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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1337105 
審判番号 不服2016-9267
総通号数 219 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-03-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-22 
確定日 2017-01-18 
意匠に係る物品 自動車用ラジエターグリル 
事件の表示 意願2015- 14137「自動車用ラジエターグリル」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 本願意匠

本願は,意匠法第14条第1項の規定により1年間秘密にすることを請求した,平成27年(2015年)6月26日の意匠登録出願であって,その意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書の記載及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「自動車用ラジエターグリル」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照)

第2 原査定における拒絶の理由及び引用意匠

原査定における拒絶の理由は,本願意匠が意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠に該当するとしたものであり,本願意匠が類似するとして拒絶の理由に引用した意匠(以下「引用意匠」という。)は,本願出願前,日本国内又は外国において電気通信回路を通じて公衆に利用可能となった,日本国特許庁発行の意匠公報(発行日:平成26年1月6日)に掲載された,意匠登録第1487621号(意匠に係る物品,自動車用ラジエーターグリル)の意匠であって,その形態は,同公報に掲載されたとおりのものである。(別紙第2参照)

第3 当審の判断

1.本願意匠と引用意匠の対比
本願意匠の意匠に係る物品は「自動車用ラジエターグリル」であり,引用意匠の意匠に係る物品は,「自動車用ラジエーターグリル」であるが,これらは単なる表記の違いにすぎず,本願意匠と引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は共通する。

次に,両意匠の形態を対比すると,両意匠の形態については,主として,以下のとおりの共通点及び相違点がある。

まず,共通点として,
(A)全体は,正面視変形六角形状の外枠と,その内側に設けられたハニカム構造のメッシュからなるグリルであって,外枠及びメッシュ全体を上下方向及び左右方向に僅かに湾曲させて形成している点,
(B)外枠は,正面視が,水平で幅の細い略直線状の上下枠と中央やや上方部分で折曲した,折曲部分が最も幅広で上方及び下方に向かって漸次幅の狭くなる略ブーメラン形状の左右枠で構成されている点,
(C)メッシュは,外枠の内側に設けられた内周面の外枠前面から一段奥まった位置に設けられ,メッシュの中央部やや上方部分に,略横長長円形状のエンブレム取り付け部をメッシュの前面から僅かに突出して配設している点,
が認められる。

他方,相違点として,
(ア)外枠の態様について,本願意匠は,枠全体を左右方向に明確に湾曲させたものであり,外枠前面の外周側角部を僅かに面取りし,外枠内側の内周面を後方に向かって内側に傾斜する傾斜面としているのに対して,引用意匠は,枠全体を左右方向に僅かに湾曲させたものであり,外枠前面の外周側角部を大きく角面に面取りし,外枠内側の内周面を後方に向かってほぼ垂直な面に形成している点,
(イ)メッシュの態様について,本願意匠は,六角形の網目(以下「六角網目部」という。)を縦7列,その両側に変形した網目からなる縦列を左右に1列ずつ形成し,縦列において六角網目部を最大8個形成しているのに対して,引用意匠は,六角網目部を縦9列,その両側に変形した網目からなる縦列を左右に2列ずつ形成し,縦列において六角網目部を最大7個形成している点,
(ウ)六角網目部には,全て開口したものとメッシュ後方側を閉塞したものがあるところ,各六角網目部の前面開口部の態様について,本願意匠は,前面開口部の縦横比を約3.6:1としているのに対して,引用意匠は,同比を約2.5:1としている点,
(エ)メッシュ後方側を閉塞した六角網目部の配置態様について,本願意匠は,上辺側が,左右端部のみ上から1段,その他は上から2段目まで閉塞し,下辺側が,中央の1段目のみを閉塞しているのに対して,引用意匠は,上辺側が,上から2段目までを全て閉塞し,メッシュの上下中央の左右端部の変形網目部と左右中央の縦一列の六角網目部を閉塞し,下辺側が,下から1段目にある六角網目部の約半分の略台形状の網目部を全て閉塞している点,
が認められる。

2.両意匠の形態の評価
以上の共通点及び相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を評価し,本願意匠と引用意匠が類似するか否か,すなわち両意匠の類似性について考察する。

まず,共通点(A)の全体の態様,共通点(B)の外枠の態様,及び共通点(C)のメッシュの態様は,エンブレム取り付け部の形態及び配置態様も含めて,自動車用ラジエターグリルの分野において,本願意匠の出願前に既に見られるもの(例えば,参考意匠:日本国特許庁発行の意匠公報(発行日:平成26年(2014年)6月30日)に記載された,意匠登録第1501260号(意匠に係る物品,乗用自動車)の意匠におけるラジエターグリルの部分,別紙第3参照)であるから,上記共通点(A)ないし(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるものの,共通点全体としては,両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものである。

これに対して,相違点(ア)の外枠の態様については,外枠全体が左右方向に大きく湾曲し,左右枠内側の内周面も大きく傾斜して表れているとの印象を与える本願意匠の態様と,外枠全体が左右方向に僅かに湾曲し,枠の外側縁部分で更に後方に傾斜したとの印象を与える引用意匠の態様とは,斜め上方から見た場合は特に看者に別異な印象を与えるものであるから,この相違点(ア)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きいものである。
次に,相違点(イ)のメッシュの態様,相違点(ウ)の各六角網目部の前面開口部の態様については,横に細長い開口部からなる閉塞部の目立たない粗いメッシュのものであるとの印象を与える本願意匠の態様と,小開口部からなる所々に閉塞部を有する細かいメッシュのものであるとの印象を与える引用意匠の態様とは,看者に別異な印象を与えるものであるから,メッシュ全体の湾曲の相違も相まって,これらの相違点(イ)及び相違点(ウ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響も大きいものである。
また,相違点(エ)のメッシュ後方側を閉塞した六角網目部の配置態様については,特に目立たない部位にあるいわれて気付く程度の微細な相違であるので,この相違点(エ)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は小さいものである。
そして,これらの相違点(ア)ないし(ウ)が相まって生じる視覚的効果は,意匠全体として見た場合,上記共通点の影響を凌ぎ,需要者に別異の美感を起こさせるものであるということができる。

3.両意匠の類否判断
上記のとおり,両意匠は,意匠に係る物品について共通する一致し,形態については,共通点(A)ないし(C)が両意匠の類否判断に及ぼす影響は一定程度認められるものの,共通点全体としては両意匠の類否判断を決定付けるとまでは至らないものであるのに対して,相違点(ア)ないし(ウ)が相俟って生じる視覚的効果は,共通点のそれを凌駕して,類否判断を支配し,両意匠に異なる美感を起こさせるものであるから,本願意匠が引用意匠に類似するということはできない。

第4 むすび

以上のとおりであるから,原査定の引用意匠をもって,本願意匠を意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから,本願については,原査定の拒絶の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また,当審において,更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2017-01-06 
出願番号 意願2015-14137(D2015-14137) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 神谷 由紀 
特許庁審判長 斉藤 孝恵
特許庁審判官 江塚 尚弘
橘 崇生
登録日 2017-02-17 
登録番号 意匠登録第1571896号(D1571896) 
代理人 川越 弘 
代理人 原田 雅美 

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