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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 J1
管理番号 1368177 
審判番号 不服2020-5150
総通号数 252 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2020-12-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-04-16 
確定日 2020-11-11 
意匠に係る物品 圧力ゲージのレバー 
事件の表示 意願2019- 10052「圧力ゲージのレバー」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする令和1年(2019年)5月9日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

令和1年(2019年)11月14日付け 拒絶理由の通知
同年 12月28日 意見書の提出
令和2年(2020年) 1月14日付け 拒絶査定
同年 4月16日 審判請求書の提出

第2 本願の意匠

本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「圧力ゲージのレバー」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表された部分が部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線である。」とするものである。(別紙第1参照)

第3 原審の拒絶の理由及び引用した意匠

原審における拒絶の理由は、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下、「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」を「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法3条2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。

「本願は、圧力ゲージの本体に使用する「圧力ゲージのレバー」であり、レバー部が薄板状で両端を僅かに折り曲げて扁平略コ字状とし、長手方向中央付近でやや折れ曲がっている態様となっているうちの、中央折れ曲がり部分を意匠登録を受けようとする部分としたものですが、レバーの態様として薄板状で両端を僅かに折り曲げて扁平略コ字状としたものは、例えば意匠1のように本願出願前から見られる態様ですし、レバーの態様として長手方向中央付近でやや折れ曲がっている態様のものも、例えば意匠2及び意匠3に見られるように本願出願前から見られます。
そうすると、本願意匠は当業者の知識を有する者がこれらの意匠に基づいて容易に創作できたものと認められます。

意匠1
特許庁意匠課が2005年 9月26日に受け入れた
World Inport Tools Master Catalog Vol.05
第078頁所載
「エアーゲージ」に用いられている「エアーゲージ用レバー」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HC17037473号)

意匠2
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2010年10月25日
受入日 特許庁意匠課受入2010年10月29日
掲載者 Amazon.com,Inc.
表 題 Amazon.com:220 PSI Pistol-type Lock-on Air Chuck with Dial Tire Gauge
掲載ページのアドレス
http://www.amazon.com/gp/product/images/B003XJBIVA/ref=dp_image_text_0?ie=UTF8&n=16310091&s=industrial
に掲載された「タイヤ用圧力計」のホース先端部側に表された「レバー」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ22045916号)

意匠3
欧州連合意匠公報 2017年 7月27日
タイヤ圧力計(登録番号004107522-0001)のホース先端部側に表された「レバー」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH29204477号)」

第4 当審の判断

以下、本願意匠の意匠法3条2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠

(1)意匠に係る物品
意匠に係る物品は、圧力ゲージの本体に取り付け、自動車用タイヤ等に空気を注入する際に用いる「圧力ゲージのレバー」である。

(2)本願部分の用途及び機能
本願部分は、空気を注入する際、指を掛け、握り込むためのものである。

(3)本願部分の位置、大きさ及び範囲
本願部分は、略横長板状とするレバーの左右端部を除いた中央部分をその範囲とするものである。

(4)本願部分の形態
平面視、略横長長方形薄板の上下端辺部分を底面側に直角に折り曲げて折曲片とし、平面全体を短手方向にやや山形に湾曲したものであって、長手方向左端から約2/7の位置で右側全体を斜め上方に屈曲している。
各部の寸法の比率について、平面視における縦、横の長さ及び板厚の比率は、3:7:0.2で、折曲片の高さは、板厚の約4倍で、屈曲の角度は、正面視において、平面に対して約15度である。

2 引用意匠の認定

(1)意匠1(別紙第2参照)
意匠1の図の向きは、本願意匠の図の向きに合わせて右に横向きとする。
ア 意匠に係る物品は、「エアゲージ用レバー」である。
イ 形態は、長辺側の上下辺部分を内側に折り曲げた略横長板状で、先端寄りが平面側に湾曲している。

(2)意匠2(別紙第3参照)
ア 意匠に係る物品は、タイヤ用圧力計のホース先端(エアーチャック)のタイヤバルブ取付口に設けられる固定用の「クリップ」である。
イ 形態は、略横長板状で、先端寄りをやや外側に屈曲している。

(3)意匠3(別紙第4参照)
ア 意匠に係る物品は、タイヤ用圧力計のホース先端(エアーチャック)のタイヤバルブ取付口に設けられる固定用の「クリップ」である。
イ 形態は、略縦長板状で、先端寄りをやや外側に屈曲している。

3 本願意匠の創作性の検討
この物品の属する分野において、全体を、略横長板状の長辺側の両端を内側に折り曲げて折曲片とし、全体が外側に湾曲したもの(意匠1)のほか、全体を平坦状としたもの(例えば、株式会社ピヨが2014年8月19日に公開した製品カタログ「サービス/製品一覧 - 株式会社ピヨ」に所載のタイヤ圧測定器(製品番号:ATG-1006LN)のレバーの意匠(公知資料番号HJ26030646))は、本願出願前から公然知られているものであるが、略長方形薄板の短手方向をやや湾曲し、長手方向中央左寄りを外側に屈曲したものは、本願意匠の他には見られないものであるから、本願意匠のこの態様は、当業者にとって、格別の創作を要したものといわざるを得ない。
なお、原審において、板状の部材を外側に屈曲したものの例として、エアーチェックの固定用クリップを挙げているが(意匠2及び意匠3)、本願意匠とこれらの意匠とは、その用途や使用状態が異なり、両者がたとえ圧力ゲージの中に組み込まれ、協働するものであるとしても、当業者が、直ちに、上記の意匠によって本願意匠の態様を容易に想到しうるものとはいえない。
そうすると、本願意匠の態様は、この種物品分野において独自の着想によって創出したものであり、当業者が公然知られた形態に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、原審が示した理由によっては意匠法3条2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2020-10-26 
出願番号 意願2019-10052(D2019-10052) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (J1)
最終処分 成立  
前審関与審査官 石坂 陽子 
特許庁審判長 木村 恭子
特許庁審判官 江塚 尚弘
内藤 弘樹
登録日 2020-11-26 
登録番号 意匠登録第1674718号(D1674718) 
代理人 高木 康志 

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