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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 H7
管理番号 1374984 
審判番号 不服2020-15893
総通号数 259 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-17 
確定日 2021-05-27 
意匠に係る物品 情報表示機能付き電子計算機 
事件の表示 意願2019- 4953「情報表示機能付き電子計算機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成31年(2019年)年3月11日(パリ条約による優先権主張2018年9月11日、アメリカ合衆国)の意匠登録出願であって、令和1年(2019年)9月24日付けの拒絶理由の通知に対し、令和2年(2020年)1月28日に意見書が提出されたが、同年8月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年11月17日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願の意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、その意匠は、意匠に係る物品を「情報表示機能付き電子計算機」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであって(以下「本願意匠」という。)、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分を、「実線で表された部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線であり、一点鎖線で囲まれた部分が、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」(以下「本願部分」という。)としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」ともいう。)が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に意匠の創作をすることができたと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。

「この意匠登録出願の意匠は、「情報表示機能付き電子計算機」の表示部に表された画像の一部について部分意匠として意匠登録を受けようとするものであると認められます。
本願意匠に見られるように、下方を開けた略C字状帯部の開いた部分にアイコンを配置する態様を情報表示の目的で用いる例は、引用例1において既に公知の態様です。
また、下方を開け、端部を丸めた、やや幅のある略C字状帯部と当該帯部と等幅の円形部を組み合わせたアイコンも(引用例2)、C字状帯部と円形部を組み合わせる際にやや隙間を設けることも(引用例3)、太陽型のアイコンも(引用例4)、本願出願前より既に知られた態様です。
そうすると本願意匠は、いずれも情報表示機能のための画像として公知の、引用例1の略C字状帯部とアイコンを、それぞれごく微細な改変を加えた引用例2のアイコンと、引用例4のアイコンとに置き換えて表したに過ぎず、当業者であれば容易に創作できたものと認められます。

引用例1
中華人民共和国意匠公報 2015年 9月16日15-37号
携帯電話機(公開番号CN303377527S)に表示された画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HH27006436号)

引用例2
米国特許商標公報 2017年10月24日
ディスプレイスクリーン用画像(登録番号US D800769S)
(特許庁意匠課公知資料番号第HH29327267号)

引用例3
米国特許商標公報 2017年 8月29日
グラフィカルユーザインターフェース(登録番号US D795886S)の画像
(特許庁意匠課公知資料番号第HH29321837号)

引用例4
独立行政法人工業所有権情報・研修館が2014年 5月16日に受け入れた
GALAXY S5
第30頁所載
携帯情報端末機に表示された画像(左側の端末機に表示された太陽型アイコン画像)
(特許庁意匠課公知資料番号第HC26006160号)」

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。
1 本願意匠の認定
(1)本願意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品(以下「本願物品」という。)は、「情報表示機能付き電子計算機」である。

(2)本願部分の用途及び機能
本願部分は、本願物品の表示部(物理的画面)に、天気、UV指数等の情報を表示する表示機能を有するものと認められる。

(3)本願部分の位置、大きさ及び範囲
本願部分は、腕時計型の電子計算機本体正面に設けられた、縦:横を約5:4とする表示部の高さ幅約1/7とする下方の、水平方向中央の位置に、表示部の横幅に対して約1/5の幅を直径とする大きさの略円形状の図記号部周縁を、部分意匠として意匠登録を受けようとする部分とその他の部分との境界のみを示す線として一点鎖線で囲った範囲(破線部を除く)とするものである。

(4)本願部分の形態
ア 全体の態様
本願部分は、全体が略円形状であって、外周の下方を開けた略倒C字状帯部、及びその開いた部分の左右方向中央に図記号(以下「下部図記号」という。)を配した構成とするものである。

イ 略倒C字状帯部の態様
略倒C字状帯部は、(a)やや幅のある帯部で略円形状を構成し、(b)下方約1/4を開放部とすることで約3/4円弧によって「略倒C字状」を構成するもので、(c)開放部を構成する帯部の左右端部を略凸円弧状とし、(d)略倒C字状帯部の左側のやや上方に、その直径を帯部の幅と略同じとする小円を有し(以下「左上小円部」という。)、(e)帯部は左上小円部に対して、僅かに隙間を空け、(f)左上小円部を挟む端部を略凹円弧状とするものである。

ウ 「下部図記号」の態様
(a)形態について
中央を細線による小円とし、「左上小円部」と略同径とするもので、その上下及び左右、各ななめ45度の方向に4箇所、小円の直径の略半分の長さの直線状細線を合計8本、中心の小円から僅かに隙間を空け、放射状に配し、全体で太陽状の図記号としたものである。
(b)レイアウトについて
下部図記号を構成する中央の小円は、略倒C字状帯部の開放部において、「左上小円部」より、ほぼ直径分中央(正面視上方)に寄せて配したものである。

2 引用例1ないし引用例4の認定
原査定における拒絶の理由で引用された引用例1ないし引用例4について、以下のとおり認定する。
引用例1ないし引用例4の出典や公知日などについては、前記第3に記載したとおりである。
なお、各引用例の形態は、本願部分に対応する形態について認定し、それぞれ引用例1部分ないし引用例4部分という。
(1)引用例1(別紙第2参照)
ア 引用例1の意匠に係る物品
引用例1の意匠に係る物品(以下「引用例1物品」という。)は、「携帯電話機」である。

イ 引用例1部分の用途及び機能
引用例1部分は、引用例1物品の表示部(物理的画面)に、明るさの程度を表示する表示機能を有するものと認められる。

ウ 引用例1部分の位置、大きさ及び範囲
引用例1部分は、平板略縦長矩形状の携帯電話機の正面の、縦:横を約5:3とする表示部の略中央の位置とし、表示部の横幅に対して約4/5幅を径とする大きさの略円形状の図記号部周縁の範囲とするものである。

エ 引用例1部分の形態
(ア)全体の態様
引用例1部分は、全体が、略円形状であって、外周の下方を開けた略倒C字状帯部、及びその開いた部分の左右方向中央に下部図記号を配した構成とするものである。

(イ)略倒C字状帯部の態様
略倒C字状帯部は、(a)細幅の帯部で略円形状を構成し、(b)下方約1/6を開放部とすることで約5/6円弧によって「略倒C字状」を構成するもので、(c)開放部を構成する帯部の左右端部を略凸円弧状とするものである。
また、変化状態を示す図1ないし図5によると、帯部は同幅のまま、帯部内の濃淡が変化する態様とするものである。

(ウ)「下部図記号」の態様
(ウ-1)形態について
細線による小円の上方頂部にごく僅かな隙間を設け、当該小円の直径の約3/8の長さの直線状細線を1本、中央を小円の円弧上の位置に配した図記号としたものである。
(ウ-2)レイアウトについて
下部図記号を構成する小円の直径は、略倒C字状を構成する帯部の幅の約8/3の長さとするもので、略倒C字状帯部の開放部において、「略倒C字状帯部」と同様の外周寄りに配したものである。

(2)引用例2(別紙第3参照)
引用例2は、ディスプレイスクリーン用画像であり、下記のとおり認定する。
ア 引用例2部分の用途及び機能
引用例2部分は、照明に関する調整状態を表示する機能を有するものと認められる。

イ 引用例2部分の位置、大きさ及び範囲
引用例2部分は、縦:横を約5:3とする表示部の中央からやや下方の位置とし、表示部の横幅に対して約6/7幅を径とする大きさの略円形状の図記号部周縁の範囲とするものである。

ウ 引用例2部分の形態
(ア)全体の態様
引用例2部分は、全体が略円形状であって、外周の下方を開けた略倒C字状帯部による構成とするものである。

(イ)「略倒C字状帯部」の態様
略倒C字状帯部は、(a)やや幅のある帯部で略円形状を構成し、(b)下方約1/10を開放部とすることで約9/10円弧によって略倒C字状を構成するもので、(c)開放部を構成する帯部の左右端部を略凸円弧状とし、(d)略倒C字状帯部上に、その直径を帯部の幅と略同じとする小円を有し(以下「帯部上小円部」という。)、FIG.1ないしFIG.3によると、帯部上の範囲で帯部上小円部の位置が変化する態様とするものである。

(3)引用例3(別紙第4参照)
引用例3は、グラフィカルユーザーインターフェースの画像であり、下記のとおり認定する。
ア 引用例3部分の用途及び機能
引用例3部分は、時間の経過状態を表示する機能を有するものと認められる。

イ 引用例3部分の位置、大きさ及び範囲
引用例3部分は、縦:横を約5:3とする表示部の略中央の位置とし、表示部の横幅に対して約4/5幅を径とする大きさの略円形状の図記号部周縁の範囲とするものである。

ウ 引用例3部分の形態
(ア)全体の態様
引用例3部分は、全体が略円形状であって、外周の下方が横長隅丸長方形の表示窓部に隠れた略倒C字状部による構成とするものである。

(イ)略倒C字状部の態様
略倒C字状部は、(a)太線で略円形状を構成し、(b)下方約1/3が横長隅丸長方形の表示窓部に隠れることで、約2/3円弧によって略倒C字状部を構成するもので、(c)略倒C字状部の開放部に相当する左右端部は、略直線状に表れ、(d)略倒C字状部上に、略倒C字状部の太線の幅よりも直径の大きい暗調子の小円を有し(以下「暗調子小円部」という。)、(e)略倒C字状部の太線は、暗調子小円部に対して、僅かに隙間を空けて、(f)暗調子小円部を挟む端部を略直線状とするもので、FIG.1及びFIG.2によると、太線上の範囲で暗調子小円部の位置が変化する態様とするものである。

(4)引用例4(別紙第5参照)
引用例4は、携帯情報端末機に表示された画像のうち、左側の端末機に表示された太陽型アイコン画像であり、下記のとおり認定する。
ア 引用例4部分の用途及び機能
引用例4部分は、天気の状態を表示する機能を有するものと認められる。

イ 引用例4部分の位置、大きさ及び範囲
引用例4部分は、縦:横を約8:7とする表示部の左下の位置とし、表示部の横幅に対して約2/7幅を径とする大きさの図記号部周縁の範囲とするものである。

ウ 引用例4部分の形態
引用例4部分は、中央を細線による小円とし、その上下及び左右、各ななめ45度の方向に4箇所、小円の直径の約1/3の長さの直線状細線を合計8本、中心の小円から僅かに隙間を空け、放射状に配し、全体で太陽状の図記号としたものである。

3 本願意匠の創作非容易性について
本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討する。

まず、本願物品は腕時計型の「情報表示機能付き電子計算機」に係るものであるから、その表示部に天気、UV指数等の情報を表示することは、本願出願前に広く知られており、本願部分の用途及び機能について、特段の創作性を認めることはできない。

また、腕時計型の電子計算機本体正面に表示部を有する点も、当該物品分野において普通に見られるもので、その下方、水平方向中央の位置に、表示部の横幅に対して約1/5の幅を直径とする大きさ及び範囲とする点についても、この種物品分野において、よく見られる態様であり、本願部分の位置、大きさ及び範囲について、特段の創作性を認めることはできない。

そして、本願部分の形態について、全体の形態を、略円形状の外周下方を開けた略倒C字状帯部、及びその開いた部分の左右方向中央に下部図記号を配した構成とする点は、引用例1部分に見られるもののである。しかしながら、本願部分を構成する各部の態様についてみた場合、本願部分の形態については、下記のとおり、引用例1部分ないし引用例4部分の形態から導き出されるということはできない。
(1)「略倒C字状帯部」の態様
略倒C字状帯部は、前記1(4)イ(a)ないし(f)の構成を合わせ持つものであるのに対し、(a)やや幅のある帯部で略円形状を構成し、(c)開放部を構成する帯部の左右端部を略凸円弧状とし、(d)略倒C字状帯部上に、その直径を帯部の幅と略同じとする小円を有した点は、引用例2に表れており、(b)の下方の開口部の大きさは、公然知られた意匠からのたんなる微細な改変に過ぎないものと認められるものの、(e)における、左上小円部に対して、帯部に僅かに隙間を空けた態様とする点、及び(f)における、左上小円部を挟む帯部の端部を略凹円弧状とする点は、引用例3の態様が、暗調子小円部に対して、僅かに隙間を開けている点において共通するものの、帯部ではなく太線によるもので、端部の態様も異なるものである。
そうすると、引用例1部分ないし引用例4部分から、本願部分の「略倒C字状帯部」の態様を導き出すことはできない。

(2)「下部図記号」の態様
本願部分の「下部図記号」の形態については、引用例4部分に見られるように、出願前公知のものに、当業者が容易に思いつく程度の改変を加えた程度に過ぎないものと認められるが、そのレイアウトについて、本願部分のように、下部図記号を構成する中央の小円を、略倒C字状帯部の開放部において、「左上小円部」より、ほぼ直径分中央に寄せて配した点は、引用例1部分の態様とは異なっており、引用例2部分ないし引用例4部分のいずれにも見られないものである。
そうすると、引用例1部分ないし引用例4部分を組み合わせても、本願部分の「下部図記号」の「略倒C字状帯部」に対するレイアウトを考慮した場合、本願部分における「下部図記号」の態様を導き出すことはできない。

(3)小括
したがって、全体の形態を、略円形状の外周下方を開けた略倒C字状帯部、及びその開いた部分の左右方向中央に下部図記号を配した構成とする点は、引用例1部分に見られるものの、「略倒C字状帯部」及び「下部図記号」の態様をみると、引用例1部分ないし引用例4部分を組み合わせても、本願部分の態様を導き出すことはできないから、本願部分の形態は、当業者が引用例1部分ないし引用例4部分に基づいて容易に創作をすることができたとすることはできない。

第5 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前に当業者が日本国内又は外国において公然知られた形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合に基づいて容易に創作をすることができたとはいえないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
別掲

審決日 2021-05-11 
出願番号 意願2019-4953(D2019-4953) 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (H7)
最終処分 成立  
前審関与審査官 坂田 麻智古賀 稔章 
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 北代 真一
正田 毅
登録日 2021-06-25 
登録番号 意匠登録第1689928号(D1689928) 
代理人 松下 満 
代理人 工藤 由里子 
代理人 倉澤 伊知郎 
代理人 ▲吉▼田 和彦 
代理人 山本 泰史 
代理人 田中 伸一郎 

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