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審決分類 審判 査定不服  1項2号刊行物記載(類似も含む) 取り消して登録 G2
管理番号 1393153 
総通号数 13 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-03-22 
確定日 2022-12-12 
意匠に係る物品 乗用自動車 
事件の表示 意願2021− 3869「乗用自動車」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 主な手続の経緯
本願は、令和3年(2021年)2月25日(パリ条約による優先権主張2020年8月25日、中華人民共和国)の意匠登録出願であり、その後の主な手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年(2021年)4月23日付け 拒絶理由の通知
同年 5月12日 手続補正書の提出
同年 8月23日 意見書の提出
同年12月 8日付け 拒絶の査定
令和4年(2022年)3月22日 審判請求書の提出
同年 3月29日 手続補正書の提出

第2 本願意匠
本願の意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書の記載及び願書に添付した図面によれば、意匠に係る物品を「乗用自動車」としたものであって、その形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合(以下「形状、模様又は色彩の結合」を「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載されたとおりとし、「各図の表面全面に表された濃淡は、立体表面の形状を特定するためのものである。」としたものである(別紙第1参照)。

第3 原査定における拒絶の理由及び引用意匠
原査定における拒絶の理由は、本願意匠は、本願の出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された意匠又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった意匠に類似するものであるから、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当し、意匠登録を受けることができないとしたものであって、当該拒絶の理由に引用された意匠(以下「引用意匠」といい、本願意匠と併せて「両意匠」という。)は、下記のとおりである(別紙第2参照)。
引用意匠
欧州連合知的財産庁 登録共同体意匠公報 2020年7月31日
乗用自動車(登録意匠番号008018600−0001)の意匠

第4 当審の判断
1 両意匠の対比
(1)意匠に係る物品
本願意匠に係る物品と引用意匠に係る物品は、共に「乗用自動車」である。
(2)形状等
(2−1)共通点
共通点1:全体は、ボンネット部とキャビン部とで成る、全体に丸みを帯びたコンパクトな、いわゆるツーボックスタイプで、四隅にタイヤを配し、背面部にバックドアを備えた5ドアの乗用自動車である。
共通点2:正面部について、フロントガラスは、略横長台形状で、後方へ約30度傾けたものであり、ボンネットは、車体全長の約4分の1の長さで、左右をフロントピラー部の付け根付近から左右のヘッドライト部に向けて、正面視凸弧状に漸次隆起させ、その間の中央部前方部を前下がり状とし、中央寄りに後方から前方に向かって2本の筋状凸部を形成したものであり、ヘッドライトは、内側下方へ斜めに引っ張って変形させたような略楕円形状のものであり、フロントバンパーは、上半部を、左右にわたってくぼませて、その中央に横長長方形のナンバープレート設置部を設け、下半部を、ごく偏平な暗調子部とし、その中央に格子状の開口部を設けたものである。
共通点3:側面部について、キャビン部は、サイドドアを左右に2枚ずつ配し、フロントピラーを僅かに湾曲した帯状、リアピラーをフロントピラーの約2倍の太さの帯状とし、フロントドア及びリアドアによるガラスエリアは、下辺を弓なりの後ろ上がりとし、ガラス部の縦幅を前方から後方へ漸次僅かに狭くし、フロントドア及びリアドアのパネル部を全体的に緩やかな凸弧状面としつつ、下から約4分の1の中央付近を緩やかな凹弧状面とし、ドアハンドルを楕円状の窪みの中央を渡るアーチ状としたものであり、フロントフェンダーの下部と、リアフェンダーの下部及びリアドアの後方側下部を、それぞれ半円形に切り欠いてホイールアーチとし、前後両ホイールアーチの間の車体の下端を暗調子の帯状部とし、サイドミラーは、フロントドアのパネル部の前方上端部付近に設けたものであり、ルーフの後端中央にフィン状のアンテナを設けたものである。
共通点4:背面部について、バックドアは、背面部の高さの約2分の1の高さで、上半部強を前方へ約40度傾けたガラス面とし、バックドアの上端には左右両端部分を下向きに湾曲させた側面を略三角形状としたスポイラを設けたものであり、リアバンパーの左右に、横に細長いテールランプを設け、両テールランプの間の中央をバックドアの下端にかけて横長の略逆台形の凹部としたものであり、リアバンパーの下方に、中央を小さな略逆台形の凹部、その左右両脇を大きな略台形の凹部とした、暗調子の帯状部を有するものである。
(2−2)相違点
相違点1:フロントバンパーの左右部分について、本願意匠は、縦長スリット状の開口部を有する略隅丸直角三角形状の暗調子部を、その直角の角部がフロントバンパーの上側左右コーナー部に位置するように配したもので、直角の角部に隣接する2辺の所には「かぎ括弧」形状の暗調子の浅いフードを設けたものであるのに対して、引用意匠は、そのようなものを設けていないものである。
相違点2:フロントバンパーの下半部の偏平な暗調子部について、本願意匠は、比較的高さのある上辺の左右両端寄りが直線状に傾斜した形状(偏平な台形状)のものであり、また、中央の格子状の開口部を斜め格子とし、その両側の凹部を略四辺形に仕切られた凹部としたものであるのに対して、引用意匠は、あまり高さのない上辺の左右両端寄りが曲線状に傾斜したものであり、また、中央の格子状の開口部を六角格子とし、その両側の凹部を縁部が明調子の略横倒雫(しずく)形状に仕切られた凹部としたものである。
相違点3:ヘッドライトについて、本願意匠は、暗調子であるのに対して、引用意匠は、明調子である。
相違点4:サイドミラーについて、本願意匠は、上部を明調子、下部を暗調子にしたものであるのに対して、引用意匠は、全体を明調子にしたものである。
相違点5:ホイールアーチについて、本願意匠は、縁に大きく段差を設けて、その段差を暗調子にしたものであるのに対して、引用意匠は、段差を設けていないし、縁を暗調子にしていないものである。
相違点6:バックドアに設けたスポイラについて、本願意匠は、下面の左右を凹状とし、また、左右両側面に略三角形状の暗調子模様を付したものであるのに対して、引用意匠は、下面の左右を平坦とし、また、左右両側面に模様を付していないものである。
相違点7:リアバンパーの下方の暗調子部について、本願意匠は、比較的高さのある左右の台形状凹部内に明調子のフィンを2本ずつ設けたものであるのに対して、引用意匠は、あまり高さのないものであって、フィンを設けていないものである。
相違点8:タイヤのホイールについて、本願意匠は、中央のハブを暗調子の小さな円形にし、スポークを2本一組として、五組で花弁状にしたものであるのに対して、引用意匠は、中央のハブを明調子の大きな円形にし、5本のスポークを放射状に配したものである。
相違点9:タイヤ上部における車体とタイヤとの隙間について、本願意匠は、広く取って最低地上高を高く設定したものであるのに対して、引用意匠は、広く取られていないものである。

2 両意匠の類否
(1)意匠に係る物品について
本願意匠に係る物品と引用意匠に係る物品は、共に「乗用自動車」であるから、両意匠の意匠に係る物品は、同一と認められる。
(2)形状等について
共通点1の車種の形状をベースにした、共通点2ないし4の形状は、両意匠の形状に一定の共通感をもたらしているが、具体的に見れば、この物品分野において特に注目される正面部に係る相違点1及び2、並びに、その他の相違点のうち、特に相違点5、7及び9を含むものであるから、共通点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は、一定程度にとどまる。
一方、相違点1、2、5、7及び9の相違は、本願意匠に対しては、いわゆるクロスオーバーSUVといわれる、街中の舗装路での性能を重視したSUV(Sport Utility Vehicle(スポーツ・ユーティリティ・ビークル)の略称。日本語でいえば、スポーツ用多目的車。)仕様というスポーティな印象を与えるものであるのに対して、引用意匠に対しては、そのような印象とは異なる流麗な印象を与えるものであるから、これらの相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は、大きい。
したがって、その余の相違点を挙げるまでもなく、相違点が両意匠の類否判断に及ぼす影響は、共通点のそれを凌駕するものといえるから、両意匠の形状等は類似しない。
(3)小括
そうすると、両意匠は、意匠に係る物品は同一であるが、形状等は類似しないから、本願意匠は、引用意匠に類似するものではない。

3 むすび
以上のとおりであって、本願意匠は、引用意匠をもって、意匠法第3条第1項第3号に掲げる意匠に該当するものといえないから、原査定における拒絶の理由によって、本願を拒絶すべきものとすることはできない。
また、当審において、更に審理した結果、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲



審決日 2022-11-29 
出願番号 2021003869 
審決分類 D 1 8・ 113- WY (G2)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 内藤 弘樹
特許庁審判官 正田 毅
橘 崇生
登録日 2022-12-26 
登録番号 1733935 
代理人 特許業務法人アスフィ国際特許事務所 

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