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審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 J7
管理番号 1386238 
総通号数
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2022-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-02-14 
確定日 2022-06-10 
意匠に係る物品 縫合針 
事件の表示 意願2020− 26698「縫合針」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の主な経緯
本願は、意匠法第4条第2項の規定の適用を受けようとする、令和2年(2020年)12月11日の意匠登録出願であって、その後の手続の主な経緯は以下のとおりである。
令和 3年 1月 8日 :新規性の喪失の例外証明書の提出
9月 1日付け :拒絶理由の通知
10月20日 :意見書の提出
11月 5日付け :拒絶査定
令和 4年 2月14日 :審判請求書の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「縫合針」とし、その形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)、建築物の形状等又は画像を願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとしたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由
原査定における令和3年(2021年)9月1日付けの拒絶の理由は、本願意匠が、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法第3条第2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。
「意匠1には、先端が先細りであり、全体として直線状の先端側部分(1針直線部分)と、先端側部分に連続する円弧状の中間部分と、中間部分に連続する直線状の基端部分とを有する縫合針が表されています。
また、意匠1が表された特許第5709119号の段落【0034】には、「針部分は請求項1に示すように、刃の付いた先端15mm〜25mmが直線状態であり、胴部が「く」の字に屈曲している形状である。」と記載されており、先端側部分の長さを変更することが示唆されているといえます。 よって、本願意匠は、意匠1における直線状の先端側部分の長さを適宜変更する(長くする)ことにより、当業者が容易に創作をすることができたものです。
(中略)
意匠1(別紙第2参照)
特許庁発行の特許公報記載
特許第5709119号
【図1】に表された、「1針直線部分」及び「2針テーパー部分」を有する「針部分」の意匠」

第4 当審の判断
以下において、本願意匠の意匠法第3条第2項の該当性、つまり、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて、検討し、判断する。

1.本願意匠の認定
(1)本願意匠の意匠に係る物品
本願意匠の意匠に係る物品は、「縫合針」であって、医療手術に用いられるもので、施術における縫合動作を容易かつ安定及び安全に行うようにするものである。

(2)本願意匠の形状
本願意匠は、主に以下の形状を認めることができる。
〔全体の構成〕全体は、先端部・中間部・基端部の3つの部分から成っている。
〔形状A〕全体の形状を、細い棒状とし、縫合する糸を付ける基端から直線状の基端部を有し、中間部を湾曲させて、先端部を鋭利な先端とし、背面視で略「し」の字形状としている。
〔形状B〕先端部は、針全体の約1/2の長さの直線状としている。
〔形状C〕先端部の具体的な形状は、母線の長い円錐台形状としている。
〔形状D〕正面視で縫合針の中間部を、基端から先端部に向けて曲率を変えながら先端部側で曲率半径を大きくし、曲がり具合を徐々に緩やかにした曲線状としている。
〔形状E〕基端部は、棒状直線状で長さはごく僅かである。

2.本願意匠の創作の容易性について
(1)出願前に公然知られた形状
本願意匠の出願前に公然知られたものと認められる意匠1の形状は、以下のとおりである。
〔全体の構成〕全体は、先端部・中間部・基端部の3つの部分から成っている。
〔形状a〕全体の形状を、細い棒状とし、縫合する糸を付ける基端から直線状の基端部を有し、中間部を湾曲させて、先端部を鋭利な先端とし、中間部と先端部の境において側面視で「く」の字に屈曲させて先端部につなげ、先端部を直線状として先端に向かって削り取っており、全体を側面視で略半円弧形状としている。
〔形状b〕先端部は、針全体の約1/3の長さの直線状としている。
〔形状c〕先端部の尖端を側面視で「く」の字となるように、先端に向かって削り取った形状としている。
〔形状d〕正面視で縫合針の中間部を基端から先端部に向けてほとんど曲率を変えずに略半円弧形の曲線状としている。
〔形状e〕基端部は、棒状直線状で長さはごく僅かである。

(2)本願意匠の創作の容易性について
本願意匠の全体の構成は、本願の出願前に公然知られた意匠1の形状を縫合針の分野の当業者が、モチーフとして容易に創作をすることができたものと認められる。
本願意匠の形状Aは、本願意匠と意匠1で中間部と先端部の境をなだらかな弧状として背面視で略「し」の字形状としているか、屈曲させて側面視で略半円弧形状としているかの違いはあるが、意匠1の特許第5709119号の図3(別紙2参照)に見られるように、いずれの形状も本願意匠の出願前からあるきわめてありふれた形状であって、縫合針の分野において当業者がいずれの形状を採用することも容易であると認められる。
次に、形状Bの先端部直線の長さは、意匠1が表された特許の段落【0034】に針部分は請求項1に示すように、刃の付いた先端15mm〜25mmが直線状態であり、胴部が「く」の字に屈曲している形状である。」と記載されているように、縫合針の分野において、先端部の長さを適宜変更することは本願の出願前からありふれた手法と認められ、意匠1における先端部分の長さを本願意匠のものとすることは、当業者が容易に創作することができたものと認められる。
また、形状Eについても、本願の出願前に公然知られた意匠1の形状を縫合針の分野の当業者が、モチーフとして容易に創作をすることができたものと認められる。
しかし、本願意匠の形状Dは、当業者が需用者の縫合針の使用態様と針の損傷の防止を考慮し、縫合針の中間部の曲率を変化させて先端部側で曲率半径を大きくして曲がり具合を徐々に緩やかにした曲線状とすることは、本願の出願前の公然知られた形状に基づいて容易に意匠の創作をすることができたとまではいえない。
また、先端部の形状Cは、需用者の施術内容によって先端部形状を変えることは縫合針の使いやすさに影響し、当業者が縫合針の先端形状を変化させることが、出願前の公然知られた形状に基づいて容易に意匠の創作をすることができたとまではいえない。

3.結び
したがって、本願意匠は、原査定における拒絶の理由で示した各意匠を基にしては、意匠法第3条第2項の規定に該当しないので、原査定における拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また当審が更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲




審決日 2022-05-25 
出願番号 2020026698 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (J7)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 山田 繁和
正田 毅
登録日 2022-06-22 
登録番号 1718632 
代理人 本山 泰 
代理人 山本 知生 
代理人 山川 茂樹 
代理人 小池 勇三 

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