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審決分類 審判 査定不服  工業上利用 取り消して登録 J3
審判 査定不服  意7条一意匠一出願 取り消して登録 J3
管理番号 1376813 
審判番号 不服2021-4340
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-04-05 
確定日 2021-08-03 
意匠に係る物品 カメラ用ケース 
事件の表示 意願2020- 11289「カメラ用ケース」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は、令和1年(2019年)10月1日(パリ条約による優先権主張2019年7月8日、中華人民共和国)に出願した意願2019-22128の一部を令和2年(2020年)6月8日に意匠法第10条の2第1項の規定により分割し、新たな意匠登録出願としたものであって、その後の主な経緯は以下のとおりである。

令和2年(2020年) 7月30日付け:拒絶理由の通知
令和2年(2020年)10月29日 :手続補正書及び意見書の提出
令和2年(2020年)12月24日付け:拒絶査定
令和3年(2021年) 4月 5日 :拒絶査定不服審判の請求
令和3年(2021年) 5月17日 :手続補正書の提出

第2 本願の意匠
本願は、物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「カメラ用ケース」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形態」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり、本願意匠において物品の部分として意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線で表した部分が、意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、本願意匠が意匠法第3条第1項柱書に規定する工業上利用することができる意匠に該当しないというものであり、具体的には以下のとおりである。
「この意匠登録出願の意匠は、意匠に係る物品をカメラとするもので、意匠に係る物品の説明の欄に『本物品は、例えば、静止画や動画を撮影し、そのデータを送受信することができるカメラである。』と記載されていますが、願書に添付した図面によっては、カメラとしての機能が表されておらず、意匠に係る物品がカメラであることを導き出すことができず、不明であることから、意匠が具体的ではありません。
また、背面図において、中央に垂直に伸びる実線の下端を頂点として緩やかな山なり状に左右水平方向に伸びる線が実線で表されている一方、底面図においては、上記に対応する、略下向き円弧状の線が破線で表されており、相互に一致しないことから、意匠登録を受けようとする部分が特定せず、意匠が具体的ではありません。」

第4 当審の判断
1 本願意匠
当審では、本願意匠について、以下のとおり認定する。
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、内部に撮影用のカメラを収納し、回転翼を備えた4つのアーム等を取り付けることにより、ドローン等として使用可能な「カメラ用ケース」である。

(2)本願部分の用途及び機能
本願部分は、ケース筐体に係る用途及び機能と、ケースの開閉部分を係止するバックル部に係る用途及び機能を有するものである。

(3)本願部分の位置、大きさ及び範囲
右側面図で左側を前方とすると、ケースの前方側と後方側、及びバックル部が実線で表されており、ケースの前方側と後方側の間にはバックル部以外に実線部はないため、ケース筐体部分は前方側と後方側に分かれて位置し、前方側は長手方向の1/5程度、後方側は1/4程度を占める大きさ及び範囲とするものである。
バックル部は、右側面視でケースを約4:6に分割する開閉部分の上部中央に位置し、平面視で長手方向はケース全長に対して1/5程度で、短手方向はケース全幅に対して1/8程度の大きさ及び範囲とするものである。

(4)本願部分の形態
ア ケース筐体前方部分
実線で表された筐体外形と、筐体中央側の連続する棘状リブの先端を結ぶ破線によって囲まれた、略倒卵形大径球状面である。
イ ケース筐体後方部分
実線で表された筐体外形と、筐体中央側の連続する棘状リブの先端を結ぶ破線、当該破線と接する右側面視ではやや右上がりで、左側面視ではやや左上がりに表された実線、これら実線の途中から下面側に約1/4周する破線によって囲まれた、略倒卵形小径球状面である。
ウ バックル部
指掛け部分は平面視大略U字状の板体であり、留め金は平面視大略倒コ字状である。また、指掛け部分の支点となる土台部分及び留め金のフック部分はともに側面視略山形である。

なお、本願は令和2年10月29日と、審判請求後の令和3年5月17日に手続補正書が提出されている。
令和2年10月29日の手続補正は、願書の「意匠に係る物品」を「カメラ」から「カメラ用ケース」に、「意匠に係る物品の説明」の記載中、「本物品は、例えば、静止画や動画を撮影し、そのデータを送受信することができるカメラである。本物品は、使用状態・・」から「本物品は、静止画や動画を撮影し、そのデータを送受信することができるカメラを収納するためのケースである。本物品は、カメラを収納した状態において、使用状態・・」に、さらに、願書添付図面の「底面図」を変更しているが、この手続補正は、出願当初の願書又は願書に添付した図面等の要旨を変更するものではないと認められる。
また、審判請求後の手続補正は、願書添付図面の各図における実線部と破線部の記載不備を補正したものであるが、この手続補正は、出願当初の願書又は願書に添付した図面等の要旨を変更するものではないと認められる。

2 意匠法第3条第1項柱書に規定する要件を満たしているかについて
物品の部分について意匠登録を受けようとする意匠の場合、「意匠登録を受けようとする部分」は、意匠に係る物品全体の形態の中で、他の意匠との対比の対象となり得る一定の範囲を占める部分、すなわち、当該意匠の外観の形態の中に含まれる一つの閉じられた領域でなければならず、また、意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界が明確でなければならないとされている(『意匠審査基準』第III部 第1章 2.5参照)。
本願部分は、前記1(3)及び(4)のとおり、意匠登録を受けようとする物品の部分が3つの領域に分離しているものの、各々については閉じられた領域であり、意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界が明確であるから、本願意匠は意匠法第3条第1項柱書に規定する要件を満たすものである。

3 意匠法第7条に規定する要件を満たしているかについて
本願部分のように、意匠登録を受けようとする物品の部分が物理的に分離している場合、意匠登録出願が意匠法第7条の1意匠の要件を満たすには、意匠創作上の一体性が認められることが必要とされる。
本願意匠は、開閉機構を備えたカメラ用ケースに係るものであるから、ケースとバックルは一体となって創作されたものと考えられるところ、本願は、単に、ケース筐体の中間部分を除いているにすぎないから、これによって本願部分の創作上の一体性は否定されない(『意匠審査基準』第II部 第2章 2.2.3参照)。
よって、本願は意匠法第7条に規定する要件を満たすものである。

第5 むすび
以上のとおりであって、原査定の拒絶の理由によっては、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

審決日 2021-07-14 
出願番号 意願2020-11289(D2020-11289) 
審決分類 D 1 8・ 52- WY (J3)
D 1 8・ 14- WY (J3)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松田 光太郎奈良 あかね 
特許庁審判長 北代 真一
特許庁審判官 井上 和之
江塚 尚弘
登録日 2021-08-18 
登録番号 意匠登録第1694319号(D1694319) 
代理人 伊東 忠彦 
代理人 大貫 進介 
代理人 伊東 忠重 

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