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審決分類 審判 査定不服  意3条登録用件 取り消して登録 J0
管理番号 1345923 
審判番号 不服2017-19552
総通号数 228 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2018-12-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2017-12-28 
確定日 2018-10-16 
意匠に係る物品 自律移動ロボット 
事件の表示 意願2016- 13095「自律移動ロボット」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、2016年3月22日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴い、物品の部分について意匠登録を受けようとする、平成28年(2016年)6月20日の意匠登録出願であって、平成29年(2017年)4月11日付けの拒絶理由の通知に対し、同年7月5日に意見書が提出されたが、同年10月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
その後、当審において、平成30年(2018年)4月23日付けで審尋を行い、同年7月13日に回答書が提出されたものである。

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠は、意匠に係る物品を「自律移動ロボット」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「「正面、左側面及び平面を表す図」、「背面、右側面及び底面を表す図」、「正面図」、「左側面図」、「背面図」、「右側面図」、「平面図」及び「底面図」において、破線で表した部分以外の部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分であり、「正面、左側面及び平面を表す図」及び「背面、右側面及び底面を表す図」を含めて部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を特定している。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しないというものであり、具体的には以下のとおりである。

「本願意匠は、平成29年1月10日付けの拒絶理由通知において、なお書きにて指摘したとおり、一の意匠を特定することができません。
すなわち、意匠登録を受けようとする部分を特定するに当たり、「意匠登録を受けようとする部分」は、物品全体の形態の中で一定の範囲を占める部分《一つの閉じられた領域》でなければなりません。そして、本願は、【意匠の説明】の欄に、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を「破線で表した部分以外の部分」とする旨記載しています。しかし、描かれる破線以外のスペースにおいてどの部分が意匠登録を受けようとする部分かが不明確であり、すなわち、例えば、天面や底面が全て意匠登録を受けようとする部分から除かれるとすれば、周側面も、実線以外全て除かれるということなのか、それとも、天面や底面と異なり、周側面には、破線を除く他に、側壁面として意匠登録を受けようとする部分が存在するものなのかなど不明確ですので、意匠登録を受けようとする部分を明確に特定することができません。 」

第4 請求人の主張と審尋回答書
1.審判請求書の主張
請求人は、平成29年12月28日の審判請求書において、本願部分は、一の意匠を特定している旨主張した上で、「実線の外郭線から「天面」、「底面」及び「周側面」が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分であることを、台輪状部の側面に形成された実線から「装飾板」が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分であることを、そして、破線によって、「天面」のうち4つの円形状の装飾と天面周縁隅部の態様、「底面」のうち4つの装飾(車輪状部)と底面周縁隅部の態様、及び、周側面のうち円形状または分割線状の装飾などが部分意匠として意匠登録を受けようとする部分以外の部分であることを明確に認定することが可能である。」とし、本願部分は、筐体の外形状である旨主張した。

2.審尋と回答書
1.の請求人の主張について、当審において検討し、平成30年4月23日付けで、以下の審尋を行った。
「本願意匠の願書に添付された図面を子細に観察すると、正面図や左側面図等において、上下端部にそれぞれ破線で表された部分が確認でき、それぞれの部分を平面図及び底面図と照合すると、上端部の破線部は、平面図の外形状(実線部)のすぐ内側に表される、これとほぼ同形の破線部と一致し、下端部の破線部は、底面部の一番内側の、外形状とほぼ同形の破線部と一致しています。
そうすると、本願意匠の平面部及び底面部は、テーパー面を介して、ほぼ全体が若干隆起した平坦面となっており、このテーパー面と隆起した平坦面からなる膨出部全体が破線で表されているものと認識できるものであることから、この平面部及び底面部は、膨出部全体が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分以外の部分であると認定できます。
しかしながら、請求人代理人は、審判請求書の「請求の理由」中、3.(5-2)の記載において、「すなわち、実線の外郭線から「天面」、「底面」(中略)が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分であることを、(中略)明確に認定することが可能である。」と主張されています。
この請求書の主張は、上記の審判合議体の認定とは異なるものであることから、請求人代理人は、審判合議体の認定が成り立たず、請求書の主張が妥当であることについて、合理的な説明をしてください。」

これに対し、請求人は、同年7月13日に、以下の回答書を提出した。
「審判請求人は、審判合議体の『本願意匠の平面部及び底面部は、テーパー面を介して、ほぼ全体が若干隆起した平坦面となっており、このテーパー面と隆起した平坦面からなる膨出部全体が破線で表されているものと認識できるものであることから、この平面部及び底面部は、膨出部全体が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分以外の部分である』との認定に同意し、「請求の理由」中、「3.(5-2)」の記載における『すなわち、実線の外郭線から「天面」、「底面」(中略)が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分であることを、(中略)明確に認定することが可能である。』との主張を取り消します。」

第5 当審の判断
平成29年4月11日付けの拒絶の理由は、上記第3に示すとおり、「破線以外で表した部分以外の部分」において、どの部分が意匠登録を受けようとする部分であるか不明確であり、意匠登録を受けようとする部分を明確に特定することができない、というものである。
そこで、当審において、本願意匠を認定し、本願部分が明確に特定することができるか否かについて検討する。

1.本願意匠
本願意匠の意匠に係る物品は、「自律移動ロボット」であり、本願部分の形態は、上下に扁平な略横長直方体形状の周側の四隅の角部を弧状に面取りした筐体の実線で表された部分である。
すなわち、筐体の上下面を除いた周側面部を本願部分とするものである。

そして、本願部分の形態についての詳細は、以下のとおりである。
(1)筐体の周側面部の下端部寄りを内側に段差状に凹ませている。
(2)当該段差部の正面部中央の両脇から、それぞれ両側面部を通って背面部中央の両脇まで、端部を弧状とする細幅帯状部を略コ字状に設けている。

なお、本願部分のなかに破線で描かれる大小の円形、長円形、細帯、縦線等は、本願部分の面上に表される構成物や切替線であって、本願部分以外の部分(意匠登録を受けようとする部分以外の部分)である。
また、本願部分を子細に観察すると、(1)の段差部の付け根部分は周囲に沿って破線で表されていることから、厳密には、周側面部はこの破線部を挟んで上下に分離しているものであるが、周側面部全体としての形態的な一体性が認められるため、本願部分は、一意匠と認定し得るものである。

2.判断
本願部分は、第4 2.審尋において認定したとおり、本願意匠の平面部及び底面部は、テーパー面を介して、ほぼ全体が若干隆起した平坦面となっており、このテーパー面と隆起した平坦面からなる膨出部全体が破線で表されているものと認識できるものであることから、この平面部及び底面部は、膨出部全体が、本願部分以外の部分であると認定できるものである。
そして、請求人は、第4 2.のとおり、回答書において、本願部分は、筐体の外形状である旨の主張を取り消しているから、当審における本願部分の認定と相違はない。
そうすると、本願部分は、上記1.のとおり、筐体の上下面を除いた周側面部と認定できるものであり、明確に特定することができるものであるから、原査定の拒絶の理由により、本願意匠が意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しない、ということはできない。

第6 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、原査定の拒絶の理由によっては、意匠法第3条第1項柱書きに規定する工業上利用することができる意匠に該当しないものであるということはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。


審決日 2018-10-03 
出願番号 意願2016-13095(D2016-13095) 
審決分類 D 1 8・ 1- WY (J0)
最終処分 成立  
前審関与審査官 杉山 太一石坂 陽子 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 宮田 莊平
内藤 弘樹
登録日 2018-11-16 
登録番号 意匠登録第1620096号(D1620096) 
代理人 岡野 智子 
代理人 瓜本 忠夫 

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