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審決分類 審判 査定不服  意9条先願 取り消して登録 J7
管理番号 1381005 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-01-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-08-20 
確定日 2021-12-21 
意匠に係る物品 医療用注入器 
事件の表示 意願2020−22545「医療用注入器」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由
第1 手続の経緯
本願は,2020年1月14日のアメリカ合衆国への出願に基づくパリ条約による優先権の主張を伴う,令和2年(2020年)7月10日に出願された意匠出願(意願2020−14153号)の一部を,意匠法第10条の2第1項の規定により,同年10月20日に新たに意願2020−22545号として出願したものである。
そして,本願の出願後の主な手続の経緯は以下のとおりである。

令和 3年 1月19日付け :拒絶理由の通知
1月19日付け :指令
4月20日 :意見書の提出
5月21日付け :拒絶査定
8月20日 :審判請求書の提出
8月20日 :手続補正書の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「医療用注入器」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「本願の図面において,実線で表した部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
この意匠登録出願人は,特許庁長官名による指令書に記載した届出をしないので,意匠法第9条第5項の規定により協議が成立しなかったものとみなされ,意匠法第9条第2項後段の規定により意匠登録を受けることができないとしたものである。

併せて,特許庁長官は,意匠法第9条第4項の規定に基づいて,令和3年1月19日付けで,この意匠登録出願の意匠は,本願と同日に出願された意願2020−22461(不服2021−11086),意願2020−22462(不服2021−11087)及び意願2020−22546(不服2021−11085)の意匠と同一又は類似のものと認められ,意匠法第9条第2項に定められた協議をしてその結果を届け出るべき旨を命じる指令書を送付した。

第4 本件に係る補正について
審判請求と同日の,令和3年8月20日に提出された手続補正書によって,請求人は,本願の願書の「本意匠の表示」の欄を追加し,その本意匠の表示を「意願2020−22461」にして,本願の意匠を,審査官が類似と判断した意願2020−22461(不服2021−11086。以下「本意匠」という。別紙第2参照)を本意匠とする関連意匠になる手続補正をした。
なお,本意匠を除く他の2件の出願についても同様の手続補正がされた。
これにより,それぞれの出願について協議の結果の届出が提出されていないが,本願意匠に対する原査定の拒絶の理由は解消しているものであるから,原査定の拒絶の理由によっては,本願意匠を拒絶すべきものとすることはできない。

第5 当審の判断
本件においては,上記の手続補正があったので,ここでは,本願意匠が,意匠法第10条第1項の規定に該当するか否かについて検討する。

1.各意匠の認定
(1)本願意匠
本願意匠は,上記「第2」の願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容によると,以下のとおりである。

ア.意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は「医療用注入器」であって,本体とキャップから成るものである。

イ.本願部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
本願意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は,医療用注入器の本体に設けた凹部の斜面及び本体の後端部を除いた部分,並びにキャップの前端面に表れている放射状に並んだ4つの三日月部分から成る花弁状部分を除いた部分であって,そのとおりの位置,大きさ及び範囲であり,その部分における用途及び機能を有するものである。

ウ.本願部分の形状
〔形状b1〕本体とキャップから成るものであって,全体が細長い略円柱状である。
〔形状b2〕本体は,細長い略円柱状であって,先端部には,本体より細いニードルシールドを有している。
〔形状b3〕ニードルシールドは,先端に小さなフランジを設けている。
〔形状b4〕本体の先端には,上下に,同形同大の突部を設けている。
〔形状b5〕当該突部の形状は,鍵穴形状である。
〔形状b6〕本体の先端寄りには,上下に,本体の全長の約4分の1の長円形の凹部を設けている。
〔形状b7〕本体の長手方向略中央には,太幅の極細筋状模様を施している。
〔形状b8〕キャップは,先端側が角丸正方形で,後端側は先端側より本の僅かに小さな正円形で,本体の外周にはまるようにしたものである。
〔形状b9〕キャップの周面は,先端の角丸正方形から後端の正円形へと漸次変化をする形状としている。
〔形状b10〕キャップの周面は,上下・左右の中央部分以外に極細筋状模様を施している。
〔形状b11〕キャップの周面における上下・左右の中央部分の極細筋状模様を施していない部分は,先細りの倒縦長等脚台形状である。
〔形状b12〕キャップの後端には,上下に,本体部の突部をはめ込む凹部を設けている。
〔形状b13〕当該凹部の形状は,鍵穴形状である。

(2)本意匠
本意匠は,当該意匠に係る出願の,願書の記載及び願書に添付した図面の記載の内容によると,以下のとおりである。

ア.意匠に係る物品
本意匠の意匠に係る物品は「医療用注入器」であって,本体とキャップから成るものである。

イ.本意匠部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
本意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本意匠部分」という。)は,医療用注入器の本体に設けた凹部の斜面及び本体の後端部を除いた部分,並びにキャップの前端面に表れている放射状に並んだ4つの三日月部分から成る花弁状部分を除いた部分であって,そのとおりの位置,大きさ及び範囲であり,その部分における用途及び機能を有するものである。

ウ.本意匠部分の形状
〔形状1〕本体とキャップから成るものであって,全体が細長い略円柱状である。
〔形状2〕本体は,細長い略円柱状であって,先端部には,本体より細いニードルシールドを有している。
〔形状3〕ニードルシールドは,先端に小さなフランジを設けている。
〔形状4〕本体の先端には,上下に,同形同大の突部を設けている。
〔形状5〕当該突部の形状は,先後に細長い突条である。
〔形状6〕本体の先端寄りには,上下に,本体の全長の約4分の1の長円形の凹部を設けている。
〔形状7〕本体の長手方向略中央には,太幅の極細筋状模様を施している。
〔形状8〕キャップは,先端側が角丸正方形で,後端側は先端側より本の僅かに小さな正円形で,本体の外周にはまるようにしたものである。
〔形状9〕キャップの周面は,先端の角丸正方形から後端の正円形へと漸次変化をする形状としている。
〔形状10〕キャップの周面は,上下・左右の中央部分以外に極細筋状模様を施している。
〔形状11〕キャップの周面における上下・左右の中央部分の極細筋状模様を施していない部分は,先細りの倒縦長等脚台形状である。
〔形状12〕キャップの後端には,上下に,本体部の突部をはめ込む凹部を設けている。
〔形状13〕当該凹部の形状は,長方形である。

2.両意匠の類否判断
(1)本願意匠と本意匠
ア.両意匠の対比
本願意匠と本意匠(以下,本願意匠と本意匠を併せて「両意匠」という。)を対比すると,以下のとおりである。

(ア)意匠に係る物品の対比
本願意匠に係る物品も,本意匠に係る物品も,共に「医療用注入器」である。

(イ)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の対比
本願部分も本意匠部分(以下,本願部分と本意匠部分を併せて「両部分」という。)も,共に医療用注入器の本体に設けた凹部の斜面及び本体の後端部を除いた部分,並びにキャップの前端面に表れている放射状に並んだ4つの三日月部分から成る花弁状部分を除いた部分であって,そのとおりの位置,大きさ及び範囲であり,その部分における用途及び機能を有するものである。

(ウ)両部分の形状の対比
両部分の形状を対比すると,以下に示す主な共通点と相違点が認められる。

(ウ−1)共通点
〔共通点1〕本体とキャップから成るものであって,全体が細長い略円柱状である。(〔形状b1〕と〔形状1〕)
〔共通点2〕本体は,細長い略円柱状であって,先端部には,本体より細いニードルシールドを有している。(〔形状b2〕と〔形状2〕)
〔共通点3〕ニードルシールドは,先端に小さなフランジを設けている。(〔形状b3〕と〔形状3〕)
〔共通点4〕本体の先端には,上下に,同形同大の突部を設けている。(〔形状b4〕と〔形状4〕)
〔共通点5〕本体の先端寄りには,上下に,本体の全長の約4分の1の長円形の凹部を設けている。(〔形状b6〕と〔形状6〕)
〔共通点6〕本体の長手方向略中央には,太幅の極細筋状模様を施している。(〔形状b7〕と〔形状7〕)
〔共通点7〕キャップは,先端側が角丸正方形で,後端側は先端側より本の僅かに小さな正円形で,本体の外周にはまるようにしたものである。(〔形状b8〕と〔形状8〕)
〔共通点8〕キャップの周面は,先端の角丸正方形から後端の正円形へと漸次変化をする形状としている。(〔形状b9〕と〔形状9〕)
〔共通点9〕キャップの周面は,上下・左右の中央部分以外に極細筋状模様を施している。(〔形状b10〕と〔形状10〕)
〔共通点10〕キャップの周面における上下・左右の中央部分の極細筋状模様を施していない部分は,先細りの倒縦長等脚台形状である。(〔形状b11〕と〔形状11〕)
〔共通点11〕キャップの後端には,上下に,本体部の突部をはめ込む凹部を設けている。(〔形状b12〕と〔形状12〕)

(ウ−2)相違点
〔相違点1〕本体の先端の上下に設けた同形同大の突部の形状につき,本願部分は,鍵穴形状であるのに対して,本意匠部分は,先後に細長い突条である。(〔形状b5〕と〔形状5〕)
〔相違点2〕キャップの後端の上下に設けた凹部の形状につき,本願部分は,鍵穴形状であるのに対して,本意匠部分は,長方形である。(〔形状b13〕と〔形状13〕)

イ.判断
(ア)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の,意匠に係る物品はいずれも「医療用注入器」であるから,一致している。

(イ)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の評価
両部分共に,医療用注入器の本体に設けた凹部の斜面及び本体の後端部を除いた部分,並びにキャップの前端面に表れている放射状に並んだ4つの三日月部分から成る花弁状部分を除いた部分であって,そのとおりの位置,大きさ及び範囲であり,その部分における用途及び機能を有するものであるから,両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能は一致している。

(ウ)両部分における形状の評価
(ウ−1)共通点について
共通点1,2及び5については,この種物品分野においては,ありふれた形状であるから,両部分の類否判断に与える影響は小さい。
共通点3については,この種物品のニードルシールドの先端においては,小さなフランジを設けた形状は,ありふれた形状といえ,なおかつ,キャップをはめた状態では見えない部分の共通点であるから,両部分の類否判断に与える影響は小さい。
共通点4については,この種物品分野においては,突部を設けていないものの存在も認められるから,共通点4によって僅かな共通感を醸し出すが,ごく小さな箇所の共通点であり,かつ,形状において相違点1の相違があるから,両部分の類否判断に与える影響は小さい。
共通点6については,この種物品分野においては,本体に模様を施していないものの方が多く見受けられ,この位置にこの幅の極細筋状模様を施しているという点で,両意匠に共通感を生じさせているのだから,両部分の類否判断に与える影響は大きい。
共通点7及び8については,この種物品分野において,両部分の形状は,両意匠の出願前から存在するが,この部分の形状は円柱状のものが最も一般的と見受けられ,両部分に一定程度の共通感を生じさせているから,両部分の類否判断に与える影響は一定程度認められる。
共通点9及び10については,この種物品分野において,両意匠の出願前よりキャップの周面に極細筋状模様を施したものは認められるが,両部分のように,極細筋模様を施した上で先細りの倒縦長等脚台形状の模様の無い部分を合わせた形状は,両部分のみの形状といえるから,両部分の類否判断に与える影響は大きい。
共通点11については,本体にキャップをはめるような物品において,キャップの回転防止のために,本体の突部をはめ込む凹部を設けているものはごくありふれた形状と認められ,また,ごく小さな箇所の形状であるから,両部分の類否判断に与える影響は限定的である。

(ウ−2)相違点について
相違点1及び2について,ごく小さな箇所の相違点であるから,部分全体の観察における両部分の類否判断に与える影響は限定的である。

(ウ−3)両部分における形状の類否判断
以上のとおり,相違点は,両意匠の類否判断に与える影響は,限定的なものであり,これらの相違点によっては,両部分の類否判断を決するものといえないのに対して,共通点6ないし10によっては,需要者に共通の印象を起こさせるものであるから,両部分の類否判断を決するものといえる。
よって,本願部分の形状と本意匠部分の形状は,類似すると認められる。

(エ)両意匠における類否判断
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能が一致している。
そして,両部分の形状については,その共通点及び相違点の評価に基づくと,上記のとおり類似するものである。
よって,本願意匠と本意匠とは類似する。

3.意匠法第10条第1項の判断
本意匠は,本願の意匠登録出願人が出願したものであり,本願意匠の出願日は本意匠の出願日と同日であって,本意匠の意匠公報の発行日前である。
そして,本願意匠と本意匠は類似するから,本願意匠は,意匠法第10条第1項の規定に該当する。

第6 結び
以上のとおりであって,本願意匠は,本意匠の関連意匠として意匠登録を受けることができるものであり,意匠法第9条第5項の規定による協議が成立したものとみなされ,同条第2項の規定による拒絶の理由は解消したと認められることにより,本願意匠を拒絶すべきものとすることができない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲




審決日 2021-12-02 
出願番号 2020022545 
審決分類 D 1 8・ 4- WY (J7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 正田 毅
橘 崇生
登録日 2022-01-07 
登録番号 1705349 
代理人 特許業務法人川口國際特許事務所 

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