• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 D6
管理番号 1371766 
審判番号 不服2020-13480
総通号数 256 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-04-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-09-28 
確定日 2021-03-09 
意匠に係る物品 ハンガー 
事件の表示 意願2020- 1413「ハンガー」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
令和 2年(2020年) 1月28日 意匠登録出願
令和 2年(2020年) 5月11日付け 拒絶理由通知書
令和 2年(2020年) 6月11日 意見書
令和 2年(2020年) 6月25日付け 拒絶査定
令和 2年(2020年) 9月28日 審判請求書

第2 本願意匠
本願は物品の部分について意匠登録を受けようとするものであって、本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「ハンガー」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」ともいう。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりであり、願書の「意匠の説明」の欄には「実線で表された部分(当審注:以下「本願部分」という。)が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。実線で表された部分は、ハンガーの本体部分である。ハンガーのフック部分は、点線で表されており、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分ではない。」と記載されている(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。
「本願意匠は、略丸棒状の部材を、正面視略半円形状に湾曲させ形成したハンガーの本体部分(衣服掛け部)について意匠登録を受けようとするものです。以下では、本願意匠の創作非容易性について検討します。
本願意匠の属するハンガーの分野においては、略丸棒状の部材でハンガーの本体部分(衣服掛け部)を構成することは、例えば下記の【意匠1】ないし【意匠3】においてみられるとおり、本願出願前より公然知られたものです。
また同分野においては、ハンガーの本体部分(衣服掛け部)を、正面視略半円形状に湾曲させることは、例えば下記の【意匠4】においてみられるとおり、本願出願前より公然知られたものです。
さらに、これらを組み合わせることについても、上記のいずれも本願物品と同種の物品分野に属するものであることを考慮すると、当業者であれば格別の創意を要するものということができません。
そうすると、ハンガーの本体部分(衣服掛け部)を、本願出願前より公然知られた下記の【意匠1】ないし【意匠3】のように略丸棒状の部材で構成し、その湾曲の態様を下記の【意匠4】のように正面視略半円形状にしたに過ぎない本願の意匠は、当業者であれば容易に創作することができたものです。
(中略)
【意匠1】
特許庁総合情報館が1989年 6月20日に受け入れた
INTERIORS 1989年 5月31日10号
第179頁所載
ハンガーの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HB01027172号)
の本体部分(衣服掛け部)

【意匠2】
特許庁総合情報館が1995年 5月23日に受け入れた
HEWIEinrichtungsprodukte
第6頁所載
衣料用ハンガーの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HD07004589号)
の本体部分(衣服掛け部)

【意匠3】
特許庁総合情報館が1998年 7月13日に受け入れた
ドイツ意匠公報 1998年 5月 9日
第1680頁所載
衣類用ハンガーの意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH11054243号)
の本体部分(衣服掛け部)

【意匠4】
特許庁発行の公開特許公報記載
平成 9年特許出願公開第182656号
【図1】ないし【図4】及び関連する記載により表された
ハンガーの意匠の衣服掛けアーム部」

第4 当審の判断
以下、本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、本願意匠が、この意匠の属する分野における通常の知識を有する者が容易に創作することができたものであるか否かについて検討する。
1 本願意匠(別紙第1参照)
本願意匠の意匠に係る物品(以下「本願物品」という。)は「ハンガー」であり、本願の願書及び願書に添付した図面の記載によれば、本願物品は、衣類用のハンガーであって、本体部分とフック部分から成るものである。
物品の部分として意匠登録を受けようとする本願部分は、実線で表された本体部分である。
本願部分は、フック部分の下端の位置から左右に広がっており、本願部分の最大横幅は、フック部分の最大横幅の約7.5倍の大きさを占めている。そうすると、本願部分の用途及び機能は、衣服の首から肩にかけての部分を掛けることであると推認される。
本願部分の形態は、次のとおりである。
(1)全体について
全体の形状は、正面から見て、略丸棒状体を略半円弧に曲げたものであって、最大縦幅:最大横幅の比率が約1:2である。
(2)端部について
略丸棒状体の左右の端部は、平坦面である。

2 意匠1ないし意匠4
原査定における拒絶の理由で引用された意匠1ないし意匠4について、以下のとおり認定する。なお、意匠1ないし意匠4の出典や公知日などについては、前記第3に記載したとおりである。
(1)意匠1(別紙第2参照)
意匠1の意匠に係る物品は「ハンガー」であり、本願部分に対応する意匠1の部分(以下「意匠1部分」という。)は、フック部分を除く本体部分である。
意匠1部分は、フック部分の下端の位置から左右に広がっており、意匠1部分の最大横幅は、フック部分の最大横幅の7倍以上の大きさを占めている(意匠1は斜視方向で現されているので大きさの比はおおよそである。)。そうすると、意匠1部分の用途及び機能は、衣服の首から肩にかけての部分を掛けることであると推認される。
意匠1部分の形態は以下のとおりである。
(ア)全体について
全体の形状は、正面から見て、略丸棒状体を緩やかな略凸弧状に曲げたものである。(意匠1は斜視方向で現されているので最大縦幅:最大横幅の正確な比は不明である。)
(イ)端部について
略丸棒状体の左右の端部は、平坦面である。

(2)意匠2(別紙第3参照)
意匠2の意匠に係る物品は「衣料用ハンガー」であり、本願部分に対応する意匠2の部分(以下「意匠2部分」という。)は、フック部分を除く本体部分である。なお、意匠2が掲載された文献には3つの衣料用ハンガーが斜視方向で現されているところ、意匠2部分の大きさや形態については、最も正面形態が現れている一番右の衣料用ハンガーを対象にして認定する。
意匠2部分は、フック部分の下端の位置から左右に広がっており、意匠2部分の最大横幅は、フック部分の最大横幅の約7倍の大きさを占めている(意匠2は斜視方向で現されているので大きさの比はおおよそである。)。そうすると、意匠2部分の用途及び機能は、衣服の首から肩にかけての部分を掛けることであると推認される。
意匠2部分の形態は以下のとおりである。
(ア)全体について
全体の形状は、正面から見て、略丸棒状体を緩やかな略凸弧状に曲げたものである。(意匠2は斜視方向で現されているので最大縦幅:最大横幅の正確な比は不明である。)
(イ)端部について
略丸棒状体の左右の端部は、平坦面である。

(3)意匠3(別紙第4参照)
意匠3の意匠に係る物品は「衣類用ハンガー」であり、本願部分に対応する意匠3の部分(以下「意匠3部分」という。)は、フック部分を除く本体部分である。
意匠3部分は、フック部分の下端の位置から左右に広がっており、意匠3部分の最大横幅は、フック部分の最大横幅の約6.9倍の大きさを占めている。そうすると、意匠3部分の用途及び機能は、衣服の首から肩にかけての部分を掛けることであると推認される。
意匠3部分の形態は以下のとおりである。
(ア)全体について
全体の形状は、正面から見て、略丸棒状体を緩やかな略凸弧状に曲げたものであって、最大縦幅:最大横幅の比率が約1:5.2である。
(イ)端部について
略丸棒状体の左右の端部は、平坦面である。

(4)意匠4(別紙第5参照)
意匠4の意匠に係る物品は「洋服用簡易ハンガー」であり、【図1】によれば吊り下げフック部(3)、襟掛け部(2)及び衣服掛けアーム部(1)の3つから成る。本願部分に対応する意匠4の部分(以下「意匠4部分」という。)は、衣服掛けアーム部である。
意匠4部分は、吊り下げフック部の下端から奥行き方向に伸びた襟掛け部の後方の位置で左右に広がっており、意匠4部分の最大横幅は、吊り下げフック部の最大横幅の約3倍の大きさを占めている。そして、洋服用簡易ハンガーの使用状態を示す正面図である【図6】によれば、意匠4部分には衣服の襟首の周りが当たっているので、意匠4部分の用途及び機能は衣服の襟首の部分を掛けることである。
意匠4部分の形態は以下のとおりである。なお、【図1】を正面右上から見た斜視図、【図2】を正面やや上から見た斜視図、【図3】を右側面図、【図4】を上下反転させたものを平面図として認定する。
(ア)全体について
全体の形状は、正面から見て、略線状体を略円弧状に曲げたものであって、最大縦幅:最大横幅の比率が約1.1:2である。
(イ)略円弧状について
略円弧状は、【図2】において略線状体の左右端部の位置が略円弧状の中心点よりも下方に位置しているから、半円弧よりも弧度がやや大きい。
(ウ)略線状体について
略線状体は、正面視右端で後方に、左端で前方に、それぞれ右側面視180度折り返して前後に重なっており、平面から見ると、襟掛け部の後端が平面視右方向に90度折り曲げられて始まった略線状体は、右端で折り返して左方向に連続し、左端で折り返して襟掛け部の後端に近接した位置で途切れている。
(エ)端部について
略線状体の折り返し端部は、正面視、平面視及び右側面視において、略小弧状に表されている。

3 創作非容易性の判断
「ハンガー」の意匠の物品分野において、本体部分の形態について、略丸棒状体を弧状に曲げて、左右の端部を平坦面としたものは、意匠1部分ないし意匠3部分に見られるように本願の出願前に広く知られている。しかし、本願部分のように、略半円弧に略丸棒状体を曲げた形態は、意匠4部分の形態、すなわち、半円弧よりも弧度がやや大きい略円弧状であって略半円弧ではない形態に基づいて、当業者が容易に創作することができたということはできない。
また、意匠4部分は、前記2(4)で認定したとおり、衣服の襟首の部分を掛ける用途及び機能を有する点で、本願部分の用途及び機能とは異なるところ、衣服の首から肩にかけての部分を掛ける用途及び機能を実現する本願部分の大きさ(吊り下げフック部に対する大きさ)や形態の創作に当たって、当業者が意匠4部分の形態に依拠したとはいい難い。
したがって、原査定における拒絶の理由で引用された意匠に基づいて、当業者が容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2021-02-17 
出願番号 意願2020-1413(D2020-1413) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (D6)
最終処分 成立  
前審関与審査官 黒川 萌原川 宙 
特許庁審判長 北代 真一
特許庁審判官 濱本 文子
小林 裕和
登録日 2021-03-15 
登録番号 意匠登録第1682341号(D1682341) 
代理人 八木澤 史彦 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ