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審決分類 |
審判 査定不服 1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 J1 |
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管理番号 | 1385262 |
総通号数 | 6 |
発行国 | JP |
公報種別 | 意匠審決公報 |
発行日 | 2022-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2021-12-24 |
確定日 | 2022-05-10 |
意匠に係る物品 | 試料分析機 |
事件の表示 | 意願2020− 26794「試料分析機」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。 |
理由 |
第1 主な手続の経緯 本願は、令和2年(2020年)12月14日に出願された意匠登録出願であって、令和3年(2021年)7月20日付けの拒絶理由の通知に対し、同年9月3日に意見書が提出されたが、同年10月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 第2 本願の意匠 本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、意匠に係る物品を「試料分析機」とし、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下、「形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」を「形状等」という。)を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである。(別紙第1参照) 第3 原審の拒絶の理由及び引用意匠 原審の拒絶の理由は、本願意匠が、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠(先行の公知意匠に類似するため、意匠登録を受けることのできない意匠)に該当する、というものであり、具体的には以下のとおりである。 「両意匠は、いずれも箱形を基調としつつ、正面上部は斜め手前に傾斜し、やや左よりに大きく表示部が設けられており、その下端で後ろ斜めに側面視『く』字状に折れ、その下側の周側面は垂直面状となっています。その表示部のある傾斜面の右側は面中ほどから後ろ側に2段にわたり周側面が下がった状態となっており、段の途中には小開口部と縦長長方形状部が設けられている生化学用の分析機器である点で共通しています。 一方で、表示部の枠と思われる部分の有無等の相違がみられるものの、格別新規な特徴とまでは言えず、共通点が意匠の基調を成して看者に共通した印象を与えるのに対して、これを凌駕するほどのものとは考えられず、両意匠を意匠全体として対比した場合、類似するものと認められます。 電気通信回線の種類 インターネット 掲載確認日(公知日) 2017年 7月14日 受入日 特許庁意匠課受入2017年12月11日 掲載者 シスメックス株式会社 表題 医療関係者確認画面|シスメックス株式会社 掲載ページのアドレス http://products.sysmex.co.jp/pr2/products/ hematology/xn-330.html に掲載された『自動血球分析機』の意匠 (特許庁意匠課公知資料番号第HJ29018363号)」 第4 当審の判断 1 本願意匠と引用意匠の対比 (1)意匠に係る物品の対比 本願意匠及び引用意匠(以下「両意匠」という。)の意匠に係る物品は、表記は異なるが、いずれも血液の分析等を行う測定機器であるから一致する。 (2)両意匠の形状等の対比 両意匠の形状等を対比すると、主として、以下のとおりの共通点及び相違点がある。(対比のため、引用意匠の図の向きを本願意匠の図の向きに合わせて認定する。) ア 両意匠の形状等の共通点 (共通点1)基本的構成態様について、全体は、略縦長直方体で、その正面は3つの面を組み合わせてなる構成で、具体的には、正面中央よりやや上側全体を斜面状に切り欠いて左寄りに略横長長方形の表示部を設けた面(以下「第1面」という。)、右側面視において左端(正面側)の上から約1/4より下側を2段状に切り欠いた面(以下「第2面」という。)、左側面視において右端(正面側)の第1面の下端より下側を段差状に切り欠いた面(以下「第3面」という。)からなるものである点、 (共通点2)第1面の右端下方寄りに小さな略横長長方形の模様を設けている点、 (共通点3)第2面の上下の段の段差部分の中央を略隅丸矩形状に開口して試料吸引部とし、下の段の左右中央上方寄りに縦長U字状の線模様を施し、その内側の中央下端寄りに略横長長円模様を配している点、 (共通点4)第3面の段差面は湾曲しながら下方に向かって窪んだ傾斜面であり、左下寄りに小さな略隅丸正方形の模様を設けている点において共通する。 イ 両意匠の形状等の相違点 (相違点1)全体の縦(高さ)、横、奥行きの長さの比率について、本願意匠は、約3:2.5:3.2であるのに対し、引用意匠は、約3:2.5:2.5で、本願意匠の方が奥行きがある点、 (相違点2)正面下端の左右隅部について、本願は略直角であるのに対し、引用意匠は、弧状の面取りがある点、 (相違点3)第1面の周縁について本願意匠は、稜線が表れているのに対し、引用意匠は、丸みを帯びた滑らかな曲線処理が施され、稜線が表れていない点、 (相違点4)第2面について、本願意匠の上の段の段差面は、湾曲しながら下方に向かって窪んだ傾斜面であるのに対し、引用意匠は、平坦な傾斜面である点、 (相違点5)表示部について、引用意匠は、表示部の周囲に略隅丸矩形状の枠を設けているのに対し、本願意匠は、枠は設けていない点において相違する。 2 両意匠の類否判断 (1)意匠に係る物品の類否判断 両意匠の意匠に係る物品は、同一である。 (2)両意匠の形状等の共通点及び相違点の評価 ア 共通点について (共通点1)について、この種物品分野において、全体を略縦長直方体とし、その正面を第1面から第3面の3つの面を組み合わせてなる構成としたものは、本願の出願前から、両意匠以外にも見られる態様であり(例えば、独立行政法人工業所有権情報・研修館が2004年12月28日に受け入れた外国カタログNO,093 1頁 製品番号BC−3000の医療用血液解析機の意匠 特許庁公知試料番号第HD16029926。参考意匠1、別紙第3参照)、両意匠にのみ見られる態様とはいえず、格別、需要者が注意を払うものではないから、(共通点1)は、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 (共通点3)について、第2面の上下の段の段差部分の中央を略隅丸矩形状に開口して試料吸引部としたものや、下段の左右中央上方寄りに縦長U字状の線模様の操作部を設けたものは、本願の出願前から、両意匠以外にも見られる態様のものであり(例えば、意匠登録第1428094号の血液分析機の意匠。参考意匠2、別紙第4参照)、需要者が特段注目するものではないから、(共通点3)は、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 (共通点2)及び(共通点4)についてであるが、(共通点2)については、さほど目立つものではなく、(共通点4)については、両意匠以外にもごく普通に見られる態様のものであり(例えば、意匠登録第1511353号の試料分析機の意匠、参考意匠3、別紙第5参照)、(共通点2)及び(共通点4)は、いずれも、需要者が特段注意を払うものとはいえないから、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 イ 相違点について (相違点1)について、本願意匠の方が引用意匠より奥行きがあるが、この種物品分野においては、常套的になされる改変の範囲内のものであって、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 (相違点2)について、正面下端の左右隅部に弧状の面取りがあるか否かの相違は、この種物品分野においては、出願前よりごく普通に見受けられる処理であって、両意匠の類否判断に与える影響は小さい。 (相違点3)の、第1面の周縁に稜線が表れているか否かについては、表示部を有する第1面は、最も需要者の目に付きやすい部位であって、本願意匠は、第1面の周縁に稜線を表すことにより、第1面を強調する意匠的効果をもたらしており、需要者に、引用意匠とは異なる美感を与えるものであるから、両意匠の類否判断に及ぼす影響は大きい。 (相違点4)について、すなわち、第2面の上の段の段差面の相違であるが、本願意匠のように上から下へ湾曲しながら下方に向かって窪んだ傾斜面としたものは本願意匠以外には見られないものであり、また、当該部位は、使用時、試料の入った試験管を出し入れする箇所に隣接し、正面において大変目立つものであることから、需要者の注意を強く引く部分といえ、類否判断に与える影響は大きい。 (相違点5)の、表示部の周囲に矩形の枠を設けているか否かにおいて相違する点については、表示部はこの種物品において最も観察されやすい部位であるところ、両意匠の態様は、視覚的印象が明らかに相違しており、需要者に異なる美感をもたらしているといえるから、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 ウ 形状等の類否判断 両意匠の形状等における共通点及び相違点の評価に基づき、意匠全体を総合的に観察した場合、(共通点1)ないし(共通点4)は、両意匠の類否判断に与える影響が小さいのに対し、(相違点1)及び(相違点2)が、両意匠の類否判断に与える影響は小さいものの、(相違点3)ないし(相違点5)が、両意匠の類否判断に与える影響は大きいものであるから、相違点全体が相まって、両意匠の類否判断に与える影響は大きい。 (3)小括 したがって、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、形状等においては、共通点が未だ両意匠の類否判断を決定付けるまでに至らないものであるのに対して、相違点が両意匠の類否判断に与える影響は共通点を凌駕しており、意匠全体として見た場合、両意匠は、需要者に異なる美感を与えるというべきであるから、本願意匠は引用意匠に類似するということはできない。 第5 むすび 以上のとおり、本願意匠は、引用意匠に類似せず、意匠法3条1項3号に掲げる意匠に該当しないから、原査定の拒絶の理由によって、本願を拒絶することはできない。 また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
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審決日 | 2022-04-21 |
出願番号 | 2020026794 |
審決分類 |
D
1
8・
113-
WY
(J1)
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最終処分 | 01 成立 |
特許庁審判長 |
内藤 弘樹 |
特許庁審判官 |
上島 靖範 木戸 優華 |
登録日 | 2022-05-23 |
登録番号 | 1716219 |
代理人 | 宮園 博一 |