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審決分類 審判 査定不服  意9条先願 取り消して登録 C1
管理番号 1325918 
審判番号 不服2016-16576
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-10-18 
確定日 2017-02-15 
意匠に係る物品 こたつ掛ふとん 
事件の表示 意願2016- 5961「こたつ掛ふとん」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠
本願は,平成28年(2016年)2月19日に出願されたものであって,その意匠(以下,「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付したひな形によれば,意匠に係る物品を「こたつ掛ふとん」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下,「形態」という。)は,願書の記載及び願書に添付したひな形のとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠が,意匠法第9条第1項の規定する最先の意匠登録出願人に係る意匠に該当しないとしたものであって,拒絶の理由に引用した意匠(以下,「引用意匠」という。)は,本願と同一の出願人が本願出願前,平成27年(2015年)7月14日に意匠登録出願(意願2015-017203)をし,その後,審査を経て意匠登録をすべき旨の査定がなされて,平成27年12月22日に意匠法第14条第1項の規定により1年間秘密にすることを請求し,平成28年(2016年)1月29日に意匠権の設定の登録がなされ,同年2月29日に日本国特許庁が発行した意匠公報に秘密にすべき事項を除いて掲載された意匠登録第1544483号の意匠であって,その出願の願書及び願書に添付されたひな形によれば,意匠に係る物品が,「こたつ掛ふとん」であり,形態は,願書記載および添付されたひな形のとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 出願の経緯
そこで,本願の出願の経緯をみると,原審は,平成28年6月17日付けで上記の拒絶理由を通知し,出願人から指定期間内に何らの応答がなかったので,平成28年9月21日付けで本願について拒絶の査定をした。これに対して,請求人(出願人)は,平成28年10月18日付けで拒絶査定不服審判の請求をし,同時に手続補正書を提出し,【本意匠の表示】の欄を追加し,原査定の引例意匠で同一の出願人による本願意匠登録出願前に出願された意匠である,意願2015-017203号を本願意匠の本意匠とする補正を行った。

第4 当審の判断
1.本願意匠と引用意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「こたつ掛ふとん」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「こたつ掛ふとん」であって,本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は,一致する。
(2)形態
本願意匠と引用意匠(以下,両意匠という。)の形態を対比すると,主として,以下の共通点と差異点が認められる。
(2-1)共通点
基本的構成態様として,
(あ)全体は,中央部に穴の空いた,平面視で略隅丸正方形状の布状体である点。
具体的構成態様として,
(い)中央穴部は平面視で縦幅及び横幅の約3分の1幅の略隅丸多角形ないしは略円形状であり,縁部は,伸縮自在にシャーリングを寄せて形成されている点,
(う)穴部をまたぎ,縦幅及び横幅の約3分の1幅で略十字状の焦げ茶色の起毛材部が形成されており,その余の4隅の穴部に頂点を接する略4分の1円状の箇所は,模様布地で形成されている点,
(え)外方周囲の縁部は焦げ茶色の細帯状材でくるんで縁取られている点。
(2-2)相違点
具体的構成態様として,
(ア)中央穴部縁部は,本願意匠が白色の細かな網状ゴムの細幅帯状材が表面に縫い付けられているのに対し,引用意匠はベージュ色の細幅帯状材でくるんで縁取られている点,
(イ)4隅の略4分の1円状の箇所の模様布地部について,本願意匠は暗い朱色の地に寿老人や布袋,大黒などの2ないし3色程度の着色を施された七福神の柄を間隔を空けて散らしており,その余地部に一回り細かな柄の餅花や帆掛け船などの白色及び淡黄色の柄を散らしたものであるのに対し,引用意匠は暗赤色の地にベージュ色の桜の花と花弁が細かな柄として全面に散らされている点。

2.類否判断
以上の一致点,共通点,及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価・総合して両意匠の類否を意匠全体として検討し,判断する。
両意匠は,意匠に係る物品が一致し,形態については,以下のとおりである。
(1)共通点の評価
基本的構成態様としてあげた共通点(あ)は,両意匠の全体形状に係るものであるが,一続きに形成されることが通常であるこたつ掛ふとんの分野において,中央部に穴の空いた点は特徴として評価できるが,平面視で中央部に穴の空いたものは,こたつ掛ふとんの物品分野でこの意匠登録出願前に見られない態様ではなく,これのみによって,類否判断を左右するほどの大きな特徴とはいえない。
しかしながら,具体的構成態様としてあげた共通点(い)の中央穴部が縦幅及び横幅の約3分の1幅の略隅丸多角形ないしは略円形状であり,縁部が伸縮自在にシャーリングを寄せて形成されているこたつ掛ふとん中央部の穴部の態様については,このこたつ掛ふとんの分野において,両意匠のみに見られる共通の特徴部分であって,類否判断に与える影響は極めて大きいものである。
そして,共通点(う)の穴部をまたぎ,縦幅及び横幅の約3分の1幅で略十字状の焦げ茶色の起毛材部が形成され,その余の4隅の穴部に頂点を接する略4分の1円状の箇所が,模様布地で形成されている点は,このように表面を十字状に分割する態様はこたつ掛ふとんの分野においてよく見られるものであるが,焦げ茶色の起毛材による視覚的効果などは両意匠の具体的態様に係る共通点であって,一定程度の影響を類否判断に与えるものであるといえる。共通点(え)については,こたつ掛ふとんの分野において,外方周囲の縁部は細帯状材でくるんで縁取る端部の処理は,通常よく見られるものであり,こたつ掛ふとんの生地の色に合わせた色調を用いることもごく普通に行われる手法であるから,この点においては,類否判断に与える影響は,小さい。
よって,共通点(あ)について両意匠の類否判断に与える影響は大きくなく,共通点(い)については,類否判断に与える影響は極めて大きく,共通点(う)については,一定程度の影響を類否判断に与えるものであって,共通点(え)については小さいものだとしても,それら共通点(あ)ないし(え)があいまって生じる視覚的効果を考慮すると,共通点全体で類否判断に大きな影響を及ぼすものといえる。
(2)相違点の評価
これに対して,両意匠の具体的構成態様に係る各相違点は,相違点(ア)は,中央穴部縁部が本願意匠は白色の網状ゴム紐材が表面に縫い付けられているのに対し,引用意匠はベージュ色の細幅帯状材でくるんで縁取られている点については,穴部周囲は看者の注意が振り向けられる箇所ではあるが,表面のみに施されたものか表裏共にくるんで配されたものかは,こたつ掛ふとんの裏面はあまり注目しないところであって,縁の裏面に亘って布地が配されているか表面縁部のみであるかは部分的相違に留まり,また細かな網状の帯状体か布地による帯状体であるかも縁部の限られた細幅な部位に係る部分的相違であって,類否判断に与える影響は,小さい。相違点(イ)については,4隅の略4分の1円状の箇所の模様布地部について,具体的な態様の相違であるものの,こたつ掛ふとんの物品分野においては,通常,様々な色彩の様々な模様の布地を用いて形成されるところ,同形の4隅の略4分の1円状の箇所に配された小さな柄模様であって,その個別の柄模様による相違の類否判断に与える影響は,一定程度に留まるものである。
そして,相違点(ア)については,両意匠の類否判断に与える影響は小さく,相違点(イ)については,両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものであるとしても,それら相違点(ア)及び(イ)について相違点全体であいまって生じる効果を考慮したとしても両意匠の類否判断を決するまでのものには至らないものである。
(3)小括
したがって,両意匠は意匠に係る物品は一致し,形態においては,相違点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して,共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は相違点のそれを凌駕しており,両意匠は,意匠全体として観察した場合,類似するものと認められる。

第5 むすび
以上の通り,両意匠は類似するものと認められる。
そして,本願は,原審の平成28年9月19日付けの拒絶の理由について,「第3 手続きの経緯」に記載のとおり,平成28年10月19日に,本意匠の表示を追加し本意匠を原審の引用意匠である意願2015-17203号とする手続補正書を提出しており,この本意匠は,本願の意匠登録出願人の意匠登録出願に係る意匠であるから,意匠法第10条第1項に規定されている本意匠の要件,すなわち,「自己の意匠登録出願に係る意匠又は自己の登録意匠」に該当する。また,本願意匠の意匠登録出願の日は,本意匠の意匠登録出願の日以後であって本意匠の意匠公報の発行の日前であるから,意匠法第10条第1項に規定されている関連意匠の意匠登録出願の日の要件を満たしている。したがって,「本意匠と類似する意匠」である本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定により,意願2015-17203号(意匠登録第1544483号)を本意匠とする関連意匠として,意匠法第9条第1項の規定にかかわらず,意匠登録を受けることができるものとなった。
よって,原査定の拒絶の理由は解消され,その理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-01-26 
出願番号 意願2016-5961(D2016-5961) 
審決分類 D 1 8・ 4- WY (C1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 竹下 寛長谷川 翔平 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 渡邉 久美
刈間 宏信
登録日 2017-03-31 
登録番号 意匠登録第1575427号(D1575427) 

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