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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H7
管理番号 1373824 
審判番号 不服2020-17126
総通号数 258 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-12-14 
確定日 2021-05-06 
意匠に係る物品 携帯情報端末 
事件の表示 意願2019- 20959「携帯情報端末」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和1年(2019年)9月19日の意匠登録出願であって、その主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年(2020年) 3月10日付け 拒絶理由の通知
令和2年(2020年) 5月11日 意見書の提出
令和2年(2020年) 9月 7日付け 拒絶査定
令和2年(2020年)12月14日 拒絶査定不服審判の請求

第2 本願意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、本願意匠の意匠に係る物品は、本願の願書の記載によれば「携帯情報端末」であり、本願意匠の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」ともいう。)は、願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。
「本願意匠は、ユーザーにストレッチ装置の使用位置を伝える機能を有する携帯情報端末の画像であり、人体背面をイラスト化した図形を画面中央に設けて、この携帯情報端末を通じて操作する器具が人体に作用する箇所に縦長の楕円形を設けた画像を、部分意匠として意匠登録を受けようとするものです。
本願出願前より、人体背面をイラスト化した図形を用いることは公然知られており(画像1)、そのイラスト化された人体の具体的な形状について、力を抜くように手を下ろし、また、足も同様に力を抜くように下ろし、腕と脚を僅かに広げる、としたものは公然知られており(画像2)、また、画像が表示される機器を通じて操作する器具が人体に作用する箇所を簡単な図形で示すことも公然知られています(画像3)。
そうすると、本願意匠は、上で述べたように、画像に係る意匠として公然知られたものを単純に組み合わせて、人体に作用する箇所を単純な縦長楕円形にしたにすぎず、当業者であれば容易に創作できたものと認められます。
(中略)

画像1:
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2016年 1月26日
受入日 特許庁意匠課受入2016年 4月 5日
掲載者 digitalMedLab GmbH
表題 +WoundDesk - Wound Care
- Google Play の Androi
d アプリ
掲載ページのアドレス https://play.google.com/store/apps/details?id=
com.digitalmedlab.wounddesk.android
に掲載された「スマートフォン用ソフトウェアの情報提供機能」の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ27126150号)

画像2:
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2016年11月15日
受入日 特許庁意匠課受入2016年11月28日
掲載者 Baptiste Moreau
表題 Human Fit Dijonを App St
ore で
掲載ページのアドレス https://itunes.apple.com/jp/app/human-fit-dijo
n/id1147082799?mt=8
に掲載された「スマートフォン用ソフトウェアの情報提供機能」の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ28129398号)

画像3:
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1610571号の意匠
(意匠に係る物品、トレーニング情報表示機)の画像」

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠の認定
当審では、本願意匠について、以下のとおり認定する(別紙第1参照)。
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品(以下「本願物品」という。)は、「携帯情報端末」であり、願書の「意匠に係る物品の説明」には、以下のとおり記載されている。
「本物品は、ユーザーにストレッチ装置の使用位置を伝える機能を有する携帯情報端末である。具体的には、ユーザーがストレッチ装置を適切に使用するために、ストレッチ装置の特定部位に対してユーザーの特定部位を適切に当接させるための位置合わせマークが表示される。」
また、願書の「意匠の説明」には、以下のとおり記載されている。
「実線で表した部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界を示す線である。」
これらの願書の記載によれば、本願物品である携帯情報端末に設けられた表示部に、ユーザーにストレッチ装置の使用位置を伝えるための画像が表示される。
(2)本願物品の表示部に表された画像
本願物品の表示部(物理的画面)には画像(以下「本願画像」という。)が表示されており、本願意匠において部分意匠として意匠登録を受けようとする部分は、一点鎖線で囲われた本願画像である。
(3)本願画像の用途及び機能
前記(1)で摘記した願書の記載によれば、本願画像は、ユーザーにストレッチ装置の使用位置を伝える用途及び機能を有している。
(4)本願画像の位置、大きさ及び範囲
本願画像の位置、大きさ及び範囲は、略板状の本願意匠の正面の周囲に余地部を残して配された領域である。
(5)本願画像の形態
ア 全体の形態
本願画像は、外周が縦長長方形状(縦横比が約1.8:1)であり、本願画像の内側中央に人体イラストが配されている。人体イラストの縦幅は、全体の縦幅の約1/1.7である。
イ 人体イラストの形状
人体イラストは背面像であって、両腕は肩部から外側に開いて略ハ字状に表されており、手の甲が側面を向いて人差し指と親指がやや開いているように表されている。脚部は少し開いており、足部はつま先立ちしたように表されている。背骨の位置に垂直状線が表され、肩甲骨を表す内側に凸の弧状線が2つ表されて、臀部には下に凸の弧状線が2つ連続して表されている。
ウ 位置合わせマークの形状
位置合わせマークは略縦長楕円状線であり、肩甲骨と背骨中央部を含むように配されている。

2 画像1ないし画像3の認定
原査定における拒絶の理由で引用された画像1ないし画像3について、以下のとおり認定する。なお、画像1ないし画像3の出典や公知日などについては、前記第3に記載されたとおりである。
(1)画像1(別紙第2参照)
ア 画像1の用途及び機能
画像1は、スマートフォン用ソフトウェアの情報提供機能に係る画像であり、画像内に「Wound Location」の文字表示があることから、人体の傷の位置を表示する用途及び機能があると認められる。画像内の右下に遷移ボタンがあり、次の画像に移行する用途及び機能があると推認される。
イ 画像1の形態
(ア)全体の形態
画像1は、外周が縦長長方形状(縦横比が約1.8:1)であり、その内側に、上端寄りに2段の横長帯状部が配され、下端寄りには、中央に略横長トラック形状部が配されて、その右方に円形の遷移ボタンが配されている。中央には人体イラスト(正面)と同(背面)が左右に並んで表されており、それらは同形同大であって、縦幅が画像全体の縦幅の約1/1.9を占めている。
(イ)人体イラストの形状
人体は全体的に肉太であって、首部が短く、肩部がいかり肩状であり、両腕は肘部から先が外側に開いて略ハ字状に表されており、手の平(又は手の甲)が正面(又は背面)を向いて全ての指が開き状に表されている。脚部は略O脚状であって、足部は、左右の足が接して、足の裏が地面に付いているように表されている。また、右側の人体(背面)の向かって左肩部に、傷の位置を示す大小2重の円形面が透過的に表されている。

(2)画像2(別紙第3参照)
ア 画像2の用途及び機能
画像2は、スマートフォン用ソフトウェアの情報提供機能に係る画像であり、画像内に「Fitness」の文字表示があることから、筋力トレーニングの対象位置を表示する用途及び機能があると認められる。画像内の下段に「Exercices」のボタンがあり、別の画像に移行する用途及び機能があると推認される。
イ 画像2の形態
(ア)全体の形態
画像2は、外周が縦長長方形状(縦横比が約3:2)であり、その内側に、上端寄りに2段の横長帯状部が配され、下端寄りには、5つのボタンを等間隔に配する横長帯状部が配されている。中央には人体イラスト(正面)と同(背面)が左右に並んで表されており、それらは同形同大であって、縦幅が画像全体の縦幅の約1/1.6を占めている。
(イ)人体イラストの形状
人体は腰高脚長であって、首部が短く、肩部がなで肩状であり、両腕は肘部から先が外側に開いて略ハ字状に表されており、手の甲が側面を向いて人差し指と親指がやや開いているように表されている。脚部は肩幅以上に開いていて、足部はつま先立ちしたように表されている。また、人体内には各所の筋肉が模式的に表されており、特定の筋肉(複数)の位置を示すために、その筋肉の上に円形面が表されている。

(3)画像3(別紙第4参照)
ア 画像3の用途及び機能
画像3は、「トレーニング情報表示機」に係る画像であり、フィットネスジム等に設置される縦長の物品の正面上部に配された横長表示部(物理的画面)に表示される画像である。画像3は、人体のモデルを表示し、トレーニングの情報や電気刺激レベル等を部位毎に示す用途及び機能があると認められる。
イ 画像3の形態
「表示部拡大図」に表された画像3の形態を認定する。
(ア)全体の形態
画像3は、外周が横長長方形状(縦横比が約3:4)であり、その内側に、中央と右側に同形同大の縦長長方形の区画(縦横比が約1.3:1)を設けて、中央の区画には人体イラスト(正面)、右側の区画には人体イラスト(背面)が表されている。両方の人体イラストには小円形部、指示線及び大円形部から成る指示部が複数配されている。
(イ)人体イラスト(正面)と指示部の形状
人体は、首部、腕部の先、膝から下で途切れており、腕部は略ハ字状に広がり、脚部がやや開いている。大胸筋や腹筋などの筋肉箇所が曲線で区画されており、向かって左側の大胸筋区画や腹筋区画などの区画内に小円形部が記されている。その小円形部から上下に指示線が延びており、区画外の上下の大円形部に連続している。
(ウ)人体イラスト(背面)と指示部の形状
人体は、首部、腕部の先、膝から下で途切れており、腕部は略ハ字状に広がり、脚部がやや開いている。背筋や臀筋などの筋肉箇所が曲線で区画されており、向かって右側の背筋区画及び臀筋区画などの区画内に小円形部が記されている。その小円形部から上下に指示線が延びており、区画外の上下の大円形部に連続している。

3 本願意匠の創作非容易性について
本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討する。
まず、本願画像の用途及び機能が、ユーザーにストレッチ装置の使用位置を伝える用途及び機能を有している点については、ストレッチ装置の使用に係る画像が本願の出願前に広く知られているから、本願画像の用途及び機能について特段の創作性を認めることはできない。
また、本願画像の形態として人体イラストが配されている点については、画像を利用する物品分野において画像内に人体イラストを配すること自体は画像1ないし画像3に見られるように本願の出願前に広く知られているといえる。
しかしながら、人体イラスト(背面)を配して、その形状を、両腕を略ハ字状に表して手の甲を側面向きにし、脚部をやや開いて足部はつま先立ちしたように表して、背骨の垂直状線、が表され、肩甲骨の弧状線及び臀部の弧状線を表した本願画像の形態は独特なものであるというべきであり、この形態が画像1ないし画像3の形態から導き出されるということはできない。
そして、本願画像には略縦長楕円状線の位置合わせマークが肩甲骨と背骨中央部を含むように配されているところ、このような形状は画像1ないし画像3の形態において表されていないから、これらの形態に基づいて当業者が本願画像の形態を容易に創作したということはできない。
したがって、本願意匠は、原査定における拒絶の理由で引用された意匠に基づいて、当業者が容易に創作をすることができたということはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲
審決日 2021-04-14 
出願番号 意願2019-20959(D2019-20959) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 小林 佑二 
特許庁審判長 北代 真一
特許庁審判官 小林 裕和
井上 和之
登録日 2021-06-07 
登録番号 意匠登録第1688314号(D1688314) 

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