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審決分類 審判 査定不服  意10条1号類似意匠 取り消して登録 F4
管理番号 1385265 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-01-05 
確定日 2022-05-31 
意匠に係る物品 包装用箱 
事件の表示 意願2020−23947「包装用箱」拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は,登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯
本願は,意願2020−23946号(意匠登録第1688959号)の意匠を本意匠とする関連意匠に係る,令和2年(2020年)11月6日の意匠登録出願であって,令和3年5月25日付けの拒絶理由の通知に対し,同年7月8日に意見書が提出されたが,同年9月30日付けで拒絶査定がなされ,これに対して,令和4年1月5日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は,願書及び願書に添付した図面によれば,意匠に係る物品を「包装用箱」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり,「赤色に着色された部分以外の部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。縮小斜視図を含めて意匠登録を受けようとする部分を特定している。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び本意匠
原査定における拒絶の理由は,本願意匠は,願書に記載した本意匠に類似する意匠と認められないから,意匠法第10条第1項の規定に該当しないとしたものである。
そして,本願の願書に記載した本意匠である意願2020−23946号(意匠登録第1688959号)は,本願と同日の令和2年11月6日に意匠登録出願され,その後,令和3年6月14日に意匠権の設定登録がされ,同年7月5日に意匠公報が発行されたものであって,その意匠は,願書の記載によれば,意匠に係る物品を「包装用箱」とし,その形状,模様若しくは色彩又はこれらの結合を願書及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものであり「赤色に着色された部分以外の部分が,部分意匠として意匠登録を受けようとする部分である。縮小斜視図を含めて意匠登録を受けようとする部分を特定している。」としたものである(別紙第2参照)。

第4 当審の判断
1.本願意匠
(1)意匠に係る物品
本願意匠の,意匠に係る物品は「包装用箱」である。

(2)本願部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
本願意匠は,包装用箱の部分についての意匠であり,本願意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)は,包装用箱の正面中,上部背景部分を除いた部分であり,包装用箱の正面中,上部背景部分を除いた位置,大きさ及び範囲であり,包装用箱の正面中,上部背景部分を除いた部分としての用途及び機能を有している。

(3)本願部分の形状
〔形状A1〕本願部分は,果実の模様(以下「果実模様」という。)が,包装用箱の正面の幅に収まらず,左右の部分が表れていない状態の大きさで,中央やや上寄りに描かれている。
〔形状A2〕果実模様の右下にリードディフューザーの模様(以下,リードディフューザーのことを単に「ディフューザー」といい,リードディフューザーの模様のことを「ディフューザー模様」という。)が果実模様に重なるように描かれている。
〔形状A3〕果実模様とディフューザー模様以外の部分は,無模様の背景である。
〔形状A4〕果実模様は,略正円形の左右を垂直に切り落とした形状である。
〔形状A5〕果実模様の頭頂部中央には,果梗(かこう。枝と果実をつなぐ部位。)が描かれている。
〔形状A6〕果梗の左側には,大きな葉の一部が描かれており,果梗の右側には,小さな葉が描かれている。
〔形状A7〕ディフューザー模様は,6本の細棒と,透明容器から成る。
〔形状A8〕透明容器からはみ出ている6本の細棒は,扇状に開いており,それは,おおむね包装用箱を上下に3等分した中央に位置する。
〔形状A9〕透明容器は,縦長の細口タイプである。

2.本意匠
(1)意匠に係る物品
本意匠の,意匠に係る物品は「包装用箱」である。

(2)本意匠部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能
本意匠に係る物品のうち,意匠登録を受けようとする部分(以下「本意匠部分」といい,本願部分と併せて「両部分」という。)は,包装用箱の正面中,上部背景部分を除いた部分であり,包装用箱の正面中,上部背景部分を除いた位置,大きさ及び範囲であり,包装用箱の正面中,上部背景部分を除いた部分としての用途及び機能を有している。

(3)本意匠部分の形状
〔形状B1〕本意匠部分は,果実模様が,包装用箱の正面の幅に収まらず,左右の部分が表れていない状態の大きさで,中央やや上寄りに描かれている。
〔形状B2〕果実模様の右下にディフューザー模様が果実模様に重なるように描かれている。
〔形状B3〕果実模様とディフューザー模様以外の部分は,無模様の背景である。
〔形状B4〕果実模様は,略紡錘形の左右を僅かに垂直に切り落とした形状である。
〔形状B5〕果実模様の頭頂部中央には,果梗が描かれている。
〔形状B6〕果梗の左側には,大きな葉の一部が描かれている。
〔形状B7〕ディフューザー模様は,6本の細棒と,透明容器から成る。
〔形状B8〕透明容器からはみ出ている6本の細棒は,扇状に開いており,それは,おおむね包装用箱を上下に3等分した中央に位置する。
〔形状B9〕透明容器は,縦長の細口タイプである。

3.両意匠の対比
(1)意匠に係る物品の対比
本願意匠と本意匠(以下,本願意匠と本意匠を併せて「両意匠」という。)の意匠に係る物品は,いずれも「包装用箱」である。

(2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の対比
両部分は,いずれも包装用箱における正面中,上部背景部分を除いた部分であり,包装用箱の正面中,上部背景部分を除いた位置,大きさ及び範囲であり,包装用箱の正面中,上部背景部分を除いた部分としての用途及び機能を有している。

(3)両部分の形状の対比
両部分の形状を対比すると,以下に示す主な共通点及び相違点が認められる。
ア.共通点について
〔共通点1〕両部分は,果実模様が,包装用箱の正面の幅に収まらず,左右の部分が表れていない状態の大きさで,中央やや上寄りに描かれている。(形状A1及びB1)
〔共通点2〕果実模様の右下にディフューザー模様が果実模様に重なるように描かれている。(形状A2及びB2)
〔共通点3〕果実模様とディフューザー模様以外の部分は,無模様の背景である。(形状A3及びB3)
〔共通点4〕果実模様は,左右を垂直に切り落とした形状である。(形状A4及びB4)
〔共通点5〕果実模様の頭頂部中央には,果梗が描かれている。(形状A5及びB5)
〔共通点6〕ディフューザー模様は,6本の細棒と,透明容器から成る。(形状A7及びB7)
〔共通点7〕透明容器からはみ出ている6本の細棒は,扇状に開いており,それは,おおむね包装用箱を上下に3等分した中央に位置する。(形状A8及びB8)
〔共通点8〕透明容器は,縦長の細口タイプである。(形状A9及びB9)

イ.相違点について
〔相違点1〕果実模様の形状につき,本願部分は,略正円形の左右を垂直に切り落とした形状であるのに対して,本意匠部分は,略紡錘形の左右を僅かに垂直に切り落とした形状である。(形状A4及びB4)
〔相違点2〕果梗の葉につき,本願部分は,果梗の左側に大きな葉の一部が描かれており,果梗の右側に小さな葉が描かれているのに対して,本意匠部分は,果梗の左側に大きな葉の一部が描かれている。(形状A6及びB6)

4.判断
(1)意匠に係る物品の類否判断
両意匠の,意匠に係る物品は,いずれも「包装用箱」であるから,一致している。

(2)両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能の評価
両部分は,いずれも包装用箱における正面中,上部背景部分を除いた部分であり,包装用箱の正面中,上部背景部分を除いた位置,大きさ及び範囲であるから一致している。
また,両部分は,包装用箱の正面中,上部背景部分を除いた部分としての用途及び機能を有しているから,一致している。

(3)両部分における形状の評価
ア.共通点について
共通点1及び2については,両部分における模様の基本的なレイアウト(配列)であるから,両部分の類否判断に与える影響は大きい。
そして,包装用箱の正面は,中に包装されている商品の情報を視覚的に伝達しつつ,訴求力を高めるという用途があり,包装用箱の意匠的要部と認められるところ,共通点4ないし8の具体的な模様の共通点によって,ディフューザーから果実の香りが拡散されることを印象付けるという共通感を生じさせているのであるから,両部分の類否判断に与える影響は大きい。
共通点3については,背景であるから,両部分の類否判断に与える影響は小さい。

イ.相違点について
相違点1及び2は,それぞれ僅かな相違と認められ,相違点1及び2の相違を総合しても,香の種類が異なるという程度の印象しか受けることがなく,それほど大きな別異感が生じるわけでもないと考えられ,両部分の類否判断に与える影響は小さい。

ウ.両部分における形状の類否判断
以上のとおり,共通点1,2及び4ないし8は,両部分の類否判断に与える影響は大きく,両意匠の類否判断を決するものといえるのに対して,相違点は,両部分の類否判断に与える影響は小さく,この相違点によっては,両部分の類否判断を決するものといえない。
よって,本願部分の形状と本意匠部分の形状は,部分における全体観察においては類似していると認められる。

(4)両意匠における類否判断
以上のとおり,両意匠は,意匠に係る物品が一致し,両部分の位置,大きさ及び範囲,並びに用途及び機能が一致し,両部分の形状は類似するものであるから,本願意匠と本意匠とは類似する。
また,本願は,その他,意匠法第10条第1項の要件を充足していると認められる。

第5 結び
以上のとおりであって,本願意匠は,意匠法第10条第1項に規定する意匠に該当するから,原審の拒絶理由によって,本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。

別掲


審決日 2022-05-17 
出願番号 2020023947 
審決分類 D 1 8・ 3- WY (F4)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 刈間 宏信
特許庁審判官 橘 崇生
正田 毅
登録日 2022-06-07 
登録番号 1717507 
代理人 鈴木 行大 
代理人 松井 宏記 
代理人 宗助 智左子 

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