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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H7
管理番号 1372783 
審判番号 不服2020-16201
総通号数 257 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-05-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-25 
確定日 2021-04-06 
意匠に係る物品 ローラブルディスプレイが結合したテレビ受像機 
事件の表示 意願2019- 8032「ローラブルディスプレイが結合したテレビ受像機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成31年(2019年)4月12日(パリ条約による優先権主張2018年10月16日、大韓民国)の意匠登録出願であって、令和2年(2020年)2月21日付けの拒絶理由の通知に対し、同年5月25日に意見書が提出されたが、同年8月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年11月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「ローラブルディスプレイが結合したテレビ受像機」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様又は色彩の結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。

「本願出願前から、巻取り式表示スクリーンを有するテレビジョン受像機は引用意匠1のように公然知られています。また、スクリーンの巻取り軸として円柱形のものはありふれています(例えば、引用意匠2)。
本願意匠は、テレビジョン受像機の巻取り式表示スクリーンを、引用意匠1にも見られる、テレビジョン画像の比率と同等の約16:9とし、巻取り軸を、スクリーンの巻取り軸としてありふれている円柱形とした程度に過ぎないため、当業者が容易に創作することができたものと認められます。

・引用意匠1(当審注:別紙第2参照)
DM/090122 2016年 7月 8日
テレビジョン受像機(登録番号DM/090122)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH28508284号)

・引用意匠2(当審注:別紙第3参照)
特許庁発行の公開特許公報記載
平成 4年特許出願公開第357291号
図1において「1」として表された巻取り軸」

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠の出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば容易に創作することができたか否かについて、以下検討し、判断する。

1 本願意匠の認定
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「ローラブルディスプレイが結合したテレビ受像機」であり、願書の意匠に係る物品の説明によれば、「1.材質は、合成樹脂材又は金属材である。2.本願意匠は、ローラブルディスプレイ(Rollabledisplay)が結合したテレビ受像機に関し、窓枠にディスプレイを内蔵して空間活用性を極大化できることが特徴である。3.本願意匠は、窓枠に巻き込めるディスプレイが結合しており、広げる場合には、ディスプレイの画面を鑑賞することができ、使用しないときには、ディスプレイを窓枠に巻き込んで窓の外の風景を見ることができる。」とするものである。

(2)形態
本願意匠の形態は、以下のとおりである。
ア 全体について
巻取り軸と幕状のディスプレイからなるものであり、巻取り軸の下方に配したディスプレイを巻取り可能に形成してなるものである。
イ 巻取り軸について
巻取り軸は、略細長円柱状とするものであって、端面の直径と長さの比を約1:28とするものであり、正面視において、巻取り軸の中央寄り約9割をしめる範囲にディスプレイを巻取り可能に配してなるものであって、右側面視において外周の約3時から6時の範囲にディスプレイの上端部を接合してなるものである。
ウ ディスプレイについて
ディスプレイは、略横長長方形状の幕状体であって、アスペクト比を約16:9とするものであり、背面視において、ディスプレイ全高の上短辺約4%の範囲を巻取り軸に接合したものであり、「巻かれた状態を示す斜視図」によれば、巻取り軸の外側にディスプレイを巻き取るものである。

2 引用意匠の認定
原査定における拒絶の理由で引用された、引用意匠1及び引用意匠2の意匠に係る物品及び形態は、概要以下のとおりである。

(1)引用意匠1(別紙第2参照)
引用意匠1の意匠に係る物品は「テレビジョン受像機」であり、原審拒絶理由における本願意匠の創作非容易性の判断の根拠となる態様は、巻取り式ディスプレイを有するテレビジョン受像機であること、及び、巻取り式ディスプレイのアスペクト比を、テレビジョン画像の比率と同等の約16:9とすることである。
そして、巻取り軸は、略細長倒かまぼこ状とするものであって、背面側平坦面の高さと長さの比を約1:12とするものであり、巻取り軸よりごく僅かに細幅のディスプレイを左右対称位置に巻取り可能に配してなるものであり、ディスプレイは、略横長長方形状の幕状体であって、巻取り軸下端部背面近傍に設けたスリットから、スクリーンを収納可能に構成してなるものと解される。

(2)引用意匠2(別紙第3参照)
引用意匠2の意匠に係る物品はロールスクリーンの「巻取り軸」であり、原審拒絶理由における本願意匠の創作非容易性の判断の根拠となる態様は、巻取り軸を略円柱状とするものである。
そして、当該巻取り軸は、端面の直径と長さの比を約1:6.6とするものであって、巻取り軸の外側にスクリーンを巻回して巻き取るものである。

3 本願意匠の創作非容易性について
この種、テレビジョン受像機の属する分野において、全体を、巻取り軸と幕状ディスプレイからなる形態は、引用意匠1に見られるように、本願出願前より公然知られているものであるが、巻取り軸の外側に、幕状ディスプレイを巻き取可能に形成したものは、本願意匠の他には見られないものであって、本願意匠の特徴的な態様というべきであり、本願意匠のこの態様は、当業者にとって一定の創作を要したものといわざるを得ない。この点、原審において、巻取り軸の外側に幕状のディスプレイを巻き取る例として、ロールスクリーンの巻取り軸を挙げているが(引用意匠2)、両者がたとえ何らかの映像あるいは画像を表示する用途を有するものであるとしても、当業者が、引用意匠2によって直ちに本願の態様を容易に想到しうるものとはいえない。
また、巻取り軸の直径と長さとの構成比を約1:28とする略細長円柱状とする態様は、引用意匠1及び引用意匠2には表れておらず、テレビジョン受像機の属する分野においてありふれた形状といえるものでもなければ、ありふれた手法を用いて僅かに改変した程度のものといえる証拠もないから、当業者が容易に創作することができたものということはできない。

そうすると、本願意匠の態様は、この種物品分野において独自の着想によって創出したものであり、当業者が公然知られた形態に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内において公然知られた形状に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに該当しないので、原査定の拒絶の理由によって本願の登録を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

別掲

審決日 2021-03-22 
出願番号 意願2019-8032(D2019-8032) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 中田 博康 
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 木村 恭子
井上 和之
登録日 2021-05-07 
登録番号 意匠登録第1686159号(D1686159) 
代理人 園田・小林特許業務法人 

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