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審決分類 |
審判 査定不服 2項容易に創作 取り消して登録 J7 |
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管理番号 | 1376814 |
審判番号 | 不服2021-5457 |
総通号数 | 261 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2021-09-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-04-27 |
確定日 | 2021-08-10 |
意匠に係る物品 | カテーテル |
事件の表示 | 意願2020- 9538「カテーテル」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、令和2年5月14日の意匠登録出願であって、同年11月25日付けの拒絶理由の通知に対し、令和3年1月5日に意見書が提出されたが、同年1月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年4月27日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願の意匠 本願の意匠は、意匠に係る物品を「カテーテル」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状等」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり(以下「本願意匠」という。)、当該図面は、物品の部分として意匠登録を受けようとする部分を実線で、その他の部分を破線によって描かれたものである(以下、実線によって描かれた部分を「本願部分」という。別紙第1参照。)。 第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠 原査定における拒絶の理由は、本願意匠が、意匠法第3条第2項の規定に該当するというものであって、具体的には、以下のとおりである。 「この意匠登録出願の意匠に係るカテーテルの分野において、コネクタ部と細長いシャフト部で構成し、シャフト部先端が曲げられている態様は、例示するまでもなく、本願出願前よりごく一般的な態様です。また、シャフト部先端近傍の態様として、直線部を経て鋭角状に緩やかに湾曲し、最先端部がさらに外側方向に曲がっているような形状は、例えば、以下の意匠1のように、本願出願前より見受けられます。 そうすると、本願出願前より周知のカテーテルのシャフト部先端近傍の形状を、本願出願前より公然知られた下記の意匠1のような形状としたに過ぎない本願の意匠は、当業者であれば容易に創作することができたものです。 意匠1 著者の氏名 FRANCESCO BURZOTTA 表題 Diagnostic and Guide Catheter Choices and Manipulation from the Radial Artery for Native and Graft Vessels 掲載箇所 slideshare 媒体のタイプ [online] 掲載年月日 平成24年1月6日 検索日 [令和2年9月9日検索] 情報の情報源 インターネット 情報のアドレス URL:https://www.slideshare.net/theradialist/burzotta-f-201111に「JACKY」として掲載されたカテーテル先端部の意匠」 第4 当審の判断 以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。 1 本願意匠の認定 (1)本願意匠の意匠に係る物品 本願意匠の意匠に係る物品は、医療用の「カテーテル」である。 (2)本願部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲 本願部分は、カテーテルの先端部側であり、最先端部を動脈等に挿入して治療等をおこなう用途及び機能を有するものである。 (3)本願部分の形状 ア 全体の形状 本願部分は、細長い管によるもので、正面視において、略J字状を右に90度回転した形状(以下、「略右倒J字状」という。)とするものである。 イ 各部の形状 本願部分の略右倒J字状は、最先端部(動脈等に挿入する側)から正面視斜め左下方向に向かい、緩やかな凸曲線により、右方向に反転し、水平直線部に繋がる構成とするものである。 そして、最先端部から、水平直線部に繋がるまで、5つの屈曲部を有し、(ア)最先端部から第1屈曲部までを、左斜め下方向に向かう(水平方向に対して約55度)短い直線部(第1直線部)とし(最先端部から水平直線部までの長さを1とした場合、第1直線部は約0.08)、(イ)第2屈曲部までを、第1直線部よりも緩やかな角度(同約30度)で左斜め下方向に伸延し、第1直線部の約2倍の長さとする直線部(第2直線部)とし、(ウ)第3屈曲部までは、第2直線部よりやや下方向に角度を強め(同約40度)、第1直線部の約1/2のごく短い直線部(第3直線部)とし、(エ)第4屈曲部までを、さらに下方向に角度を強め(同約65度)、第1直線部の約3倍の長さの直線部(第4直線部)とし、(オ)水平直線部と繋がる第5屈曲部までを、第1直線部の長さに対しておおむね10倍の長さとする、下方側が大きく膨らんだ、ゆったりとした凸曲線によるものとし、以降を水平直線部としたものである。 なお、最先端部は、第5屈曲部より僅かに正面視右側に表れる。 2 引用意匠の認定 原査定における拒絶の理由に用いられた引用意匠である意匠1(別紙第2参照)は、カテーテルの先端部側の一部が図示されたものであり、以下のとおり認定する。 なお、本願意匠の図面の向きに合わせて対比するものとする。 (1)意匠1の属する分野 意匠1が掲載されたインターネット上の文献には、人間の器官の図や写真等の掲載もあることから、意匠1の属する分野は、医療用のカテーテルの意匠が属する分野であると認められる。 (2)意匠1の用途及び機能 意匠1は、カテーテルの先端部側が表されたものであり、最先端部を動脈等に挿入して治療等をおこなう用途及び機能を有するものである。 (3)意匠1の形状 ア 全体の形状 意匠1は、カテーテルの先端部側を1本の線によって表したもので、正面視において、略右倒J字状とするものである。 イ 各部の形状 意匠1の略右倒J字状は、最先端部から正面視斜め左下方向に向かい、緩やかな凸曲線により、右方向に反転し、水平直線部に繋がる構成とするものである。 そして、最先端部から、水平直線部に繋がるまで、5つの屈曲部を有し、(ア)最先端部から第1屈曲部までを、左斜め下方向に向かう(水平方向に対して約40度)直線部(第1直線部)とし(最先端部から水平直線部までの長さを1とした場合、第1直線部は約0.12)、(イ)第2屈曲部までを、第1直線部よりも緩やかな角度(同約15度)で左に向かう、第1直線部より短い(第1直線部の約4/5)長さの直線部(第2直線部)とし、(ウ)第3屈曲部までは、第1直線部に近い角度(同約40度)で下方向に向かい、第1直線部の約1/2のごく短い直線部(第3直線部)とし、(エ)第4屈曲部までを、さらに下方向に角度を強めて(同約80度)伸延する、第1直線部の約4.4倍の長さの直線部(第4直線部)とし、(オ)水平直線部と繋がる第5屈曲部までを、第1直線部の長さに対しておおむね4倍の長さの略弓状の凸曲線状によるものとし、以降を水平直線部としたものである。 なお、最先端部は、第5屈曲部より僅かに正面視右側に表れる。 3 本願意匠の創作非容易性について 本願意匠が意匠法第3条第2項の規定に該当するか否か、すなわち、当業者であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて検討する。 まず、本願の意匠に係る物品は医療用の「カテーテル」であり、意匠1の属する分野と共通する。 そして、カテーテルにおいて、その先端部側の一部が表れた態様は普通に見られ、本願部分の用途及び機能、並びに位置、大きさ及び範囲について、特段の創作性を認めることはできない。 次に、本願部分の形状について、全体の形状を、細長い管によるものとし、正面視において、略J字状を右に90度回転した略右倒J字状とした点、及び、その略右倒J字状について、最先端部(動脈等に挿入する側)から正面視斜め左下方向に向かい、緩やかな凸曲線により、右方向に反転し、水平直線部に繋がる構成とし、最先端部から、カテーテルハブ側へ向かう水平直線部に繋がるまで、5つの屈曲部を有する点は、意匠1にも表れている。 しかしながら、本願部分の各部の形状を具体的にみた場合、下記のとおり、意匠1の形状から導き出されるということはできない。 (1)本願部分と意匠1の各部の形状の対比 (ア)第1直線部 本願部分は、最先端部から第1屈曲部までを、左斜め下方向に向かう(水平方向に対して約55度)短い直線部(最先端部から水平直線部までの長さを1とした場合、第1直線部は約0.08)とするのに対し、意匠1は、最先端部から第1屈曲部までを、左斜め下方に向かう(水平方向に対して約40度)直線部(最先端部から水平直線部までの長さを1とした場合、第1直線部は約0.12)とするもので、本願部分の第1直線部の方が、意匠1の第1直線部よりも角度が急な点で相違し、長さもやや短いものとなっている。 (イ)第2直線部 本願部分は、第1直線部よりも緩やかな角度(同約30度)で左斜め下方向に伸延し、第1直線部の約2倍の長さの直線部とするのに対し、意匠1は、第1直線部よりも緩やかな角度(同約15度)で左に向かう、第1直線部より短い(第1直線部の約4/5)長さの直線部とするもので、本願部分の第2直線部の方が、意匠1の第2直線部よりも角度が急で、長いものとなっている点で相違する。 (ウ)第3直線部 本願部分は、第2直線部よりやや下方向に角度を強め(同約40度)、第1直線部の約1/2のごく短い直線部とするのに対し、意匠1は、第1直線部に近い角度(同約40度)で下方向に向かい、第1直線部の約1/2のごく短い直線部とするもので、本願部分の第3直線部と意匠1の第3直線部は、それぞれの第1直線部に対する角度及び長さにおいて共通する。 (エ)第4直線部 本願部分は、下方向に角度を強め(同約65度)、第1直線部の約3倍の長さの直線部とするのに対し、意匠1は、さらに下方向に角度を強めて(同約80度)伸延する、第1直線部の約4.4倍の長さの直線部とするもので、本願部分の第4直線部の方が、意匠1の第4直線部よりも角度が穏やかで、長さが短いものとなっている点で相違する。 (オ)凸曲線状部 本願部分は、第1直線部の長さに対しておおむね10倍の長さとする、下方側が大きく膨らんだ、ゆったりとした凸曲線状とするのに対し、意匠1は、第1直線部の長さに対しておおむね4倍の長さの小さな凸曲線状によるもので、本願部分の凸曲線状部の方が、意匠1の凸曲線状部よりも長く、曲線の態様についても相違している。 (カ)最先端部と第5屈曲部の態様 最先端部が第5屈曲部より僅かに正面視右側に表れる点は、共通する。 (2)検討 本願部分と意匠1の各部の形状を対比すると、前記のとおり、(ウ)第3直線部、及び(カ)最先端部と第5屈曲部の態様については共通するものの、(ア)第1直線部、(イ)第2直線部、(エ)第4直線部、及び(オ)凸曲線状部は相違しており、特に、(イ)の第2直線部の角度の相違、(エ)の第4直線部の角度及び長さの相違、そして(オ)の凸曲線状部の長さ及び曲線の態様における相違は顕著であり、医療用のカテーテルの属する分野において、使用感のみならず、治療対象にも影響を及ぼすものであるところ、これらの相違点が、当該分野においてありふれた手法による僅かな改変ということはできない。 (3)小括 よって、本願意匠と意匠1は、意匠の属する分野が共通するものの、本願意匠におけるカテーテルの先端部側の形状を、当業者が意匠1の形状としたにすぎないものとすることはできず、本願意匠は、当業者であれば容易に創作することができたということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであって、本願意匠は、意匠法第3条第2項が規定する、意匠登録出願前に当業者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものに該当しないので、原査定の拒絶の理由によって本願の意匠を拒絶すべきものとすることはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2021-07-20 |
出願番号 | 意願2020-9538(D2020-9538) |
審決分類 |
D
1
8・
121-
WY
(J7)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大谷 光司、▲高▼橋 杏子 |
特許庁審判長 |
小林 裕和 |
特許庁審判官 |
北代 真一 正田 毅 |
登録日 | 2021-08-24 |
登録番号 | 意匠登録第1694630号(D1694630) |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |