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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 K1
管理番号 1385237 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-09-28 
確定日 2022-05-10 
意匠に係る物品 研削砥石用ドレスボード 
事件の表示 意願2020− 3598「研削砥石用ドレスボード」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 事案の概要

1 手続の経緯
本願は、令和2年(2020年)2月26日の意匠登録出願であって、令和3年(2021年)1月27日付けの拒絶理由の通知に対し、同年3月3日に意見書が提出されたが、同年6月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2 本願意匠の願書及び添付図面の記載
本願の意匠は、意匠に係る物品を「研削砥石用ドレスボード」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(以下「本願意匠」という。別紙第1参照)。

3 原査定の拒絶の理由及び引用した意匠
原審の拒絶の理由は、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られた形状等に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。
「本願意匠は半導体ウェハ等の基板を研削する砥石のドレスボードであって、円盤状かつ大径のプレートの片面に、円環状かつ小径のドレス用砥石を同軸上に重ねて配した態様と認められます。
この本願意匠の創作非容易性について検討すると、本願意匠と同様に、円盤状かつ大径のプレートの片面に、円環状かつ小径のドレス部を同軸上に重ねて配したドレスボードは本願出願前に既に公知となっていますが(下記の意匠1)、意匠1のドレスボードは円環状のドレス部の内側に円盤状のドレス部も有しており、その有無において本願意匠とは異なる構成です。
他方、円環状のドレス部のみで研磨することは本願出願前から既に行われており(下記の意匠2)、円環状のドレス部のみで研磨するとの本願意匠の着想は、当業者であれば特段の困難なく想到できるといわざるを得ません。
そうすると、この着想を基に、本願出願前に公然知られた意匠1のドレスボードを円環状のドレス部のみとすることに特段の困難があるとは言えず、その結果として導き出される本願意匠の態様に格別の創意を要するとは認められないことから、本願意匠は当業者であれば容易に創作できた意匠と判断されます。

意匠1(当審注:別紙第2参照)
特許庁発行の公開特許公報記載
特開2009−142906
【図2】、【図3】、【図4】及びこれらに関連する記載により表されたドレッサボードの意匠

意匠2(当審注:別紙第3参照)
特許庁発行の公開特許公報記載
平成8年特許出願公開第052647号
【図1】、【図2】及びこれらに関連する記載により表された研磨パッド(符号33)の意匠」

第2 当審の判断

本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性について、すなわち、本願意匠の出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)であれば容易に本願意匠の創作をすることができたか否かについて、以下検討し、判断する。
1 本願意匠の認定
(1)意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、半導体ウェハ等を研削する研削砥石をドレスする(整える)ために使用される「研削砥石用ドレスボード」である。

(2)形状等
本願意匠の形状等は、以下のとおりである。
ア 全体の形状等を、薄い略円形板状の基台部分(以下「プレート」という。)の上面部中央部分に、プレートより小径で薄い略中空円板状の砥石(以下「ドレス用砥石」という。)を、それらの中心部分を同軸状に重ねて配設したものであって、
イ 平面視において、プレートの中心部分からドレス用砥石の内径までの長さ、ドレス用砥石の内径と外径間の長さ、ドレス用砥石の外径からプレートの外径までの長さを、約1:1:1となるように形成したものである。

2 原査定の拒絶の理由で引用された意匠の認定
原査定における拒絶の理由で引用された、意匠1及び意匠2の意匠に係る物品及び意匠の形状等は、概要以下のとおりである。
以下、対比のため、本願意匠の図面における正面、平面等の向きを、意匠1及び意匠2にもあてはめることとする。
(1)意匠1(別紙第2参照)
意匠1は、日本国特許庁が平成21年(2009年)7月2日に発行した公開特許公報に記載された、特開2009−142906(【発明の名称】ドレッサボード及びドレッシング方法)における【図2】、【図3】、【図4】及びこれらに関連する記載により表された、研削砥石の研削面の砥石整形ドレスと目立てドレスのドレス作業を、ドレッサボードの載せ変えを要せずに効率よく作業することができる「ドレッサボード」の意匠であって、意匠1の意匠に係る物品と本願意匠の意匠に係る物品は、その用途及び機能が共通するものである。
そして、その形状等は、全体を、薄い略円形板状のボード基台の上面部中央部分に、その半径がボード基台の約1/3の薄い略円板状の砥石整形ドレスを配し、その周囲に僅かな隙間を設けて薄い略中空円板状の目立て用ドレスを、それらの中心部分を同軸状に重ねて配設したものであって、平面視において、砥石整形用ドレスの半径、目立て用ドレスの内径と外径間の長さ、目立て用ドレスの外径からボード基台の外径までの長さを、約1:1:1となるように形成したものである

(2)意匠2(別紙第3参照)
意匠2は、日本国特許庁が平成8年(1996年)2月27日に発行した公開特許公報に記載された、特開平8−52647(【発明の名称】研磨方法)における【図1】、【図2】及びこれらに関連する記載により表された、その中央に非研磨対象表面を有するCD盤等の基板を研磨するための研磨治具として用いられる「研磨パッド」(符号33)の意匠であって、研磨治具として用いられる意匠2の意匠に係る物品と、研磨治具である研削砥石をドレス(整える)するために用いられる本願意匠の意匠に係る物品は、その機能は共通するものであるが、その用途は相違するものである。
そして、その形状等は、研磨治具の底面側に薄い略中空円板状の研磨面からなるパットを形成したものである。

3 本願意匠の創作容易性の判断
まず、本願意匠の「研削砥石用ドレスボード」の分野において、ドレス用砥石の形状等を、薄い略中空円板状に形成することは、意匠1にみられるように本願の出願前より公然知られたものであるから、ドレス用砥石を本願意匠のような形状等に形成することに着想の新しさや独創性があるとはいえず、本願意匠の該部位の形状等については、当業者であれば、格別の障害も困難もなく容易に成し得るものであるといえる。
しかしながら、本願意匠の研削砥石用ドレスボードは、プレートの上面部中央部分にドレス用砥石を設けず、搬送用ロボットが研削砥石用ドレスボードを吸着保持するためのフラットな露出面が表れる態様としたものであるが、このような搬送用ロボット吸着保持用のフラットな露出面を、研削砥石用ドレスボードのプレートの上面部中央部分に形成したものは、引用している意匠1及び意匠2のいずれにも見られないものであるから、本願意匠の該部位の形状等については、本願意匠の出願前に公然知られたものであるとはいえないものである。
なお、原審は、その拒絶理由において、「円環状のドレス部のみで研磨するとの本願意匠の着想は、当業者であれば特段の困難なく想到できる・・・この着想を基に、本願出願前に公然知られた意匠1のドレスボードを円環状のドレス部のみとすることに特段の困難があるとは言え」ないとしているが、意匠1は、研削砥石の研削面の砥石整形ドレスと目立てドレスのドレス作業をドレッサボードの載せ変えを要せずに効率よく作業することができるように、プレートの上面部中央部分に、砥石整形ドレスと目立てドレスの2種類のドレス用砥石を同軸状に重ねて配設した点に着想の新しさないし独創性があり、一方、本願意匠は、搬送用ロボットが研削砥石用ドレスボードを吸着保持するために、プレートの上面部中央部分にドレス用砥石を設けず、フラットな露出面が表れる態様とした点に着想の新しさないし独創性があるものであって、たとえ意匠1が公然知られていたものであったとしても、これにプレートの上面部中央部分にある砥石整形ドレスを取り外すような動機付けは存在せず、また、意匠1の存在が本願意匠を作出する契機となり得るものでもない。そして、この研削砥石用ドレスボードが属する物品分野において、プレートの上面部中央部分に搬送用ロボット吸着保持用のフラットな露出面を形成したものも本願意匠の出願前に存在しないのであるから、プレートの上面部中央部分に薄いドレス用砥石を形成することが通常行われている研削砥石用ドレスボードにおいて、このようなフラットな露出面を形成する本願意匠の形状等が、ありふれた手法に基づくものであるとか、特段の創意を要さないで創作できるとは認めることはできず、本願意匠の創作者が独自の着想によって創出したものであるといえる。
したがって、本願意匠は、意匠1及び意匠2を示しても、当業者が公然知られた形状等に基づいて容易に創作をすることができたものではない。

第3 むすび

以上のとおりであって、本願意匠は、原審が示した理由によっては意匠法第3条第2項に規定する意匠に該当しないものであるから、原査定の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲



審決日 2022-04-20 
出願番号 2020003598 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (K1)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 上島 靖範
特許庁審判官 江塚 尚弘
渡邉 久美
登録日 2022-06-09 
登録番号 1717651 
代理人 萩原 康司 
代理人 扇田 尚紀 
代理人 三根 卓也 
代理人 齊藤 隆史 
代理人 金本 哲男 

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