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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20189405 審決 意匠
不服20181816 審決 意匠

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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 B2
管理番号 1346809 
審判番号 不服2018-6200
総通号数 229 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2019-01-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-05-07 
確定日 2018-10-30 
意匠に係る物品 作業用手袋 
事件の表示 意願2017- 3287「作業用手袋」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成29年2月20日の意匠登録出願であって,平成29年9月1日付けの拒絶理由通知に対して,平成29年10月16日に意見書が提出されたが,平成30年1月30日付けで拒絶査定がなされ,平成30年5月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠

本願意匠は,意匠に係る物品を「作業用手袋」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を,願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定の拒絶の理由及び引用意匠

原査定の拒絶の理由は,本願意匠は,その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠(以下「引用意匠」という。)に類似するものであるから,意匠法第3条第1項第3号に規定する意匠(先行の公知意匠に類似するため,意匠登録を受けることのできない意匠)に該当するとしたものであって,具体的には以下のとおりである。
この意匠登録出願の意匠と下記の意匠とは,ともに編み生地で形成した手袋の手首部を除く表面にゴム被覆を2色施し,親指の甲側周縁部から各指部の中途部にその被覆部の境界を設けた基本的構成態様が大きく共通する。
他方,手首部の態様について,本願意匠が略横縞状であるのに対し,下記の意匠は略縦縞状である点に差異点が見られるが,当該差異点については,いずれも編み生地で形成された点で共通し,本願と同様に横縞状とした手首部の態様は,この種手袋で形成された点で共通し,本願と同様に横縞状とした手首部の態様は,この種手袋の物品分野において参考意匠1ないし3に見られるように本願出願前よりありふれた態様であることから,この差異点が類否判断に及ぼす影響は軽微なものといえる。
したがって,両意匠を意匠全体として見た場合,上記差異点は上記基本的構成態様の共通性を超えるものではなく,両意匠は類似する。

引用意匠(別紙第2参照)
日本国特許庁発行の意匠公報記載意匠登録第1499600号
(意匠に係る物品,手袋)の意匠

参考意匠1
日本国特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1453195号の意匠

参考意匠2
日本国特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1528713号の意匠

参考意匠3
独立行政法人工業所有権・研修館が2014年11月21日に受け入れたQS Safety Protect your life CATALOG 2015/2016
第85頁所載
作業用手袋の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC26019074号)

第4 対比

1 意匠に係る物品の対比
本願意匠の意匠に係る物品は「作業用手袋」で,願書の意匠に係る物品の記載には「本物品は,編地で形成した手袋の手首部を除く部分の表面に,ゴム又は樹脂で2色の被覆を施した作業用手袋である。」とあり,引用意匠の意匠に係る物品は「手袋」であって,願書の意匠に係る物品の記載には「手首部を除く掌部側および甲部側を淡色の被覆材でコーティングし,さらに掌部側および甲部側の一部を濃色の被覆材でコーティングした二層コーティングのニッティンググローブである。」とあり,表記は異なるが,主として作業に用いられる手袋と推認され,用途及び機能が一致する。

2 形態の対比
両意匠を対比するために,引用意匠の図の向きを本願意匠の図の向きに揃えたものとして,以下,それぞれの形態を対比する。

(1)形態の共通点
(共通点1)両意匠は,全体の基本構成を,5本の指を設けた指部(以下「指部」という。)と,手の甲,掌及び手首を覆う本体部(以下「本体部」という。),手首上方の開口端部までを編み生地で形成し(以下「手首上部」という。),指部と本体部の表面に被覆を施している点,
(共通点2)両意匠は,本体部の掌,指部の親指,及び親指を除く4本の指(以下「四指」という。)の掌側の全面及び四指の甲側の一部分を暗調子で被覆し,本体部の甲側,四指の甲側の一部分及び掌側手首部は明調子で被覆している点。

(2)形態の相違点
(相違点1)本願意匠は,手首上部の編み生地が略横縞状となっているのに対し,引用意匠は,略縦縞状となっている点,
(相違点2)本願意匠は,親指の甲側付け根における暗調子と明調子の被覆の境界線を,平面視において,親指の付け根中央にむけて四指側から凹弧状に上げたのち,緩やかに凸弧状に手首部にむけて下げているのに対して,引用意匠は,四指側から緩やかに親指付け根外側にむけて凹弧状に上げている点,
(相違点3)本願意匠は,四指の甲側における暗調子と明調子の被覆の境界線を,平面視において,指の先端から付け根までの長さの先端寄り約7分の1の箇所に,指の先端にむけて略半楕円状に設け,そこから甲側の四指全面を明調子に被覆しているのに対して,引用意匠は,指の先端から付け根までの長さの先端寄り約2分の1の箇所に,指の先端にむけて舌状に設けて内側を明調子に被覆をし,四指それぞれの境界線外側及びそれに連続する略半円状の指間を暗調子に被覆をしている点,
(相違点4)本願意匠は,本体部の掌下端部における暗調子と明調子の被覆の境界線を,底面視において,手首上部にむけて緩やかな凸弧状としているのに対して,引用意匠は,手首上部にむけて略円弧状としている点,
(相違点5)本願意匠は,手首上部の開口部を,右側面視において,長辺の長さを本体部の親指から小指までの横幅の約2分の1とする略横長長方形状としているのに対して,引用意匠は,径の長さを親指から小指までの横幅の約9分の4とする略円形状としている点,
(相違点6)本願意匠は,本体部と手首上部との境界を,平面視甲側において,略直線状としているのに対して,引用意匠は,本体部にむけて略円弧状としている点。

第5 判断

1 意匠に係る物品の類否判断
本願意匠と引用意匠の意匠に係る物品は,共通する。

2 形態の共通点及び相違点の評価
両意匠の意匠に係る物品である作業用手袋は,主に作業をする際の手の安全を確保し,物品の把持等の作業効率を高める目的で用いられるものであるから,需要者は作業における使用状態を想定した安全性や使いやすさに着目して観察するものということができる。したがって,安全性や使いやすさの観点から,指先,指の付け根,手首,手首上部の態様が需要者の注意を惹く部分であるということができる。

(1)形態の共通点
共通点1は,両意匠の形態を概括的に捉えた場合の共通点であり,この共通点は作業用手袋の属する物品分野で一般的に見受けられる態様であるため,意匠全体の美感に与える影響は小さい。
共通点2である,本体部の掌,指部の親指,及び四指の掌側の全面,そして四指の甲側の一部分を暗調子で被覆し,本体部の甲側,四指の甲側の一部分及び掌側手首部を明調子で被覆している点については,本願出願前から作業用手袋の属する物品分野で見受けられるもの(例えば,日本国特許庁発行の意匠公報掲載の意匠登録第1370405号の意匠(参考意匠 別紙第3参照))であり,両意匠のみに共通する独自の特徴ともいえないことから,意匠全体の美感に与える影響は小さい。

(2)形態の相違点
相違点1である,手首上部の編み生地が略横縞状であるのか,略縦縞状であるのか相違については,需要者の目に付きやすい手首上部の態様であり,異なる視覚的印象を与えることから,意匠全体の美感に一定の影響を与える。
相違点2である,本願意匠は親指と本体部の甲側における暗調子と明調子の被覆の境界線を,平面視において,親指の付け根中央にむけて四指側から凹弧状に上げたのち,緩やかに凸弧状に手首部にむけて下げているのに対して,引用意匠は四指側から緩やかに親指付け根外側にむけて凹弧状に上げている点については,作業時の親指の曲げやすさや安全性などに注目をする需要者が注意を惹かれる箇所であることから,意匠全体の美感に一定の影響を与える。
相違点3である,本願意匠は,四指の甲側における暗調子と明調子の被覆の境界線を,平面視において,指の先端から付け根までの長さの先端寄り約7分の1の箇所に略半楕円状に設けて,甲側の四指全面を明調子に被覆しているのに対して,引用意匠は,約2分の1の箇所に舌状に設けて内側を明調子に被覆をし,四指それぞれの境界線外側及びそれに連続する略半円状の指間を暗調子に被覆をしている点については,作業時における指の曲げやすさや被覆による安全性などに注目をする需要者が強く注意を惹かれる態様であり,異なる視覚的印象を与えることから,意匠全体の美感に与える影響は大きい。
相違点5である,本願意匠が手首上部の開口部を,長辺の長さを本体部の親指から小指までの横幅の約2分の1とする略横長長方形状としているのに対して,引用意匠が径の長さを親指から小指までの横幅の約9分の4とする略円形状としている点については,相違点4である本体部の掌下端部における暗調子と明調子の被覆の境界線の具体的な態様や,相違点6である甲側本体部と手首上部との境界線の具体的な態様の相違とあいまって,使用時における手首の動かしやすさや手首上部の安定感などに興味を持つ需要者の注意を惹く態様であることから,意匠全体の美感に与える影響は大きい。

3 両意匠の類否判断
両意匠の形態における共通点及び相違点の評価に基づき,意匠全体として総合的に観察した場合,両意匠は,上記2の前文のとおり,指先,指の付け根,手首,手首上部の態様が需要者の注意を惹く部分であり,上記2(2)のとおり,手首上部の編み生地,親指の甲側付け根の被覆,四指及び指間の被覆,掌下部の被覆及び手首上部の態様の美感には大きな相違があり,需要者に別異なものと印象付けるものである。
そうすると,全体の基本構成や本体部及び指部の被覆の基本的な態様において共通することを考慮しても,意匠全体として観察した際に異なる美感を起こさせるものといえる。
したがって,両意匠は,意匠に係る物品は共通し,その形態において,相違点が共通点を凌駕し,需要者に異なる美感を起こさせるものであるから,両意匠は類似しない。

第6 むすび

以上のとおり,本願意匠は,引用意匠に類似せず,意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当しないものである。したがって,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって,結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2018-10-12 
出願番号 意願2017-3287(D2017-3287) 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (B2)
最終処分 成立  
前審関与審査官 重坂 舞 
特許庁審判長 温品 博康
特許庁審判官 江塚 尚弘
木本 直美
登録日 2018-12-07 
登録番号 意匠登録第1621321号(D1621321) 
代理人 松尾 憲一郎 

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