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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J7 |
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管理番号 | 1342049 |
審判番号 | 不服2018-2686 |
総通号数 | 224 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2018-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2018-02-26 |
確定日 | 2018-06-19 |
意匠に係る物品 | マッサージ具 |
事件の表示 | 意願2017- 1009「マッサージ具」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成29年1月23日の意匠登録出願であって、平成29年8月18日付けの拒絶理由の通知に対し、平成29年10月2日に意見書が提出されたが、平成29年11月20日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成30年2月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願意匠 本願意匠は、意匠に係る物品を「マッサージ具」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。 第3 原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由は、本願意匠は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものである(別紙第2参照)。 引用意匠 著者の氏名 Amazon.com,Inc. 表題 たんとん・とん 掲載箇所 ドラッグストア ・ マッサージ・アロマ ・ マッサージ・ツボ押しグッズ 媒体のタイプ online 掲載年月日 2009年4月12日 検索日 2017年8月16日 情報の情報源 インターネット 情報のアドレス URL:https://www.amazon.co.jp/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%83%A9%E3%83%83%E3%82%AD%E3%83%BC%E3%83%A1%E3%82%A4%E3%82%AF%E5%8D%94%E4%BC%9A-%E3%81%9F%E3%82%93%E3%81%A8%E3%82%93%E3%83%BB%E3%81%A8%E3%82%93/dp/B0026ITHYE に掲載された製品名「たんとん・とん」として示された「マッサージ具」の意匠 第4 当審の判断 1.意匠に係る物品の対比 本願意匠の意匠に係る物品は「マッサージ具」であり、引用意匠の意匠に係る物品も同じく「マッサージ具」であるから、本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、一致する。 2.形態の対比(以下、対比のため、本願意匠の図面における向きを、引用意匠にもあてはめることとする。) (1)共通点 基本的構成態様として、 ア.全体は、略横長棒状のグリップ部と、正面視、略円形のマッサージ部を、横長薄板状のシャフト部で連結したものである点。 具体的な態様として、 イ.マッサージ部は、正面部に、周縁部を残し中央部に略円形ドーム状の基部を設け、その基部全体に多数の細棒状の突起部を、正面側に向けて立体放射状に取り付けている点、 ウ.グリップ部の正面視の態様において、左端部を略弧状とし、上辺と下辺の稜線の形状において、上下対称に、左端部寄りをわずかに湾曲状に凹ませ、中央部を緩やかな弧状に若干膨出したあと、右端部に向かって緩やかに傾斜しながら凹ませ、右端部手前で隆起して、右端部のグリップエンド部を略矩形状に形成したものである点、 エ.マッサージ部及びグリップ部は木肌色で、シャフト部は黒色に着色したものである点。 (2)相違点 具体的な態様として、 あ.マッサージ部の態様について (あ.-1)本願意匠は、中央部を頂部とする、背面視を右側に倒した略しずく形状とし平面視は裾広がりで緩やかな山なりに膨出した突起部を形成しているのに対し、引用意匠は、正面図のみであるため、背面部の態様が不明である点、 (あ.-2)本願意匠は、正面視、右端部をやや弧状に膨出しているのに対し、引用意匠は、膨出していない点、 い.シャフト部の態様について 本願意匠は、正面視、左右端部をそれぞれ拡開して裾広がり状としているのに対し、引用意匠は、上下辺ともに水平状である点、 う.グリップ部の平面視の態様について 本願意匠は、平面視、左端部を垂直状とし、上辺は、左端部寄りを僅かに に弧状に膨出したあと、湾曲状に若干凹ませ、続く中央部を緩やかに弧状に膨出したあと、右端部まで大きく緩やかな弧状とし、右端部は垂直状で縦に弧状に切り欠いたものとし、下辺は、左端部寄りを弧状に小さく膨出したあと、右端部手前まで水平状とし、右端部のグリップエンド部は、下方にやや突出した略矩形状をなしているものであるのに対し、引用意匠は、正面図のみであるため、正背面部の凹凸の態様が不明である点。 3.類否判断 (1)意匠に係る物品の類否判断 本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は、同一である。 (2)形態の共通点及び相違点の評価 両意匠の意匠に係る物品は、手に持って、肩や腰等をマッサージする「マッサージ具」であるから、その需要者は、一般需要者である。 したがって、この需要者の視点に基づき、各共通点及び相違点が観察されやすい部分か否か、関心を持って観察する部位か否かを評価し、各共通点及び相違点における形態が両意匠の類否判断に与える影響を、以下に個別評価する。 (3)共通点の個別評価 基本的構成態様としてあげた共通点ア.は、両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点に過ぎないものであるから、これらの点が両意匠の類否判断に及ぼす影響を大きいということはできない。また、具体的な態様としてあげた共通点イ.及びエ.もこの種物品の先行意匠に照らすと、いずれもありふれた態様であって、両意匠の類否判断に与える影響は微弱である。 一方、共通点ウ.のグリップ部の正面視における凹凸の態様は、握りやすく、扱いやすいように工夫されているものであって、この種物品の先行意匠に照らしても、ありふれているとはいえないから、両意匠の類否判断に一定程度の影響を与えるものといえる。 (2)相違点の評価 相違点あ.マッサージ部の背面部の態様について、まず、(あ.-1)については、背面部に突起部を設けることにより、正面部の細棒状の突起部とは異なるマッサージ効果が得られるものであって、体の凝りの具合等に応じて両面を適宜選択して2通りのマッサージを行うことができるものである点は、需要者の関心を強くひくものであることに加え、背面視、右側に延出した形状(略倒しずく形状)は、(あ.-2)の、本願意匠の右端部をやや弧状に膨出させた態様と相俟って、マッサージ部がシャフト部に引っ張られたような視覚的効果を生みだしているものであるから、背面部に突起部を設けているか否かが不明で、かつ、単に円形状のマッサージ部としただけのものである引用意匠とは、明らかに需要者に与える印象を異ならせるものであり、相違点あ.は、両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。 次に、相違点い.について、すなわち、本願意匠は、正面視、左右端部をそれぞれ拡開して裾広がり状としているのに対し、引用意匠は、上下辺ともに水平状としたものである点は、本願意匠は、左端部を裾広がり状とすることにより、マッサージ部とシャフト部が一体状をなすものであるが、同時に、右端部においても裾広がり状とすることによって、グリップ部の端部と段差なく弧状に連続したものとなっており、全体としてみると、マッサージ部からグリップ部までの外形状が、段差のないなめらかな曲線のみで表されたものとなっていることから、シャフト部の両端部に何の工夫もなく、単にマッサージ部とグリップ部を連結しただけの引用意匠とは、見た目の印象が明確に異なるものであり,その相違は,両意匠の類否判断に影響を与えるものといえる。 また、相違点う.について、本願意匠は、グリップ部を握った際、掌がしっくりなじむように、正面部と背面部に異なる凹凸をつけて、より握りやすく、扱いやすい工夫がなされているものであるから、この点が不明な引用意匠との比較において、相違点う.は,両意匠の類否判断に大きな影響を与えるものといえる。 (3)小括 そうすると、両意匠は、意匠に係る物品は、一致するが、形態においては、共通点が、未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでには至らないものであるのに対して、相違点が、両意匠の類否判断に与える影響は共通点のそれを凌駕しており、意匠全体として見た場合、相違点の印象は、共通点の印象を凌駕し、両意匠は、意匠全体として視覚的印象を異にするというべきであるから、本願意匠は、引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、原査定の引用意匠をもって、本願意匠は、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものとすることはできないから、原査定の拒絶の理由によって、本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2018-06-04 |
出願番号 | 意願2017-1009(D2017-1009) |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(J7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 宇都宮 啓明、加藤 真珠 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
内藤 弘樹 宮田 莊平 |
登録日 | 2018-07-27 |
登録番号 | 意匠登録第1611510号(D1611510) |
代理人 | 前田 和男 |
代理人 | 下山 冨士男 |