐出部につき,側方視すると,略4分の1円弧状を呈する支持部の上端に,やや大きな楕円球状の洗浄液容器が設けられている。 H ペーパーホルダーにつき,左右のペーパー押さえ板は,側方視すると,横長長方形状を呈している。 I シャワーノズルにつき,ノズル部は,略半楕円球状であって,斜め上方に向かう細長円筒状支持部先端に設けられ,当該支持部の根本から上方には,側方視すると,弧状に湾曲するシャワーレバーが設けられている。 J 水洗レバーにつき,右側方視すると,やや間隔を空けて二本の小径の垂直円筒管が立ち上がり,その間には,やや上方寄りに,小径の水平円筒管が一本設けられ,全体が略変形「H」の字状を呈し,左側の垂直円筒管のやや上方寄りに,前方へ水平に突出する棒状のレバー部が設けられている。 2.無効理由1(冒認) 本件意匠登録が,意匠法第48条第1項第3号の規定,すなわち「その意匠登録が意匠の創作をした者でない者であってその意匠について意匠登録を受ける権利を承継しないものの意匠登録出願に対してされたとき」に該当し,同法第17条第4号の規定に違反して意匠登録を受けたものであるか否かについて,以下検討する。 (1)請求人適格(請求人が利害関係人であるか否かについて) 無効理由1の判断の前提として,請求人であるエムズジャパン株式会社が,意匠法第48条第2項ただし書きに規定される「利害関係人」に該当するか否かについて,以下検討する。 まず,2003年(平成15年)1月24日付けで公証人Tにより作成された「物品に関する協定公正証書」の写し(甲第2号証)によれば,請求人と被請求人の会社たる有限会社大和製作所(以下,「被請求人会社」という。)は,「人工肛門者用昇降式トイレ」に関し,共同開発製造し,請求人は,当該製品の総発売元であり,被請求人会社は,当該製品の製造元であったことが認められる。 また,2012年(平成24年)1月27日付けで,被請求人会社から請求人宛に送付された「通知書」(甲第14号証)によれば,「貴社は日本オストメイト協会発行誌の中で,貴社広告欄に写真を掲載し,弊社が権利保有しているところ当該意匠の許諾なく使用しております。従って,本通知書後一週間以内に削除してくださいますようお願いします。」「昇降に関する権利を許諾なしに使用する場合は,千葉県他関連部署に対し,差し止めを通達し,弊社に関わる損害賠償等の法的措置を執ることも検討せざるを得ないことになります。」と通知したことが認められる。 以上のことから,請求人は,被請求人会社と「人工肛門者用昇降式トイレ」に関し共同開発製造し,業務上の利害関係があるものと認められ,また,被請求人会社から請求人宛に,本件登録意匠の意匠権に基づく差し止め請求が通知されていることから,請求人は,意匠法第48条第2項ただし書きに規定する「利害関係人」に該当するものと認められ,それを左右する証拠は他にない。 (2)無効理由1(冒認)の判断 当審は,請求人が提出した証拠に基づくところ,本件登録意匠の真の創作者は,請求人の代表取締役である松井満(以下,「請求人代表取締役松井満」という。)と認める。その理由は,次のとおりである。 ア 甲第7号証に示された「札幌式トイレTypeVジャワメイトコンパクトS型」の意匠(以下,「甲7記載意匠」という。)の創作者について 請求人は,請求人代表取締役松井満が,千葉県市原市市役所に納入するために,2003年(平成15年)10月26日付け新聞「松戸よみうり」(甲第3号証)の記事において紹介された「オストメイト用トイレ」(別紙第2参照)をさらにコンパクトに改良し,甲7記載意匠(別紙第3参照)を,2005年(平成17年)6月6日に完成した旨主張する。 そこで,その真偽を検討するに,前記「オストメイト対応トイレ」の意匠と甲7記載意匠を対比すれば,請求人主張のとおり,甲7記載意匠は,前記「オストメイト対応トイレ」の昇降機能は残しつつ,「オストメイト対応トイレ」の意匠の左右幅を小さくして改良したものと認められる。 また,甲第7号証の納入仕様書(別紙第3参照)の下欄には,「名称 札幌式トイレTypeVジャワメイトコンパクトS型(納入仕様書)」,「2005/06/06」,「MsJapanInc.エムズジャパン株式会社」の記載が認められ,また,平成24年6月7日付けで提出された回答書として,甲第7号証に記載された「TypeVジャワメイトコンパクトS型」の意匠は,松井満が創作したものに相違ない旨の,請求人代表取締役松井満の宣誓書が提出されていることをも参酌すれば,甲7記載意匠の創作者は,請求人代表取締役松井満と認められ,これを左右する証拠は他にない。 イ 本件登録意匠と甲7記載意匠との対比 本件登録意匠と甲7記載意匠とを対比するにあたり,甲7記載意匠の形態を把握する際には,甲第7号証の納入仕様書(別紙第3参照)に記載された図面を主として使用し,さらに,甲第12号証に示された写真によって現された意匠(以下,「甲12記載意匠」という。(別紙第4参照))から得られる形態情報により,細部の形状や色彩等を補うこととする。 (ア)意匠に係る物品 本件登録意匠の意匠に係る物品は,「ストーマパウチ用便器」であり,甲7記載意匠の意匠に係る物品も,人工肛門や人工膀胱をつけた人達が,ストーマパウチを排泄洗浄するストーマパウチ用便器であって,両意匠の意匠に係る物品は,一致する。 (イ)形態の共通点 両意匠は,主として,以下の共通点が認められる。 (基本的構成態様) A 全体が,略縦長直方体であって,上段,中段,下段の三段構造とし,上段から下段にいくにしたがって,順次縮小する入れ子状としている点, B 天板は,平面視,やや横長矩形状であって,中央やや左寄りに,やや大きな半球状の槽が設けられ,当該槽の左右後方には,洗浄液吐出部及びシャワーノズル,天板右端には,水洗レバーが設けられ,また,天板の背面側には,その幅一杯に正面視横長矩形状で厚みのやや薄い垂直壁が立ち上がり,当該垂直壁の正面中央からやや左寄りには,ペーパーホルダーが取り付けられている点, C 下段は,昇降装置により,その高さが可変する点。 (具体的構成態様) D 天板につき, D-1 平面視すると,前縁は,そのほぼ中央部に,槽の直径とほぼ同じ幅で背面方向へ凸の緩やかな円弧状を呈する抉り部が設けられ,当該抉り部の左右部は,なだらかな山型状に前方へ僅かに突出している点, D-2 右下角部には,小物を入れるための略縦長矩形状の凹部が形成されている点, D-3 前記凹部の上方には,当該凹部の左右幅の略2分の1の幅の,略縦長矩形状凸部が縦方向に垂直壁まで連設し,当該凸部には,水洗レバーが設けられている点, D-4 槽の底部中央には,小径の円形排出孔部が設けられている点, E 本体部上段を正面視すると, E-1 上縁は,そのほぼ中央部に,下方へ僅かに凸の略弓形状を呈する抉り部が設けられている点, E-2 右端寄りには,やや厚みを有する正方形状の板状体のボタンが上下に2個設けられ,それぞれのボタンには,板状体の外周縁のやや内側に正方形状の区画線が設けられ,当該区画線の内側中央に円形区画部が設けられている点, F 垂直壁につき,正面視すると,甲7記載意匠については,甲12記載意匠をも参酌すれば,両意匠ともに,正面部の周縁に若干の余地を残して,角丸横長矩形状のやや暗調子の色彩区画部が,正面部ほぼ一杯に設けられている点, G 洗浄液吐出部につき,略4分の1円弧状の支持部の上部に,やや大きな楕円球状の洗浄液容器が設けられている点, H ペーパーホルダーにつき,左右のペーパー押さえ板は,側方視,横長長方形状である点, I シャワーノズルにつき,先端のノズル部は,略半楕円球状であって,斜め上方に向かう細長円筒形支持先端に設けられ,当該支持部の根本から上方には,側方視すると,弧状に湾曲するシャワーレバーが設けられている点, J 水洗レバーにつき,右側方視すると,やや間隔を空けて二本の円筒状の垂直管が立ち上がり,その間には,やや上方寄りに,小径の水平円筒管が一本設けられ,全体が変形略「H」の字状を呈し,左側の垂直円筒管のやや上方寄り,前方へ水平に突出する棒状のレバー部が設けられている点。 (ウ)相違点 両意匠は,主として,以下の相違点が認められる。 a 上段を平面視すると, a-1 槽につき,本件登録意匠には,底部中央の排水孔部の左右対称位置に横長長円形状の凸部が一つずつ設けられているのに対して,甲7記載意匠には,当該凸部がない点, a-2 上面右下角部の略縦長矩形状の凹部につき,本件登録意匠は,四隅角部,はやや大きな円弧状を呈しているのに対して,甲7記載意匠は,左上部の角部のみやや大きな円弧状を呈している点, b 垂直壁につき,正面視すると,本件登録意匠には,シャワーノズルのやや右側位置に,ピンク色の模様部を有する小さな縦長矩形状部が設けられているのに対して,甲7記載意匠の当該部位には,何も設けられていない点, c 上段の正面右端のボタンにつき,本件登録意匠は,円形区画部の内側に,三角形模様がそれぞれ上下対称形状に表されているのに対して,甲7記載意匠には,甲12記載意匠を参酌すれば,それぞれのボタンの外側左方に三角形模様がそれぞれ上下対称形状に表されている点, d 下段の高さにつき,本件登録意匠は,中段の高さとほぼ同じ高さであるのに対して,甲7記載意匠は,中段の高さよりもやや高い点。 (エ)判断 本件登録意匠と甲7記載意匠は,意匠に係る物品が一致し,形態についても,基本的構成態様AないしC,及び具体的構成態様DないしJについて,ほぼ一致するが,相違点aないしcが認められる。 しかしながら,両意匠は,同一と認められる。その理由は,次のとおりである。 相違点a-1の,本件登録意匠が,槽の底部中央の排水孔部の左右対称位置に横長長円形状の凸部を設けた点,及び相違点a-2の,本件登録意匠が,上面右下角部の略縦長矩形状の凹部の4隅角部を全てやや大きな円弧状とした点については,看者が注視して気が付く程度の部分的な細部の相違であり,また,相違点bの,本件登録意匠が,垂直壁正面部のシャワーノズルのやや右側位置に,内側にピンク色の模様部を有する小さな縦長矩形状部を設けた点ついては,垂直壁正面部という,比較的目に付きやすい部分ではあるが,当該矩形状部が物品全体に占める大きさは,極めて小さく,これもまた,部分的な細部の相違と言わざるを得ず,また,いずれも格別の創意が認められず,両意匠が,基本的構成態様AないしC,及び具体的構成態様DないしJが,ほとんど一致する中においては,これらの点に関し,両意匠に相違は存在しないと言うほかない。 また,相違点cの,上段の正面右端のボタンの,上下対称の三角模様が表された位置の相違については,甲12記載意匠を参酌すれば,当該三角模様は,両意匠ともに,いずれも,物品の全高を上下させるというボタンの機能を使用者に伝えるためのありふれた記号であって,その表された位置も,この種ボタンにおいては,極めてありふれた位置であり,また,両意匠の上下対称の三角模様の形状,色彩,及び大きさは,ほぼ同一であって,さらに,物品全体に占める当該模様の大きさは,いずれも極めて小さいことから,この点に関しても,両意匠に相違は存在しないと言うほかない。 次に,相違点dの,下段の高さの相違については,両意匠共に,下段の高さを可変することができることから,本件登録意匠における写真撮影時の可変時の高さと,甲7記載意匠の図面作成時の下段の可変時の高さが,たまたま相違しただけであり,この点に関しても,両意匠に相違は存在しないと言うほかない。 ウ 被請求人が甲7記載意匠を本件登録意匠に係る意匠登録出願の出願日前に知り得たか否かについて ウ-1 甲第2号証によれば,2002年(平成14年)7月31日付けで,請求人と被請求人会社との間で,両者の共同開発製造に係る「人工肛門者用昇降式トイレ」に関する「物品に関する協定公正証書」が締結されたことが,認められる。 同協定第1条及び第2条によれば,請求人は,当該トイレの天板部材を被請求人会社に供給し,被請求人会社が製造元として当該トイレを完成させ,それを請求人が総発売元として販売すると,されている。 そして,同協定第3条第1項によれば,両者は,本件製品について実施報告書を三ヶ月に一回提出するものとされている。 ウ-2 ところで,甲7記載意匠の完成日である2005年(平成17年)6月6日から本件登録意匠に係る意匠登録出願の出願日である2005年(平成17年)8月23日までの期間は,2ヶ月と17日である。 そして,この期間は,同協定が破棄された2011年(平成23年)9月30日よりも前であることから,同期間は,同協定が未だその効力を有していたものと認められる。 ウ-3 そうすると,甲7記載意匠の完成日2005年(平成17年)6月6日以降,この期間のいずれかの日,すなわち,本件登録意匠に係る意匠登録出願の出願日よりも前の日に,同協定第3条第1項に基づき,請求人は被請求人会社に対して,甲7記載意匠に関する実施報告書を提出し,当該実施報告書を受領した被請求人会社の代表取締役である被請求人は,本件登録意匠に係る意匠登録の出願日よりも前に,甲7記載意匠を知っていたものと推認され,これを左右する証拠は他にない。 エ 無効理由1(冒認)の小括 以上のとおり,本件登録意匠は,その意匠登録出願前に,請求人代表取締役松井満が創作した甲7記載意匠そのものであることから,本件登録意匠の真の創作者は,請求人代表取締役松井満であると認められ,また,本件登録意匠に係る意匠登録を受ける権利が,請求人代表取締役松井満から,被請求人に対して承継された事実は認められない。 そうすると,被請求人は,本件登録意匠を創作した者ではなく,また,本件登録意匠に係る意匠登録を受ける権利を承継したものでもないにもかかわらず,被請求人は,本件意匠登録に係る意匠登録出願前に,請求人から知った甲7記載意匠に基づいて,意匠を創作した者及び意匠登録出願人を,いずれも匂坂英男として,本件登録意匠の意匠登録出願をしたものであることから,無効理由1には理由がある。 3.無効理由2(新規性) (1)無効理由2-1について 請求人が,本件登録意匠の無効理由2-1の根拠とする甲15記載意匠は,甲第15号証として提出した,本件登録意匠の出願前,2003年(平成15年)7月15日に,松本市議会が発行した「市議会だより Vol.122」第6頁に記載された写真版によって現された「高さ調整の可能なオストメイト専用トイレ」と表示された意匠である。(別紙第5参照) ア 本件登録意匠と甲15記載意匠との対比 (ア)意匠に係る物品 本件登録意匠の意匠に係る物品は,「ストーマパウチ用便器」であり,甲15記載意匠の意匠に係る物品は,「人工肛門者用昇降式トイレ」であって,表記は異なるが,両意匠の意匠に係る物品は,いずれも,人工肛門や人工膀胱をつけた人達が,ストーマパウチを排泄洗浄するためのものであって,一致する。 (イ)形態の共通点 両意匠は,主として,以下の共通点が認められる。 A 本体部は,全体が略直方体形状であり,上段から下段にいくにしたがって,順次縮小する三段構造であって,下段は,昇降装置により,その高さが可変し,天板には,やや大きな半球状の槽が設けられ,天板背面側には,その幅一杯に正面視横長矩形状の垂直壁が立ち上がっている点, B 本体部上段の正面部の右端寄りには,やや厚みを有する正方形状の板状体のボタンが上下に2個設けられている点。 (ウ)形態の相違点 両意匠は,主として,以下の相違点が認められる。 a 本体部につき,正面視すると,本件登録意匠は,縦長略矩形状を呈しているのに対して,甲15記載意匠は,略正方形状を呈している点, b 半球状の槽につき,本件登録意匠は,天板の中央よりやや左寄りに設けられているのに対して,甲15記載意匠は,天板の左方略2分の1の範囲に設けられている点, c 当該槽の右側には,本件登録意匠は,小物を入れるための略角丸矩形状凹部が設けられ,その上方には,略縦長矩形状凸部が縦方向に垂直壁まで連設し,当該凸部の略中央には,変形略「H」の字状の円筒管及び水洗レバーが設けられているのに対して,甲15記載意匠は,何も設けられておらず、単に、上面部の略2分の1を占める大きな平坦面部を形成している点, d 当該槽の周縁の背面左寄りに設けられた洗浄液吐出部は,本件登録意匠は,側方視すると略4分の1円弧状を呈する支持部の上端に,やや大きな楕円球状の洗浄液容器を設けた態様としているのに対して,甲第15記載意匠は,太径の垂直円筒部の上端寄りに,洗浄液が吐出する細径のパイプを略水平方向に設けた態様としている点, e 垂直壁につき,本件登録意匠は,中央よりやや左寄りに,ペーパーホルダーが設けられ,その右側には,ピンク色の模様部を有する小さな縦長矩形状部が設けられているのに対して,甲15記載意匠は,右端にペーパーホルダーが設けられ,また,中央よりやや左寄りに,厚みのある,正方形状のやや大きな板状体が設けられている点, f ボタンにつき,本件登録意匠は,2つの正方形状の板状体の中の円形区画部内に,ボタンの機能を示す三角形状模様が,それぞれ上下対称形状に表されているのに対して,甲15記載意匠は,2つの正方形状の板状体の左側に矢印模様が,それぞれ上下対称形状に表されている点, g 本体部下段正面につき,本件登録意匠には,何も設けられていない平坦面状を呈しているのに対して,甲15記載意匠には,そのほぼ全面を覆い隠す略横長矩形状の薄い板体を貼り付けた態様としている点。 (エ)本件登録意匠と甲15記載意匠の類否判断 以上の共通点及び相違点が,本件登録意匠と甲15記載意匠との類否判断に及ぼす影響を評価し,両意匠の類否を意匠全体として総合的に検討する。 (i) 共通点の評価 共通点Aの,本体部全体が略直方体形状である点,及び上面の槽が半球状である点は,いずれも,格別特徴ある形態ということはできず,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱というほかない。 一方,下段が昇降装置により上下に可変する態様は,それなりに看者の注意を惹く点といえるが,意匠全体として観察したときには,本体部の全高が上下に変化するのみであり,格別形態的に特徴ある変化をするものではなく,両意匠の類否判断に及ぼす影響は,一定程度に留まるものと言わざるを得ない。 また,共通点Bのボタンは,物品全体に対して小さな部分であって,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものである。 (ii) 相違点の評価 これに対して,相違点に係る形態が,相乗して生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。 すなわち,相違点aの本体部正面の縦横比率の相違については,本件登録意匠は,甲15記載意匠をコンパクトにし,甲15記載意匠では設置できない狭いスペースに本件登録意匠を設置できるようにした結果の相違であることから,看者の注意をそれなりに強く惹く点であって,本体部正面の縦横比率の相違は,両意匠の類否判断に一定程度の影響を及ぼすものといえる。 また,相違点bないしeは,使用時に看者が最も注意を強く惹く上面の具体的な態様の相違に係るものであり,槽の位置,洗浄液吐出部の形態,ペーパーホルダ-の位置,小物を入れるための略角丸矩形状凹部の有無,変形略「H」の字状の円筒管及び水洗レバーの有無,更には,垂直壁に設けられた厚みのある正方形状のやや大きな板状体の有無の相違は,いずれも両意匠の印象を全く別異なものとするに十分であって,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものである。 次に,相違点fのボタンの機能を示す模様の表された位置,及び三角形模様か矢印模様かの相違,また,相違点gの本体部下段の正面の薄い板状体の有無は,いずれも部分的な相違であって,両意匠の類否判断に及ぼす影響は微弱なものであるが,前記の相違点と相乗して生じる意匠的な効果は,両意匠の類否判断に大きな影響を及ぼすものと認められる。 イ 無効理由2-1の小括 そうすると,両意匠の意匠に係る物品は,一致するが,その形態において相違点が共通点を凌駕し,意匠全体として看者に異なる美感を起こさせるものであるから,本件登録意匠と甲15記載意匠は,類似するものではない。 したがって,本件登録意匠は,その意匠登録出願前に,日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された意匠に類似する意匠とは認められず,無効理由2-1には理由がない。 (2)無効理由2-2について 請求人が,本件登録意匠の無効理由2-2の根拠とする甲16記載意匠は,甲第16号証として提出した,本件登録意匠の出願前,2005年(平成17年)5月21日に,福岡大学にて開催された「第2回日本褥瘡学会九州地方会」において配布されたパンフレットの広告に記載された写真版によって現された「上下に動くトイレ・S型」と表示された意匠である。(別紙第6参照) ア 本件登録意匠と甲16記載意匠との対比 (ア)意匠に係る物品 本件登録意匠の意匠に係る物品は,「ストーマパウチ用便器」であり,甲16記載意匠の意匠に係る物品は,「人工肛門者用昇降式トイレ」であって,表記は異なるが,両意匠の意匠に係る物品は,いずれも,人工肛門や人工膀胱をつけた人達が,ストーマパウチを排泄洗浄するためのものであって,一致する。 (イ)甲16記載意匠の形態 甲16記載意匠の形態は,甲第15記載意匠の形態と比較すると,本体部下段の正面の薄い板状体の有無において相違するのみである。 (ウ)本件登録意匠と甲16記載意匠の形態の共通点 両意匠の形態の共通点は,前記の本件登録意匠と甲15記載意匠の共通点(3.無効理由2(新規性)(イ)形態の共通点)と同じである。 (エ)本件登録意匠と甲16記載意匠の形態の相違点 両意匠の形態の相違点は,前記の本件登録意匠と甲15記載意匠の相違点(3.無効理由2(新規性)(ウ)形態の相違点)において,g本体部下段正面の相違点を除き,同じである。 イ 無効理由2-2の小括 そうすると,両意匠の意匠に係る物品は,一致するが,その形態において相違点が共通点を凌駕し,意匠全体として看者に異なる美感を起こさせるものであるから,本件登録意匠と甲16記載意匠は,類似するものではなく,その理由は,無効理由2-1で述べたとおりである。 したがって,本件登録意匠は,その意匠登録出願前に,日本国内又は外国において,頒布された刊行物に記載された意匠に類似する意匠とは認められず,無効理由2-2には理由がない。 (3)無効理由2の小括 以上のとおりであって,本件登録意匠に係る意匠登録出願の出願前に頒布された刊行物に記載された意匠(甲15記載意匠,又は甲16記載意匠)との類似性,すなわち,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠の該当性を理由とする無効理由2には,理由がない。 第5 むすび 以上のとおりであって,本件登録意匠は,請求人の提出した証拠方法及び主張によっては,意匠法第3条第1項第3号の規定に違反して登録されたものとして,同法第48条第1項第1号により,その登録を無効とすることはできない。 しかしながら,本件意匠登録は,その意匠登録出願人が意匠の創作をした者でない場合であって,その意匠について意匠登録を受ける権利を承継しないものの意匠登録出願に対してされたものであるから,同法第48条第1項第3号の規定により,本件意匠登録を無効とすべきものとする。 また,審判に関する費用については,意匠法第52条で準用する特許法第169条第2項で準用する民事訴訟法第61条の規定により,被請求人が負担すべきものとする。 よって,結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審理終結日 | 2012-08-31 |
結審通知日 | 2012-09-04 |
審決日 | 2012-09-27 |
出願番号 | 意願2005-24231(D2005-24231) |
審決分類 |
D
1
113・
113-
Z
(C4)
D 1 113・ 15- Z (C4) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 尾曲 幸輔、下村 圭子 |
特許庁審判長 |
川崎 芳孝 |
特許庁審判官 |
斉藤 孝恵 瓜本 忠夫 |
登録日 | 2006-06-23 |
登録番号 | 意匠登録第1278257号(D1278257) |
代理人 | 特許業務法人太田特許事務所 |