• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服  2項容易に創作 取り消して登録 L3
管理番号 1394046 
総通号数 14 
発行国 JP 
公報種別 意匠審決公報 
発行日 2023-02-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-08-05 
確定日 2023-01-20 
意匠に係る物品 オフィスの執務室の内装 
事件の表示 意願2021− 7361「オフィスの執務室の内装」拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の意匠は、登録すべきものとする。
理由 第1 手続の経緯

本願は、令和3年(2021年)4月8日の意匠登録出願であって、その後の主な手続の経緯は、以下のとおりである。

令和 3年(2021年) 9月28日付け 拒絶理由通知書
同年 11月10日 意見書の提出
令和 4年(2022年) 4月26日付け 拒絶査定
同年 8月 5日 審判請求書の提出

第2 本願の意匠

本願は、店舗、事務所その他の施設の内部の設備及び装飾(以下「店舗、事務所その他の施設の内部の設備及び装飾」を「内装」という。)を構成する物品及び建築物(以下「内装を構成する物品及び建築物」を「内装意匠」という。)について意匠登録を受けようとする意匠登録出願であり、本願の内装意匠(以下「本願意匠」という。)は、願書の意匠に係る物品の欄の記載を「オフィスの執務室の内装」とし、その形状、模様若しくは色彩若しくはこれらの結合(以下「形状等」という。)を、願書の記載及び願書に添付した図面に記載したとおりとしたものであり、本願意匠において、当該意匠登録を受けようとする部分(以下「本願部分」という。)を、「実線であらわした部分が、意匠登録を受けようとする部分である。一点鎖線は意匠登録を受けようとする部分とその他の部分の境界のみを示す線である。」としたものである。(別紙第1参照)

第3 原査定の拒絶の理由及び引用した意匠

原査定における拒絶の理由は、本願意匠は、出願前にその意匠の属する分野における通常の知識を有する者(以下「その意匠の属する分野における通常の知識を有する者」を「当業者」という。)が日本国内又は外国において公然知られ、頒布された刊行物に記載され、又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった形状等又は画像に基づいて容易に意匠の創作をすることができたものと認められるので、意匠法3条2項の規定に該当するとしたものであって、具体的には、以下のとおりである。

「本願意匠は、オフィスの執務室の内装の意匠の部分について意匠登録を受けようとする意匠登録出願に係るものです。具体的には、間仕切り付きのテーブルが室内に設置された内装であって、平面視が略広角V字形状でかつコーナー部が略台形状に形成された天板を3つ、コーナー部が相互に向き合うよう平面視して略」Y字状に配置して、各コーナー部の縁の集合部分には平面視正三角形状の空隙部を形成するとともに、隣接するテーブル天板の縁の接合部分に沿って垂直の薄板平板状間仕切り板を設けたテーブルのうち、略正三角形状空隙部周辺の天板上面とその上部の間仕切り板の側面部分について意匠登録を受けようとするものと認められます。

まず、本願出願前において、以下の(1)乃至(3)のとおり、公然知られた意匠が存在します。
(1)縁の一部が略台形状に形成されたテーブルの天板を3枚、各略台形状の縁が相互に向き合うよう、平面視して略Y字状に配置して、各天板の縁の集合部分に平面視正三角形状の空隙部を形成することは本願出願前よりよく見られる手法であることを示す例として、下記の意匠1乃至3が存在します。
(2)テーブルの上に3枚の間仕切り板を平面視略Y字状に配置し、各間仕切り板が集合する部分の垂直辺間に僅かに間隔を設けることは本願出願前よりよく見られる手法であることを示す例として、下記の意匠4が存在します。
(3)(1)のように複数の天板によって構成され、かつ天板のコーナー部の集合部分に空隙を有するテーブル上に(2)のように間仕切り板を略Y字状に配置する際に、各間仕切り板の垂直辺が天板の縁を越えて空隙部上に位置するように配置することは本願出願前より見られる手法であることを示す例として、下記の意匠5が存在します。

そうすると、本願意匠の意匠登録を受けようとする部分は、(1)と同様の手法を用いてテーブルの天板を配置し、その上に(2)及び(3)の手法を用いて3枚の間仕切り板を設けたテーブルを室内空間に配置したに過ぎない内装の意匠の部分というほかはなく、内装の意匠の創作としての着想の新しさや独創性も見いだすことができないため、当業者であれば容易に創作できたものと認められます。

意匠1
特許庁発行の意匠公報記載
意匠登録第1537873号の意匠

意匠2
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2014年 9月30日
受入日 特許庁意匠課受入2014年10月17日
掲載者 designboom
表題 mark reigelman serves up the great picnic for100 people
掲載ページのアドレス
http://www.designboom.com/art/mark-reigelman-the-great-picnic-tradition-09-17-2014/
に掲載された「いす付きテーブル」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HJ26040194号)

意匠3
特許庁普及支援課が2009年 7月16日に受け入れた
米国特許商標公報 2009年 6月23日09W25号
テーブル用天板(登録番号US D594682S)の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第HH21310957号)

意匠4
電気通信回線の種類 インターネット
掲載確認日(公知日) 2020年 7月18日
受入日 特許庁意匠課受入2020年10月16日
掲載者 OfficeSnapshots
表題 Weightmans LLP Liverpool Offices − Office Snapshots
掲載ページのアドレス
https://officesnapshots.com/2012/10/05/weightmans-office-design-liverpool/
に掲載された「オフィス用内装」の意匠
(特許庁意匠課公知資料番号第RJ02039561号)

意匠5
特許庁発行の公開特許公報記載の
特開2004−089451
【図10】に示された組合わせテーブルの意匠」

第4 当審の判断

以下、本願意匠の意匠法3条2項の該当性、すなわち、本願意匠が当業者であれば容易に創作することができたか否かについて検討し、判断する。

1 本願意匠

(1)本願意匠について
本願意匠は、オフィス内の床面と執務用テーブルからなる「オフィスの執務室の内装」である。

(2)本願部分の用途及び機能
本願部分は、3方向から執務を行うことができるテーブルの天板の一部及び天板を中心から3方向に放射状に仕切る3枚の衝立(ついたて)の一部であって、衝立によって使用者を遮蔽し、天板の中心に形成した隙間に配線を通すことができる用途及び機能を有するものである。

(3)本願部分の位置、大きさ及び範囲
本願部分の位置は、床面より高い位置で、水平に配置した天板の中心及び天板に対して垂直に設置した3枚の衝立の下端の内側隅であって、その大きさ及び範囲は、天板の中心の隙間を円で囲んだ範囲及び3つの衝立の表裏面のうち、天板の範囲の内側を横幅とし高さをその約1.2倍とする略縦長長方形に囲んだ範囲とするものである。

(4)本願部分の形状等
ア 天板
天板は、凹凸のない平坦面で、その中心に上面視略正三角形の隙間(以下「空隙部」という。)を設けている。
イ 衝立
空隙部の各頂点から中心まで延びる垂線上の中心近くまで、それぞれ略縦板状の衝立を垂直に設置したものであって、各衝立の角は直角に形成している。

2 引用意匠の認定

(1)意匠1(別紙第2参照)
意匠1の意匠に係る物品は、「机」であって、その形状等は、略横長矩形板を上面視略逆V字状に屈曲した3枚の天板の上辺を突き合わせるように近接して水平に配置し、各天板の底面の両端近くに、略縦長角棒状の脚を垂直に取り付け、隣接する脚同士の下端を略横長板状の連結具で結合したものであって、各天板の上辺の角を切り欠いて、上面視において、中心に略正三角形の隙間を形成し、その各頂点から放射状に外端まで延びる細幅帯状の隙間を一体に形成した空隙部を設けている。

(2)意匠2(別紙第3参照)
意匠2は、「いす付きテーブル」の意匠であって、その形状等は、片側短辺の両角を斜めに切り欠いた略横長長方形の板を3枚、それぞれ切り欠きを突き合わせるように密着して、中心から3方向に放射状に水平に延びる天板とし、その底面の外端寄りにそれぞれ井桁状の脚を垂直に取り付け、脚の中段付近に突き出たバーに、略横長長方形板状の長椅子を、天板の長辺に沿って段差状に取り付けたものであって、上面視において、天板の中心に略正三角形の空隙部を設けている。

(3)意匠3(別紙第4参照)
意匠3は、「テーブル用天板」の意匠であって、その形状等は、上面視において、ロガロ翼のように左右が斜め後方に延びる略横長板状の天板を3枚、上辺を突き合わせるように近接して水平に配置し、上面視において、中心に略正三角形の隙間を形成し、その各頂点から放射状に外端まで延びる細幅帯状の隙間を一体に形成して空隙部としたものである。
なお、意匠3の天板には、上辺の真ん中を弧状に湾曲したもの(FIG.6)と、直線状のもの(FIG.15、FIG.24)の3種類の異なる意匠が含まれる。

(4)意匠4(別紙第5参照)
意匠4は、「オフィス用内装」の意匠であって、その形状等は、建物内部の奥の壁面に透明な窓を取り付け、その手前の真ん中やや右寄りに略角柱状の柱を設け、その柱の右奥と手前の床面に複数の机を島状に配置したもので、手前の島状の机は、向かい合わせに配置した両袖机の両側に1台ずつ両袖机を密着して配置したものであって、各机の前に椅子を配置し、隣接する机の天板の境界に、背の低い複数枚の略横長長方形板状の衝立を近接して垂直に設置したものであって、島全体としてみると、上面視において、左右の辺を内側に屈曲した略「H」字状に設置している。

(5)意匠5(別紙第6参照)
意匠5は、「組合わせテーブル」の意匠であって、その形状等は、上面視略横長矩形を略逆V字状に屈曲した3台のテーブルの天板の上辺を突き合わせるように密着して配置して、その中心に略円形の空隙部を設け、各テーブルの前に椅子を配置し、各天板の上の椅子と正対する位置にそれぞれパソコンを配置し、隣接する天板の境界に沿って空隙部の縁から放射状に外端まで延びる細幅直線状の仕切り(衝立)を設置したものであって、仕切りの両端に小さな略矩形状の部材を形成し、そのうち、内端の部材は空隙部の縁の内側に形成している。

3 本願意匠の創作性の検討

この内装を構成する物品又は建築物の属する分野において、テーブルの天板を凹凸のない平坦面とし、その中心に上面視略正三角形の空隙部を設けたものは、本願の出願前に公然知られているものである(意匠2)。また、空隙部の縁から3方向に放射状に外端まで延びる衝立を設置したものも、本願の出願前に公然知られているものである(意匠5)。さらに、衝立の内端に形成した部材を空隙部の縁の内側に形成したものも、本願の出願前に公然知られているものである(意匠5)。
しかしながら、本願部分のように、上面視略正三角形の空隙部の各頂点から中心まで延びる垂線上の中心近くまで、それぞれ略縦板状の衝立を垂直に設置し、かつ各衝立の角を直角に形成したものは、本願部分の他には見られないものであるから、本願部分は、当業者にとって、格別の創作を要したものといわざるを得ない。
そうすると、本願意匠は、この内装を構成する物品又は建築物の属する分野において、独自の着想によって創出したものであり、当業者が引用意匠に基づいて容易に本願意匠の創作をすることができたということはできない。

第5 むすび

以上のとおりであって、本願意匠は、原査定の拒絶の理由によっては意匠法3条2項に規定する意匠に該当しないものであるから、この拒絶の理由によって本願を拒絶すべきものとすることはできない。

また、当審において、更に審理した結果、他に拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

別掲





























審決日 2023-01-05 
出願番号 2021007361 
審決分類 D 1 8・ 121- WY (L3)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 小林 裕和
特許庁審判官 内藤 弘樹
石坂 陽子
登録日 2023-01-26 
登録番号 1736034 
代理人 弁理士法人藤本パートナーズ 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ