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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 J7
管理番号 1385259 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2021-12-10 
確定日 2022-05-06 
意匠に係る物品 縫合針 
事件の表示 意願2020−26695「縫合針」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の主な経緯
本願は,意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする,令和2年(2020年)12月11日の意匠登録出願であって,その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。

令和 3年 1月 8日 :新規性の喪失の例外証明書の提出
4月16日付け :拒絶理由の通知
6月 2日 :意見書の提出
9月 1日付け :拒絶査定
12月10日 :審判請求書の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「縫合針」とし,その形状,模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。),建築物の形状等又は画像を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原審の拒絶の理由
原審における拒絶の理由は,本願意匠が,出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ,頒布された刊行物に記載され,又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので,意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって,具体的には,以下のとおりである。
「この意匠登録出願に係る「縫合針」の分野において,先細りかつ直線状の先端部分と,先端部分に連続する円弧状の中間部分と,中間部分に連続する直線状の基端部分とを有する態様のものは意匠1にみられます。また,中間部分の内周側及び外周側にそれぞれ平坦部を有する縫合針は,本願出願前から公然知られています(意匠2,意匠3を参照)。
そうすると,本願意匠は,意匠1にみられる縫合針に,本願出願前から公然知られた一対の平坦部を設けることにより,当業者が容易に創作することができたものです。

意匠1
特許庁発行の登録実用新案公報記載
実用新案登録第3072045号
【図4】に表された「針本体11」の意匠

意匠2
特許庁発行の公表特許公報記載
特表2018−516666号
【図8A】,【図12】に表された「ニードル本体」の意匠

意匠3
米国特許第5897572号
FIG.2,FIG.4に表された「the needle 10」の意匠」

第4 当審の判断
以下において,本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性,つまり,本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて,検討し,判断する。

1.本願意匠の認定
(1)本願意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は,「縫合針」であって,医療手術に用いられるもので,施術における縫合動作を容易かつ安定及び安全に行うようにするものである。

(2)本願意匠の形状
本願意匠は,主に以下の形状を認めることができる。
〔形状A〕全体は,先端部分・中間部分・基端部分の3つの部分から成っている。
〔形状B〕先端部分は先細りである。
〔形状C〕中間部分は,湾曲している。
〔形状D〕中間部分の湾曲は,基端部分から先端部分にかけて曲率が徐々に増加する曲線状である。
〔形状E〕基端部分は,直線状である。
〔形状F〕基端部分の長さは,針全体の約3分の1である。
〔形状G〕湾曲した縫合針の内側と外側に平坦面を設けている。
〔形状H〕内側と外側に設けた平坦面は,共に中間部分の先端側から基端部分の約3分の2を占める所まで設けてある。

2.本願意匠の創作の容易性について
(1)出願前に公然知られた形状
本願意匠の出願前に公然知られたものと認められる形状は,以下のとおりである。
ア.意匠1より
〔形状1a〕全体は,先端部分・中間部分・基端部分の3つの部分から成っている。
〔形状1b〕先端部分は先細りである。
〔形状1c〕中間部分は,湾曲している。
〔形状1d〕中間部分の湾曲は,曲率が一定である。
〔形状1e〕基端部分は,直線状である。
〔形状1f〕基端部分の長さは,ごく僅かである。

イ.意匠2より
〔形状2a〕全体は,先端部分・中間部分・基端部分の3つの部分から成っている。
〔形状2b〕先端部分は先細りである。
〔形状2c〕中間部分は,湾曲している。
〔形状2d〕中間部分の湾曲は,曲率が一定である。
〔形状2e〕基端部分は,直線状である。
〔形状2f〕基端部分の長さは,ごく僅かである。
〔形状2g〕湾曲した縫合針の内側と外側に平坦面を設けている。
〔形状2h〕内側と外側に設けた平坦面は,共に中間部分の先端側から中間部分の基端側までである。

ウ.意匠3より
〔形状3a〕全体は,先端部分・中間部分・基端部分の3つの部分から成っている。
〔形状3b〕先端部分は先細りで,かつ直線状である。
〔形状3c〕中間部分は,湾曲している。
〔形状3d〕中間部分の湾曲は,先端部分から基端部分にかけて,きつい曲線,緩い曲線,やや緩い曲線の,3種の曲線から成っている。
〔形状3e〕基端部分は,直線状である。
〔形状3f〕基端部分の長さは,ごく僅かである。
〔形状3g〕湾曲した縫合針の内側と外側に平坦面を設けている。
〔形状3h〕内側と外側に設けた平坦面は,共に緩い曲線部分のみに設けている。

(2)本願意匠の創作の容易性について
本願意匠の形状AないしC,形状E及び形状Gは,それぞれ本願の出願前に公然知られた意匠1ないし3の形状をモチーフとして容易に創作をすることができたものと認められる。
そして,形状Fについては,意匠1が表された実用新案登録の段落【0019】に「前記直針状に形成した直針部15aの長さは適当に設定できるものあるが,図1と同様に針本体11の約1/6の長さにしたものが開示されている。」と記載されているように,縫合針の分野において,基端部分の長さを適宜変更することは本願の出願前からありふれた手法と認められ,意匠1ないし3における基端部分の長さを本願意匠のものとすることは,当業者が容易に創作することができたものと認められる。
しかし,本願意匠の形状D及び形状Hは,本願の出願前の公然知られた形状に基づいて容易に意匠の創作をすることができたとまではいえない。

3.結び
したがって,本願意匠は,原審で示した各意匠を基にしては,意匠法第3条第2項の規定に該当しないので,原審の拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,当審が更に審理した結果,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲





審決日 2022-04-14 
出願番号 2020026695 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (J7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 正田 毅
橘 崇生
登録日 2022-05-24 
登録番号 1716373 
代理人 山本 知生 
代理人 小池 勇三 
代理人 本山 泰 
代理人 山川 茂樹 

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